13 メルヘンラビット【挿絵有】
十三話 メルヘンラビット
依頼して1週間。
武器屋のおじさんから私の泊まっている宿屋へ連絡が入ったので早速私は作ってもらった武器を受け取りに新しくできた友達エティと一緒に心を躍らせながら武器屋へとむかった。
◆◇◆◇
「お嬢ちゃん……凄いのができちまったよ」
武器屋に着くや否やおじさんが待っていたと言わんばかりに私の背中を押しながら別室へ。
「横のお嬢ちゃんはお友達会かい?」
「うん、そうだよ」
「そうかい、じゃあ一緒に中に入りな! 2人は今から凄いものを目にすることになるぜ!!」
中に入ると部屋の真ん中に大きな長机があり、その上に黒いケース。
「おじさん、あれ?」
「そうだ! ちゃんと見てくれよ! これは俺の人生で1番の最高傑作なんだからな!!!」
そう言ったおじさんは勢いよくケースを開ける。
そして私の目に飛び込んできたものはーー……
「ーー……えぇ!?」
誰がこうなると予想していただろうか……。
私が渡したのは蜂型魔獣の討伐報酬である毒針とレア報酬の金色の毒針のみ。
なのにこの見た目は……
「え、ウサちゃん?」
エティが思わず感想を口にする。
それもそのはず……なぜかケースに入っていたものは水色のステッキでてっぺんにウサギをデフォルメしたようなウサちゃんフェイス。
「いやなんかな、贅沢にレア素材全部つぎ込んじまえと思って試してみたらこうなったんだよ」
「なるほど……」
「とりあえずさ、ちょっと装備してみてくれよ!」
武器屋のおじさんがわざわざ作ってくれたんだ。
きっと凄いものができたに違いない……!
私はおじさんを信じてウサちゃんのステッキを装備、ステータス画面を確認する。
●クロエ
【レベル】1
【装備】スウィートドレス・メルヘンラビット・奇跡のパンツ
【数値】攻:1 防:5 魔攻:0 魔防:2
【スキル】奇跡・自動回復・魔物召喚
ーー……え?
「あの……これはどういった??」
「ん?」
おじさんが私のステータス画面を覗き込む。
「ーー……あれ?」
おじさんは首を傾げながら頭上にはてなマークを浮かび上がらせる。
「クロエ、別にスキルが増えたとかそんなものもないんだよね」
エティがスキル欄を指差しながら尋ねる。
「うん。 数値もスキルも何にも……」
「い……いや待ってくれ! 確かに渾身の出来のはずなんだ!! あれだけレア素材をぶち込んで失敗だなんて聞いたことがーー……!」
「ねぇクロエ、1回それで魔物と戦ってみたら? もしかしたら戦っている時だけ発動するなにかとかあるかもしれないし」
エティがおじさんをフォローするようにテンション高めに私に話しかける。
「そ、そうだね。 だってこれ、武器だもんね」
「そうだよ!! 武器じゃなかったらステータス欄に表示されないはずだもん! 絶対何かあるって!!」
「お……お嬢ちゃん!!!」
武器屋のおじさんが目から涙を滝のように流しながらエティを見つめる。
「と、とりあえず行こうよクロエ! もしもの時は私も支援するし!」
「うん……ありがとうエティ。 だとしたらどこかいいかな」
「とりあえずはここの近くの茂みから出てきた魔物で試してみたらいいんじゃないかな」
「わかった! じゃあ行こう」
こうして私とエティは武器屋を出て近くの茂みへ向かった。
ーー……のだが、、
◆◇◆◇
「ーー……ねぇエティ、私聞いてないよ?」
「私だって知らないよ……」
村から少し歩いたところにあった茂みで私とエティは額からドバドバと汗を流しながら見上げる。
「なんでこんなところにドラゴンがいるのーー!?!?!?」
そこにいたのは黒い鎧のような鱗を全身に纏った赤く目の光った巨大なドラゴン。
私たちをギロリと睨んで口からよだれを垂らす。
「ちょちょちょっと!!! これやばくない!?」
「そうだねクロエ、早くここから逃げないと!!」
私たちは一目散にそこから逃走を試みる。
ーー……が
『ギャオオオオオオオン!!!!』
「うわああああ!! 追ってきたああああ!!!」
黒い鱗のドラゴン……黒ドラゴンは翼を使わずに四つん這いのまま私たちに向かって突進。
大きな口を開け咆哮しながらものすごいスピードで追いかけてくる。
「ね……ねねねね、どうしよう! 追いつかれちゃうよ!!」
「あーもう! これでもくらえーー!!!」
エティが振り向きざまに矢を射出。
綺麗に軌道に乗った矢はまっすぐにドラゴンの眉間へ。
しかしーー……
カキンッ
矢はドラゴンに当たると同時に弾き返され地面へ落下。
追いかけてくるドラゴンの足に踏まれ簡単に折れてしまう。
「うわあああああああ!!!」
「きゃああああああ!!!」
全力で逃げていると村が見えてくる。
その時私の脳裏をよぎったのは少し前まで私とその両親が暮らしていた家……そして村。
もしこのまま村に逃げ込んでしまえば、私たちは助かるかもしれないが村にも大きな損害を与えてしまう可能性が……。
「どうにかしないと!」
「どうにかってどうするのクロエえええーー!!!」
「とりあえず……タワッシー!!!」
私は振り返ってすぐに【魔物召喚】を発動。
大量のタワッシーを召喚してタワッシー防壁を作り出す。
『ピギャアアアアアア!!!』
『ピッギャアアアア!!!』
タワッシーたちの防壁にドラゴンが激突。
なんとか防ぎ切れたようだが……
「クロエ凄い……でも上からちょっとずつ崩れてきてない!?」
「え! 本当だ!!」
大体ドラゴンの頭と激突した箇所だろう……そこに集結していたタワッシーたちがポロポロとそこから落ちてきている。
「タワッシー大丈夫!?」
『ピギャア』
なんとか生きている模様……でも結構ダメージは通っていたみたいだ。
私はリュックから薬草を取り出してパンツでパンパン☆
増やした薬草をタワッシーたちに渡していく。
『ピギャアァ……』
「だーめ、苦いけど元気になるんだからちゃんと食べて!」
『ピ……ピギャアァ』
落ちてきたタワッシー全てに薬草を配り終えた私は決心。
「エティ」
「なに?」
「ここでもう試しちゃう!!」
「え!? ここで!?」
「うん! じゃないともしかしたらここでやられちゃうかもしれないんだもん!! だったらもうやっちゃう!!」
私はタワッシー防壁から抜け出してウサギのステッキ……メルヘンラビットを両手で握りしめドラゴンへ向けて構える。
『グォオオ!!!』
私の姿にドラゴンが反応。
グルルと威嚇しながら体を私の方へと向ける。
「いくよドラゴン!!」
『グオオオオオオオオ!!!!』
私とドラゴンが互いに睨み合った……その瞬間だった。
『おいおい、勝手に盛り上がってるんじゃねーぞい』
「ーー……え?」
どこからか知らないおじさんのダンディな声が聞こえてくる。
しかし周囲を見渡しても誰もいない。
「ーー……幻聴?」
『んなわけねーだろがい』
「ーー……?」
『ステッキの上を見ろやい上を』
「上……?」
私は視線をメルヘンラビットの先端……ウサちゃんの顔へ。
すると……
グルンッ!!!
突然ウサギの顔の向きが私の方へぐるりと回転。
つぶらな瞳と目があう。
「ーー……え?」
『気づくのが遅いんじゃい小娘が』
あの可愛いうさちゃんフェイスから!?
瞬きもしてるし、口もちゃんと動いている。
ーー……え?
『なんじゃい』
「ええええええええ!?!?!?!?」
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