10 弓使いの女の子【挿絵有】
十話 弓使いの女の子
朝。 私は一晩中パンパンして増やした討伐報酬の光る玉を雑貨屋で大量に売り、充分なお金を持って武器屋へ。
ドヤ顔でカウンターにかっこいい剣を持っていく。
「これください!!」
しかしなんだろう……武器屋の主人の反応が薄い。
「あの……これ、欲しいんですけど……」
「うん。お嬢さん、一応聞いておくけどレベル……攻撃力はいくつだ?」
「え、なんでですか?」
「これは攻撃の数値が50以上ないと装備できない条件付きの武器なんだ」
「ーー……え?」
私は目を丸くしてカウンター上に置いたかっこいい剣に視線を落とす。
「それでお嬢ちゃん、攻撃力は?」
「ーー……1です」
「1?」
「1です」
「え……えーと、おじさんの聞き間違いかな」
「1です。 ちなみにレベルも1です」
「1」
「はい。 1」
しばらくの時間私はおじさんと見つめ合う。
「その……じゃあこれを買ってもお嬢ちゃんは装備できない……から、他のにした方が……」
「じゃああれは?」
私は壁に掛かった大きな斧を指差す。
「あれは攻撃力15からの装備だね」
「あの弓は?」
「レベル10から」
「あの双剣は?」
「あれもレベル10から」
「あ……あのメイスは?」
「この剣と同じで攻撃力50から」
「なんも買えないじゃないですかああああ!!!」
私はショックでその場に座り込む。
「その……あれだね、初心者のうちは安い武器でコツコツ経験値を貯めてレベルをあげるしか方法はないよ。 それか……」
「それか??」
主人が途中で黙り込んだので尋ねる。
「まぁ……無理だとは思うけど、この村から少し行ったところにヘルムート樹海ってところがあるんだ」
また出た! ヘルムート樹海!
「そこに魔物を倒したら出る討伐報酬があるんだけど、それを持ってきてくれたら特別に俺が特製の武器を作ってあげるよ。 なんかお嬢ちゃんかわいそうだし」
「その素材ってなんですか!?」
「蜂型の魔物なんだけど、そいつを倒した時にたまに出る小さな毒針さ」
「毒針……」
「そう。 そしてその毒針の中でも金色に光った毒針が出たらかなりレアだよ! それがあればあるだけ強くなると思っていい。 ーー……まぁそこは期待しないほうがいいけどね」
「分かりました!! 行ってきます!!!」
こうして私は武器屋を飛び出し村の外へ。
ヘルムート樹海へと向かった。
◆◇◆◇
ヘルムート樹海まであと少しのところ。
徐々に周囲の木々の量が増えてきて辺りが暗くなっていく。
しかしそんなことなど気にすることもなく、私はどんな武器を作ってくれるのだろうとワクワクしながら歩いていた。
すると……
「いーーやあああああああ!!!」
少し先の方から女の子の叫び声。
目を凝らして見てみると弓矢を持った上半身をフードで隠した女の子が必死にこちらに向かって駆けてきている。
黒髪ボブくらいの活発そうな見た目。
何事かと思いながらもそのまま見ていると……
「あっ……!!!」
女の子の後ろから空を飛ぶ何かが大群で追いかけてきている。
それは紛れもない……蜂型の魔獣!!
お尻から出ているその鋭い針は完全に女の子へと向けられていた。
「ちょっとそこの君ーー!! 逃げてえええええ!!!!」
女の子が顔を真っ赤にして半泣きになりながら私に向かって大きく叫ぶ。
そんな女の子に向かって蜂型魔獣はお尻の針を発射。
「ひやあああああああ!!!!」
女の子は私の目の前で転倒。
その上から魔獣が発射した針が女の子に降り注ぐ。
「きゃああああああ!!!」
まさかこんなに蜂型魔獣に会えるなんてラッキーじゃん私!!
なんとしてでも全部倒したい私はスキル【魔物召喚】を発動。
大量のタワッシーたちを召喚する。
「おいで、タワッシー」
『ピギャアアア!!!』
『ピッギャアアアアア!!!』
召喚されたタワッシーたちは蜂型魔獣の放った針から私と女の子を守るために集合合体して防壁モードに。
防御力の跳ね上がったタワッシー防壁が蜂型魔獣の針を簡単に弾き返す。
「え……なにこれ。 タワシ型の魔物??」
女の子は驚いた顔で自分を守ったタワッシー防壁を見上げている。
『ピギャア!!!』
『ピギャギャギャアアアアア!!!!』
攻撃を弾いたタワッシーたちは防壁モードを解除。 そのまま一斉に蜂型魔獣へと飛びかかる。
『ーー……!?!?』
これには蜂型魔獣もびっくり。
『ピギャアアアアアア!!!』
『ピッギャアアアアア!!』
レベルがいくつかはわからないが蜂型魔獣1体に対してレベル18のタワッシーたちが平均5体の割合で噛み付いている。
結構ダメージを与えられているようで羽を齧られた蜂型魔獣は空を飛べなくなり次々と落下。
そしてすべての蜂型魔獣が地に落ちたところでタワッシーたちは再び合体して防壁モードに。
巨大なその壁を自ら傾け、蜂型魔獣たちを一斉に押しつぶしたのだった。
「ありがとうみんな。 またすぐに呼ぶかもしれないけどよろしくね」
『『ピギャアアアア!!!』』
私はあらかじめパンパンして増やしておいた木の実をリュックから取り出してタワッシーたちにプレゼント。
その後討伐報酬の小さな毒針を回収、白ネコのリュックに入れていった。
「すごいね君、あたしレベル15なんだけど無理だったよ」
女の子が安心感からかぺたりと地面に座り込んだまま私を見上げる。
「ううん、怪我なくてよかったね」
「君、名前は?」
「クロエだよ」
「そう、ありがとうクロエ」
女の子が私に頭を下げる。
よく見たら私と同じくらいの見た目だ。
ーー……少しだけ私の方が年上かな??
「クロエはヘルムート樹海に向かってたの?」
「そうだよ。 武器作ってもらうために素材が必要なんだ」
「だったらさ、一緒に行ってくれないかな」
女の子が私の手を両手でギュッと握る。
「え、なんで?」
「私もヘルムートにしか生えてない素材を取りに来たんだ」
「そうなんだ」
女の子は腰に下げていた弓を手に持つ。
「私の武器はこの弓なんだけどね、遠距離や単体の敵には対応できるんだけど……さっきみたいに複数で来られたらお手上げなんだ。 だから……ね、お願い!!!」
女の子は再度私に頭を下げる。
うーん、別に断る理由もないしなぁ。
それに久しぶりの同い年くらいの女の子との会話だ……可能ならもっと話したい。
ということで私の答えはもちろん……
「うん、いいよ」
「やったああーー!!!」
私の了承に女の子は歓喜。
ピョンピョンと小さく跳ねながら嬉しさを表現していた。
◆◇◆◇
「じゃあ行こっか、クロエ!!」
「うん、……えーっと……」
「エティだよ!!」
「エッチ?」
「ちーーがーーう!! エッチじゃなくてエティ!!」
そうツッコミを入れたエティのスカートがふわりと風でめくれて中から面積の少ない黒のパンツが私にこんにちは。
ーー……さすがエッチ。
こうして私はエティという弓使いの女の子とともにヘルムート樹海へと向かったのであった。
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