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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
11才です。
74/191

続23話 温泉です。<欲深い>



《あ!》


え? 亀様が? 驚いた?


《・・・あぁ・・・済まぬ》


皆も聞こえたのか、近くにいる人と目を合わせてる。

私もクラウスを見て、ルルーに視線を移そうとしたら、ドォオオオーン!!という音が遠くの方に聞こえた。

慌てて執務室からバルコニーに出ると、隣国とを隔てる山脈の北の方に水柱が立っていた。


・・・何あれ。


『お嬢! あの水柱を狩猟班で調査に行ってきます!』


「あぁ、ラージスさん、皆も気をつけて!私も向かうわ」


『了解』


丁度見廻りに行く時間だったのか、三班編成でスケボーで駆けていく。


「亀様どうしたの? 大丈夫?」


《済まぬサレスティア。少し地脈の確認をしただけなのだが、(ぬく)い水が出てしまった》


・・・マジですか!?


《直ぐに閉じるから、》


「待って! 待って亀様!! それ、ずっと出しておける!?」


《ん? 勢いは放っておいても収まるが、ずっと出続けるぞ》


「キターーーッ!! お嬢より! 土木班、鍛冶班の親方は至急執務室に来られたし!」


小躍りしたいところだけど、設計図!確かここら辺に・・・!

執務室の本棚の一角に、発展計画書置場という、いつか作ろうと色んな設計図をつっこんである場所がある。


バタン!と、親方二人が連れだって扉を開けるのと、設計図を見つけたのが同時だった。


「お嬢! 外のあれは何だ!?」


「亀様が掘り当てた温泉よ!」


「おんせん・・・ついにか!!」


「今、狩猟班が確認に行ってるけど間違いないと思う。この設計図でいけるか確かめて。そして直ぐに取り掛かれるか材料の確認をお願い」


クラウスとルルーを置き去りに盛り上がる私たち。


温泉施設を造るわよ!!





そうして一週間。

出来ましたー! 早い! 欲深いってスゴいね!!


とりあえず、お湯の水溜まりに泥まみれになりながら浸かってみた。

ぬるい! 源泉は(ぬる)かったので沸かし機能を付けねば!

乾燥しても肌のツッパリはなく、匂いで具合が悪くなる事もなかったのでGO!


八時間三交代での丁寧な突貫工事! 土台にその他には魔法をガンガン使ったよ! 温泉用の水路に下水も完璧だよ! ホテルからはちょっと遠いから、ホテルからの転送陣も付けました! だから休憩用の広間はあるけど食堂は無し。ただお風呂に入るだけ。あ、飲み物は水と麦茶と偽スポーツ飲料(水に塩と砂糖とレモン汁)を常備。樽に蛇口を付けたのでセルフでどーぞ。

もちろん露天風呂もありますよ! 全天候型! 覗き防止はバッチリ!


温泉場まで歩きでもOKなように道も新しく整備しました。

ただし山を少し登るので途中は階段です。ここは注意書きを付けなきゃね。

お泊まりのお客さんは入浴料は無料(ただ)

遊園地利用の日帰りお客さんも無料(ただ)

実質、無料(ただ)


効能はまだ特定してないけど、お湯に触った私と野郎どもは肌が艶々になっていた。

なので美肌の湯!(仮)

完成した日に皆で入ったけど、それ以来女子のリピート率が半端ない!

女湯の浴槽を男湯の倍の大きさにして良かった・・・

お客さんは、夜九時までの利用にして、その後はうちらで使わせてもらう事に。屋敷に温泉をひいても良かったんだけど、広い湯船に入りたいのよ。


備え付け用の石鹸の消費量がえらい事になったけど、まあ、しようがない! せっせと作ります。

何だかんだとオープン以来、石鹸はお土産用の人気商品だ。安いし小さいけど、一月(ひとつき)は持つものね。花の香りも付いている。女性受けを狙いました。女性受け、基本です!

男性用にはレモングラスとミントのハーブ石鹸。もちろん香り無しも有り。


「髭に艶が出た!」と学園長が騒いでいたけど、正直よく分からない。肌がつるりとした気はする。・・・どんだけ浸かっているのやら。

学園長も年寄りだし、のぼせると困るので、短い時間で入るように看板を立てた。

あ、学園長! お風呂だけの利用は料金発生しまっせ! 払って!



「最近、うちに宿泊する客が増えてきたよ。ドロードラングの宿が取れないってな」

バンクス領主ブライアンさん。


「うちも増えてるよ。バンクス領でも泊まれなかった人たちで。まあ、うちは以前の森火事跡の様子を見るのも観光になってきたし、おかげさまで外からのお金が入るようになったかな」

カーディフ領主セドリックさん。


「ダルトリーは在庫に困っていた紙を引き取ってもらえるので、職人たちも給与が安定して少し活気が出てきましたよ」

ダルトリー領次期当主ドナルドさん。


「いくら亀様がいるとして、客がこれだけ増えると危険はないか? サレスティア嬢」

  

ブライアンさんが言ったけど、三人ともが気にしてくれているようだ。

月に一度又は二度の四領会議。この三人にはイヤーカフを渡してある。ブライアンさんのお父さんのバーナードさんも参加。移動は亀様の瞬間移動で私が迎えに行く。


「そうですね。今のところはのこのこと現れた奴隷屋関係は全員捕らえています。お客同士の喧嘩もあまり無いです。食料は皆さんの所からも仕入れられているので、腹をいっぱいにしておけば動きたくなくなるみたいですね」


なるほどと三人が苦笑する。

が、本当にこの三領と仲良くしていて良かった。


バンクス領は果物も多く、ジャムも使わせてもらってる。うちは果物までまだ手が回らず、森に自生している杏しかない。デザート用にとても重宝している。ビュッフェで、バンクス領産と立て札をジャムの脇に置いていたら、バンクス領で買っていくお客さんが増えたらしい。砂糖は高級品なので数があまり作れなかったけど、うちの砂糖で少し増やすことができた。よしよし。


カーディフ領では使われていないワイナリーがあり、そこで甜菜を搾るのをお願いしている。原料ドロードラング、製造元カーディフ領の砂糖です! 甜菜を作りすぎたので協力をお願いしたのでした。ゆくゆくはお酒も造るそうなのでいつかは引き揚げるけど。

カーディフ領は葡萄作りが盛ん。あの時葡萄畑に引火しなくて本当に良かった・・・・・・うぅ、清酒はどこにあるんだか・・・


ダルトリー領は紙をお安く提供してもらっている。うちから買い付けに行けば運賃が掛からない。似顔絵用のキャンバスだって大量仕入れがへっちゃらの保存袋があるからね!

買い出し担当に言わせると馬の散歩に丁度いい距離だそうだ。・・・全力疾走は例え馬でも散歩ではないよね?ねぇ?


などなど。もはやうちには無くてはならない三領だけど、その分危険度も上がった。




盗賊には、強奪型と虐殺型があるらしい。


強奪型は、主に物資や奴隷にするために奪い取る。その過程で住民を傷つけたりもする。

後々の物資が無くなるので全滅はさせない。そして盗賊同士で縄張りが出来る。


虐殺型は、例えば、村一つを皆殺し、または屋敷の住人を皆殺しにしてから物を取る。

縄張りなど関係無い。獲れると思った所なら盗賊のアジトにも入るらしい。イカれた奴らの集まりだ。

そして厄介なのが、国を選ばないで活動している事だ。


"国を選ばない"ということは、"どの国も詳しい"という事。


詳しいと上手く隠れられる。何人規模の何組が存在するのかいまだに不確定だそうだ。

 

が、どうやらその襲撃には周期があるらしい。

そろそろ我がアーライル国に訪れる時期かもしれないと、うちの元盗賊と元スラム住人からの進言があった。直接対峙したわけでは無くて又聞きによる検証結果だけど。


発展中の領地ではなく、それに引っ張られた周りの地域がその盗賊からの対象になる。

何故なら発展中の所より格段に警備の質が落ちるから。


物があって警備が手薄とか、狙って下さいと言わんばかりだ。私だって盗賊だったら狙う。


そんな理由から、三領には警備の強化のお願いと亀様の保護を掛けさせてもらう事、有事の際は私らが助太刀に行くことを了承してもらった。


それぞれ貴族同士の付き合いから、キルファール伯爵等、没落や規模縮小した領地からのリストラ人員を確保。自領の兵に組み込んだりしている。


うちはというと、盗賊、スラムはそれぞれにチームを組んでもらった。能力的には合同にしたいけれど、なかなかあと少しが難しい。まあ、私が焦っても仕方が無いし、最初から時間が掛かるのは分かっていた事だ。


最近はどちらも狩猟班に付いていったり、農具での戦い方、組み手、女子や子供たちとの連携も通常の仕事の他にやってもらっている。


元盗賊たちは基本一対一ならそこそこ強くても団体になると滅茶苦茶になるため、そこら辺をニックさん、ルイスさんの元傭兵の実践と、クラウスの元騎士の解説で勉強してもらう。


スラムの元住人たちは傭兵出身が意外と多い。戦災難民も半分以上なので自衛という事に真剣なのだけど、私が「うちの護身術は相手を倒すものではなく、逃げる隙を作る為のもの」と言うと不思議な顔をする。

敵にばかり構っていたら仲間を呼ばれるし、逃げ道を見失う。

周りを見る(・・・・・)、それがうちの護身の目的の一つだ。


自分には味方がいる。という前提でどれだけ動けるか、叩き込まれてもらってる。


元盗賊たちは戦術という点ではほぼ全員が知恵熱を出した。わっはっは。



「緊張が続きますが、お互い踏ん張り処です」


「そうだな。しかし敵が見えないというのはなかなかに辛いな」


「ん~、この中なら狙い目はカーディフ領(うち)だろうな~」


「なるほど。失礼ですけど、隠れ蓑としては狙い易いかもしれませんね」


「これこれ、そういう先入観は固定化してしまうぞ。気を付けなされ」


バーナードさんが苦笑しながら嗜める。

が、正直どこを狙われてもおかしくない。皆それはわかっているが、受け身にならざるを得ないので焦りがある。


《この四領内は血の匂いは無い。その周りも無い》


亀様の言葉に皆が小さく息を吐く。

その事(・・・)で亀様は地脈もみてくれてたんだけど、温泉が出ちゃったんだよね~。


「温泉も目玉になりそうだし、実は罠を仕掛けました。上手く引っ掛かってくれると良いんですけど」


自領の伝達手段を確認しつつ、何かあればイヤーカフで連絡することを約束して四領会議を終了。

帰り際、四人が同時に言った。


「「「「 ほどほどに 」」」」


・・・は~い・・・








お疲れさまでした。

一応、プロットは立てたのですが、それに添った話作りが出来ず、楽しみにして下さってる方には長くなるばかりで申しわけないです。


シリアス成分は、クラウスの過去で出し切ってしまったんでしょうか…次回は色々詰め込みたいと思います。…たぶん。


ではまた次回もお会いできますように。


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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
― 新着の感想 ―
[良い点] いつの間にやらこんなところまで読んでました! 面白いです! それにしても温泉はいいですね! あー行きたい!
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