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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
12才です。
97/191

続続続29話 青龍です。<頼もしい>


グラグラと沸騰する怒りとともに私の魔力が高まる。


そうだ、あの娘は「ミシル」だ。「ヒロイン」ではない。

「私」が「生粋のサレスティア」でないように。


私だって勘違いをした。

でも、それを正したのはミシル自身だ。

彼女は、彼女として充分に魅力的な娘だ。


だから、私は(・・)ミシルと(・・・・)友達になりたい。


私の魔力がうねる。

それでもマークは私を青龍から庇う位置にいる。顔色は変わらず青いし、切り傷だらけで血が滲んでも青龍を向いたまま。


亀様が生徒たちを転送した。きっと他の生徒の避難先へ。ありがとう!

学園が纏う、学園長や魔法使いたちの結界に重ねて、亀様の防護結界も展開される。


今、結界の中にいる人間は私、マーク、ルルー、そして倒れたままのミシル。


「マークはルルーを」


そう言って前に出る私。

青龍の魔力が更に高まる。

青龍の怒りに合わせてなのか、どんどんと空間がおどろおどろしい物になっていく。


それを感じて、私の怒りのボルテージもどんどん上がる。

怒りに合わせて具現化したハリセンが金色に輝きだした。


こんな。

こんな、立つのも辛い魔力を抱えて、三年も過ごしたのか。

誰も怪我をしないように、友達も遠ざけて、たった一人で。

いつ目覚めるかわからない、突然朽ち果てるかもしれない母親だけを頼りに。


《ノエルは、我の物だァァ!!》


結界の中で稲妻が縦横無尽に暴れる。鍛練場の地面は割れ、壁は抉れた。轟音の中でパリン!と誰かの結界が割れていく。

光のかまいたちが制服の端を切り裂く。亀様ガードを貫通するのか!

両腕で顔を隠しながらマークとルルーを振り返ると、私に笑う二人にも小さな切り傷ができている。

怒りでこめかみの辺りがピシリと鳴る。


《落ち着け、サレスティア》


「亀様は学園が壊れないように結界を!」


《承知。お前たちの守りも強くする》


「ありがと! アイツ、好きに暴れやがって!!」


《・・・落ち着け》


ピカッ!!


分散していた稲妻が一つになってこちらに飛んで来た。さっきの亀様のように、逸らすために水と風を発動。間に合え!


「お嬢!!」


マークとルルーが盾になろうと動く気配がした。

絶対させるか!

水につられて稲妻が少し動いたが、大き過ぎる!

くっそ!土壁! あとはハリセンで打ち返してやる!


マークとルルーだけには当てない!



その時、光に何かの影が飛び込んだ。



ウオオオォォォオン

ガァアアァァァアア



獣の咆哮が聞こえた瞬間、光が霧散した。



目の前には、白い獣、黒い獣、そして、白と黒の縞模様の獣の後ろ姿があった。



「え・・・なんで・・・?」


《主の危機には参じると言ったはずだ》


《青龍か、また厄介な相手と正面切って立つとはな》


《姉上、無事か?》


キョロッと白虎だけが振り返る。その姿は私よりも大きい。もう抱っこどころの大きさではない。


「何でそんなに大きいの!? サリオンは!?」


《サリオンはベッドで寝ているぞ。シロウとクロウから魔力を分けてもらったから大きいのだ。カッコ良かろう?》


ふんスーと鼻を寄せて来たのでとりあえず撫でた。大きくなってもゴロゴロとのどを鳴らす。


《姉上、我らを好きに使って良いぞ~!》


コトラの表情だ。コトラだ。虎なのに。・・・ふふ、変なの。

よし。


「助太刀感謝する! シロウとクロウはマークとルルーとミシルを守り! 白虎は私を青龍のそばへ!」


《《《 承知! 》》》


風の魔物たちは飛んで来る光を危なげなく避けて進む。あちこちと移動してるはずなのに、全然振り回されない。

視界いっぱいのたくさんの光の刃に全く恐れない。かすった所で怯む隙もない。


ああ、頼もしい。皆頼もしい。



轟音の中、稲妻が当たっても、人混みですれ違う誰かと当たる程度の衝撃と、静電気のような痛み程度なのを亀様に感謝しながら、最後、青龍に向かって真っ直ぐ。


そして。

白虎の背から飛び出し、ハリセンを振りかぶった。


「こンの!! ストーカー野郎があああ!!!」


縦一閃。

青龍の顔がひしゃげた。勢いがつきすぎて一回転する私。


「好きだというなら!ちゃんと!見ろぉおっ!」


一回転した勢いに任せ、今度は右へ横一閃。

青龍の顔が右に動く。


「最期を看取(みと)ったと言うのならぁっ!」


横一閃。

左へ。


「それほど愛したのなら!! ちゃんと見ろおおォオ!!」


ドガガァアアアンン!!!



両手で上から下へ振り抜いたハリセンに合わせて、青龍は、地面にめり込んだ。

その場所にいたミシルは、離れた所でルルーに抱かれてマークたちに守られている。


意識の戻らないミシルに、私のどこかがまたキレる。

『ノエル』とは誰だ?

どこがミシルと似ている?


その『ノエル』も、


オマエハ、ボロボロニ、シタノカ・・・?


ナラバ、モウ、サセナイ、・・・トドメヲ・・・



「駄目だよ」



静かに昂る私の前に、黒い人影が立つ。



「またそんな顔をして」



優しい、聞き慣れた、声。


伸ばされる、手。


頬に触れる、手。


アンディの手。


「もう大丈夫だよ」


私と目が合うと、にこりとそう言って、ふわりと私を包む。



私の、心臓の音がする。


アンディの心臓の音もする。



・・・あぁ・・・




アンディの服を掴んで、目を、閉じた。










お疲れさまでした。

すみません、まだ引っ張ります!(T△T)

次話、早目に出せるように頑張ります。




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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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