おまけSS③
またも、一人楽しいおまけです…
性交をテーマにしてます。
苦手な方はご注意を。
「お邪魔しまーす」
王都でヤンとダジルイの借りている部屋にニックがやって来た。亀様転移で移動したので、荷物が無く軽装だ。
「よぉ、引率お疲れさん。お前はこっちに来て良かったのか?」
「俺はいいですよ。もう王都に来ても今も店先で女の子見てきましたけど不思議とそんな気は起きないですねー」
「そうか。ほれ、ダジルイが淹れるよりは落ちる物で悪いが」
そう言いながら、まだ仕事先から帰れないダジルイの代わりに慣れた手付きでヤンがお茶を淹れる。ニックは出されたカップを大事そうに持ち、一口すすった。
「まあまあ旨いっすよ」
「褒めてねぇよ、それ」
ヤンも自分のカップに口を付けながら、ははっと二人で笑い合う。
「は~、にしても、うちのお嬢はどうなってるんですかね?」
「あ~、俺はもう考えないようにしている」
確かにそれが良いのかもしれない。
11才の少女が、領主とはいえ、独身の男たちに娼館への手配をするとは誰も考えていなかった。
「雪像造りの後から思ってたのよ。さすがに賢者になれとは強要出来ないかな~って」
その言葉を聞いたときカシーナは一瞬意識を失ったと、後からその夫であるルイスに教えられた。確かに賢者とかどっから知った!?とは思った。
まあ男にはどうにも自分だけで処理しきれない奴も世の中にはいる。
ドロードラング領にはそういった人種は集まらなかったのか、恋人夫婦以外の性交は無かった。昔からそういう風潮だったのか領内はどこの家庭も子沢山で、そのせいなのか娼館も無い。
だが現在は領民が大量に増えた。そして、食が満たされてきたからか子供たちもだいぶ発育がいい。それでも前に比べればであり、まだまだ痩せてる子が多いが。
何より表情が良いのだ。それにつられてうっかり襲ったなんて事を知ったら八つ裂きにする自信がある!と、我らが領主は凄んだ顔で言う。
「やらかした奴が八つ裂きになって気が済むのは私らだけよ。襲われた子にとっちゃもうそれどころじゃない。そんな事が起こりうるなら先に娼館に連れて行けばいいかと思ったのね」
合意なら良いのよ。
でもだからって二股も嫌だし、くっついた別れたが激しい誠実さが感じられないものも嫌だわ。結局そんなのは性格に因るし娼館があったところで解消されないとも思うけど、余計な犯罪が防げるなら行って欲しいのよ。
確かに納得の理由ではある。
が。
「まあ、いいとは思いますよ?・・・お嬢が提案したという事がすげえ複雑ですけど」
誰も言わないので独り身代表としてニックが発言をする。
「私だって何処で相談したもんか悩んだのよ。まあでもごめんね突然に」
男性陣でそれ、話を詰めてくれない?
男たちに丸投げしてくれるなら少しは気が楽だ。ちょっぴり安心した所で、ああそうそうと続く。
「私からの要望として、元盗賊たちにはちょっと高くても良いから相手にはプロ中のプロを選んで欲しいの」
はあ!? プロって・・・!
「だってあいつら今まで弱い立場の人たちしか相手にしてないのよ。それがどれだけの暴力かわからせて欲しい」
「・・・と、言うと?」
「出しても出しても搾り取られるって恐怖を教えてやって」
目の前に俯いて肩を震わせる男がいる。
「・・・ヤンさん笑ってますけどね、もう俺らショックでショックで! クラウスさんは立ったまま白目剥いて気を失うわ、嫁、恋人のいる奴らは縮みあがるわ、成人前後は涙目になるわ、女たちは無言の真顔だわ、ババアどもは笑うわで、散々だったんすよ!?」
「お、俺もその台詞は本人から聞いたよ、ひっひっ、確かに一瞬縮みあがったわ、ひひっ、いやあ、その現場にいたかったな~、あっはっはっは!」
その娼館を調べ上げたのはこの男だが、笑い過ぎだろうとニックは憮然とする。
マークなんかその日、今日はルルーに近寄れないかもしれないなんて真っ青になってたし。・・・あいつスラム出身のわりに純情だよなぁ・・・
「まあ、ク、クラウスさんは、孫娘みたいに思ってるだろうし、お前だって、娘みたいに思ってるから、余計にショックなんだろ?」
「そりゃあ・・・否定は、しませんよ」
あれだけ抱っこやおんぶを何度もしたのだ。父性も芽生える。確かに、何処の馬の骨かというような男を連れて来たらとりあえず殴り付ける自信はあった。アンドレイ王子だって不甲斐ないようなら何時でも喝を入れる用意はある。
「父親ってのは難儀だな?」
にやにやと兄貴分が自分を見ている。嫌味ではなく微笑ましそうな顔が恥ずかしいやら苛立たしいやら。
「ヤンさんも結婚してればなぁ・・・」
悔し紛れにそんな事を言ってみる。世話焼きのくせに全く女の気配が無く、かといって男の気配も無い。国のあちこちに恋人がいるという事も無い。出会った時から飄々と一人でいる。
「俺みたいな奴はしない方が良いんだよ」
確かに元暗殺者なんて付き合う相手を選ばないとその相手の方に危険が及ぶ。
弟分の愚痴に苦笑しながらカップに口を付ける。
「娘がいようが娼館に通えるからな」
ニックは顔が赤くなっただろう事に動揺した。
「い、いやいや! 娘がいたら絶対行きませんよ!」
「娘だからこそ行くんじゃないか?」
「いやいや!」
それからしばらく、動揺したままのニックをヤンがからかう時間が過ぎた。
ダジルイが部屋に帰って来た頃にはニックはへろへろに消耗していた。
酒も飲まずに何でこんな事に? 不思議がるダジルイに、こういう所がニックの可愛い所なんだとヤンが悪びれずに言った。
「仲が良いんですね」
ダジルイが悪戯兄弟を見るような目で笑うので、ニックは更に居たたまれなくなった。
人数が多いので一晩で終わるわけもなく、何故か引率者はニックに固定されたので、王都に来る度に毎回ヤンにからかわれる事になった。
ジャンル的に駄目かな~と思いながらも投下しました。テヘ(*´艸`*)




