21 限界突破?
二十一話 限界突破?
「ーー……いたたた」
私は宿屋のベッドの上で横になり腰をさする。
「大丈夫クロエー。 はい、これ。 ピュッピュして吸いな」
「うん、ありがとうエティ」
どうしてこんなことになったのか、それを説明すると恥ずかしいんだけど……
◆◇◆◇
それは死神の大鎌のランク5の能力【死神の加護】により強制的に与えられたスキル【死神の行進】の影響で私のステータスの【魔攻・魔防】が4444になってすぐのことだった。
一瞬で魔物を倒せたことにより少し調子に乗ってしまった私はレベル上げの帰り道に出くわした魔物に一騎打ちを挑んだのだ。
もちろんエティは止めたんだけど、なんかいける気がして。
そして結果がこの様だよ。
相手はゴリラ型の巨大な魔物だったんだけど、私の大鎌の一振りを避けて私に強烈なパンチ。
私は5メートルほど吹き飛ばされてしまったのだ。
◆◇◆◇
「あぁ……魔力系は強くなってたけど、物理はあんまり強くないこと忘れてたぁ」
私は激レアキノコの柄の部分をキュッと握ってカサの中心からピュッピュと出てくる白いドロドロの液体……純度の高い回復薬をチュッチュと吸っていく。
さすがは激レア……少しだけど痛みが和らいでいく。
「仕方ないよ。 あんな一気に強くなったら誰だって気持ち大きくなるって」
エティが私の口から漏れた回復薬を指で掬って舐めながら微笑む。
「だよねぇ……。 私やっとこれで幸せな生活が手に入るって思ったらもう舞い上がっちゃって」
もうこの力で超強い魔物を倒して、出た報酬をパンパンできればパンパンして平凡な田舎で家を建てて暮らすってところまで考えてたのに。
「ーー……はぁ」
思わずため息が出る。
「あ、そういえばさ……」
「なに?」
突然何かを思い出したのかエティが私に顔を近づける。
「あのほら、帰りにクロエのステータス見せてもらったよね」
「うん」
「あの死神の大鎌の説明文の最後に『※』なかった?」
「え、あったっけ」
私はステータス画面を開き、装備欄の死神の大鎌をタップ。 詳細を表示させる。
●【死神の大鎌】触れた敵に中ダメージ。 相手に魔力の刃を当てることで、装備を破壊し麻痺状態にさせながら魔力を多めに吸収する。 代償として装備した者のレベルは1に。 装備したものに特別なスキルを付与する。 次回ランクアップには限界突破が必要。【※】
「ーー……あ、本当だ。 え、ランクアップには限界突破が必要? どういう意味?」
私は寝転んだまま首を傾げてその『※』をタップする。
●限界突破するとランクの上限が10になる。
【必要な素材】
・猪型魔物の金牙 0/10
・蜂型魔獣の金針 0/20
・光る玉 55/15
・狼型魔物の虹爪 0/20
「ーー……え、多くない?
あまりの必要な素材の多さに思わず声を漏らす。
「いや、私からするとなんでクロエ光る玉そんなに持ってるの?」
「あーこれはレアって聞いたからたくさんパンパンしてリュックいれてたんだよね。 でもあれだよね、最初見た時はパンツの中に入れてパンパンして増やせばいいって思ってたけどさ、光る玉以外全部入れれない素材しかないよね」
私は光る玉以外の素材を指でなぞる。
「牙は下手したら破れそうだし、針は怪我するでしょ? それで爪も破れそう」
「あー、本当だぁ」
エティが私のステータス画面を苦笑い。
「ねぇエティ、限界突破ってなんだと思う?」
「んー、見た感じだともっと強くなるよってことじゃないのかな。 だって今のランクが5だけど、それしたら10まで上げれるわけだし」
「あ、そっか」
「うん」
私は限界突破に必要な素材をしばらく眺める。
「ねぇエティ、狼型魔物ってどこにいるか知ってる?」
私は【狼型魔物の虹爪】を指差しながら尋ねる。
「んー、森の近くによく住んでるって聞くよね。 それで近くの洞窟とか岩穴で生活してる……とか」
「そうなんだ」
「うん。 だからこの周辺探したらどこかあるかもね」
エティが窓の外の景色に視線を向けながら答える。
「そっか。 じゃあ体の痛み治ったら素材集めに行こうかな」
「いいんじゃない。 私もいろいろ採取したいし、その途中で出た魔物は一緒に倒せば早いしね」
「うん、ありがとうエティ」
私はエティにお礼。 その後激レアキノコをエティに渡す。
「え、なにクロエ」
「ちょっと手が疲れちゃった。 エティ、私の口元でそれピュッピュしてー」
私はエティに顔を向けて大きく口をアーンする。
「ーー……クロエ」
「んーー?」
「いや、なんでもない。 じゃあピュッピュしてあげるからちゃんと受け止めてね」
「あーーい」
ピュピュッ
ピュッ
「あーんエティ、ほとんど顔にかかっちゃってるよぉー」
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