15 貴重な1枚!【挿絵有】
十五話 貴重な1枚!
「おじさーん、武器もう終わっちゃったぁー!!」
村に戻った私たちはまっすぐ武器屋へ。
おじさんに半泣きですがりつく。
「えええ、どうしたんだいお嬢ちゃん! 壊れちゃったのかい!?」
私はステータス画面を開いて武器【メルヘンラビット】をタップ。
そこに書かれている説明文をおじさんに見せる。
「なになに、突然変異で出来た謎のステッキ……で、ウサギが倒された場合……新しい武器への交換を推奨しますううう!?!?」
おじさんが目を大きく見開いてツッコミを入れる。
「そうなのー! だからさおじさん、このお店にゴールド武器あったら私に売って頂戴ーー!!」
「ゴゴ、ゴールド武器!?」
「エティちゃんが言ってたんだけど、ゴールド武器って強いんでしょ!? お金なら頑張って払うからぁ!!」
私は店内に飾られている武器を見渡しながらおじさんに頼み込む。
しかしーー……
「いやいや、そんな高級で人気の武器なんてこんなちっぽけな店に置いてるわけないじゃないか!! あれは大きな国の有名な武器屋でも飾られてるのは稀なくらいなんだぜ!?」
「え……そうなの?」
「そうさ! 装備するだけで飛躍的に強くなってレベル上げが簡単になるんだ……そんな夢のような武器、誰もが欲しがるに決まってるだろう!」
「あ……そっか」
私はわかりやすく落ち込み深くため息をつく。
「じゃあ……どうしよう。 また短剣で1から頑張るしかないのかな。 ーー……私まだレベル1だけど」
「まぁあれだお嬢ちゃん、また俺が作ってやるからさ! そんなに落ち込むなよ」
「ーー……ほんと?」
「ほんとほんと! といっても時間ができ次第にはなるがな! それまではなんとか頑張ってくれや!」
「うん……ありがとうおじさん」
私はウサちゃんのいなくなったメルヘンラビットを両手で抱きしめながら宿屋へと戻った。
◆◇◆◇
その日の夜。
エティと別れて部屋で1人窓の外の景色を眺めていると私の部屋の扉が数回ノックされる。
「こんな時間に誰だろう……」
エティがまたお話をしに来たのかなと思いながら私は鍵を開けて扉を開ける。
するとーー……
「ーー……あれ、誰もいない」
顔を出して廊下を見渡しても人っ子1人いない。
なんでだろうろ思い扉を閉めようとした……その時だった。
『ここじゃいここ』
「きゃあ!!!」
下から声が聞こえてきたので視線を下ろすとそこにはボロボロ姿のウサちゃん。
「え、元気だったの!?」
『誰が元気じゃい、この姿みて元気だと思うなら病院行けやい』
ウサちゃんはヨロヨロとよろめきながらベッドの上へ。
「よく私がここにいるってわかったね」
『そのステッキは俺の家みたいなもんじゃい。 分かって当然じゃい』
「でも無事でよかったよ」
『まぁな。 魅惑の美女が俺を助けてくれたんじゃい』
ウサちゃんは頬を赤らめながら窓の外を眺める。
「魅惑の美女?」
『そうじゃい。 あの後俺はドラゴンの隙をついてドラゴンの体に飛び乗ったんじゃい。 でもそこから急に空を飛び出して途中で振り落とされてしまったんじゃい』
「大変だったんだね」
『その時助けてくれたのが魅惑の美女だったんじゃい』
ウサちゃんが照れながら頬に手を当てる。
「な……なるほど」
『その魅惑の美女は2人の女の子とともに行動していてな、困ってる俺を見過ごさずに近くまで送り届けてくれたんじゃい』
「へぇ、親切な人もいたもんだね。 こんな危険なご時世に」
『そうじゃい、ちなみにその魅惑の美女はこんな見た目をしてたんじゃい』
そう言うとウサちゃんの目が眩しく光だし、室内の白い壁に何かを映し出す。
「え……なにこれ」
『俺のスキルの投影じゃい』
「投影?」
『そうじゃい。 流石に小娘、お前も俺の武器の説明を見てると思うから話すがな、俺は基本囮じゃい。 だけどただ逃げる訳じゃないんじゃい。 敵の情報を細かく観察できるように最大3枚まで静止画を記録することができるんじゃい』
ウサちゃんが腕を組みながら自慢げに解説する。
「え、すごいじゃん!」
『そうじゃいすごいんじゃい! そしてそのすごいスキルで撮った静止画がこれじゃい!!』
ウサちゃんが白い壁を指差すとそこに小さなお人形のような……赤い髪の綺麗な女の子の姿が映し出される。
「これ……妖精かなにか?」
『ちゃんと生きとるんじゃい!』
「でも空飛んでない?」
『この魅惑の美女は……飛べてたんじゃい』
ウサちゃんがうっとりしながらその静止画を眺める。
「それで、一緒にいたって言ってた2人は?」
『そんなもん撮ってどうするんじゃい』
「いやいや、見かけたらお礼言いたいじゃない!!」
『そしたら最大枚数投影しちゃうじゃろがい』
ーー……ん?
私は今のウサちゃんの言葉に引っかかりを覚える。
「え、その投影って上書きできるんだよね?」
『んなわけあるかい。 上書きなんか存在しないんじゃい!』
「じゃあなんでそんな貴重な1枚撮っちゃったの!?」
『それは決まってるやろがい……』
ウサちゃんがハードボイルドにかっこよくため息をつきながら私を見つめる。
「なんで?」
『好みだったからじゃい』
「うわあああああああ!!!!!」
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この赤髪の小さな生き物は一体なんなのか……!!




