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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
10才です。
58/191

続18話 飴とムチ?です。<誘拐>


そうしてまあ、ドロードラングでの生活が始まったわけなんだけど。


なんというか、飴と鞭を使いまくり。

飴は料理長ハンクさんで、鞭が私。

・・・・・・・・・物申したいが、この上ない適材適所。


領地に来る前に抱きつき診察を全員にしたけど、やっぱり誰も病気はしていない。大概が腹減りからの衰弱。

こういうのゲーム補整っていうのかな? 丈夫だよな~。



それと、細工班、鍛冶班の合同で義手義足の製作開始。土木班も狩猟班も途中参加。鉄だけではやはり重く、木や獣の皮が使われたり。

仕上げはもちろん黒魔法。これも眼鏡のように本人の血液を極小使用。


脚はともかく、手の指がきちんと動いたのには私も感動した。

ちなみに、この時にたまたま来ていた学園長も参加。色々助言をもらえたので助かった。


「またとんでもないものを造ったのぉ・・・」


スラム出身の新領民に義手を取りつけたところでの学園長の発言。

義手造りの職人はいるでしょうよ。本があるんだから。


「指が動く物を初めて見たわ。普通は一つ造るのに半年かかるのだ。細かい調整が必要じゃからのぅ。商品としての値段は高いが、製作期間が長いから採算が取りにくい。なり手の少ない職業じゃ。・・・黒魔法でここまで短期間に出来上がるとは」


違うよ学園長。早く出来上がったのはうちの職人たちが色々と考えて頑張ってくれたから。黒魔法は仕上げだけど、仕上げってのは元が無ければ出来ないんだよ。


そんなやり取りをしてる間も、二の腕から先の義手が付いた新領民は呆然としていた。ハーシーさん(40・男)は義手の右手と生の左手を、同時にグーパーとしている。


「どう? 調子が良さそうなら畑を耕してみてもらいたいんだけど、いい? それとも木剣で手合わせする?」


義手造りに関わった皆で畑へ移動。ハーシーさんへ鍬を渡し、四、五回ザクザクとやってもらった。


「まず痛い所はない? そう良かった。ひっかかりとか違和感は? あまり感じない? ・・・ふむ、ちょっとさっきよりも大振りで耕してもらえる?」


ザックザックと耕してもらってまた同じ質問をしたけど、違和感は少ないと言う。

今度は細工班や鍛冶班に聞く。


「動きが大きいと金属の擦れる音が大きいね」「だが皮を付けたとしても擦り切れるぞ?」「上手く関節が動かなくなってしまう」「形を変えれば弱くなるしな~」「やはり腕としての動きはぎこちないな」「油をさすのが一番いい」

「重さはどうだ?」


鍛冶班の親方の問いに、ハーシーさんが戸惑いながら答える。


「正直重い。久しぶりの感覚だから、変な気がする。・・・だが、丁度いいかもしれないとも、思う・・・」


また義手をグーパーとし、開いたままの手を見つめ、つー、と涙を流す。


「・・・俺の腕は・・・こんな重さだったんだな・・・」


その様子を見て、親方たちは静かに笑う。


「違和感を感じたらすぐに俺たちに見せてくれ。もうお前一人の身体じゃ無いんだからな?」


「嫁か!」


「あっはっは! お嬢うまいこと言うね!」


「嫁っていうか子供だな~。俺らで作ったからな。ははっ!」


朗らかに笑う皆を、ハーシーさんが眩しそうに見てた。



義手義足の付いた人たちはとても変化した。意欲的になった。

それにつられてスラムの人たちは明るくなってきた。

一日三食の食事が良かったのかもしれない。夜に安全な場所で眠れるのも良かったのかもしれない。働いて汗を流し、風呂に入って清潔な服を着るのが良かったのかもしれない。


よく笑うようになった。



賊の連中も少しずつ変わってきた。

これは子供たちのおかげ。

大抵が強面(こわもて)の為に避けられてきた男たちだ。毎日代わる代わる抱きつく子供たちに戸惑う姿が面白かった。


髭で遊ばれるのが嫌で剃った奴がいた。無造作に伸ばした髪で遊ばれる奴も髪を短く切った。

気晴らしにと、ニックさんとの打ち合いに、格好いい!と子供たちの声援が飛ぶ。そして、ニックさん以外との勝負に勝っても負けても飛び付かれる。


飛び付く子供をそっと放り投げると、ロックオンされ集中される。やけになって強く放っても受け身がバッチリな子供たちには屁でもない。


顔に傷のある男たちが字を読めるとわかると、子供たちが絵本を読んでと群がる。木陰で皆で昼寝をしてるのを見た時は笑った。


ある日、一人の男(顔に傷の太め体型)が私に聞いてきた。


「ここのガキ共は何なんだ? 俺らが恐くないのか?」


噴いてしまった。


「ご、ごめんごめん。だってもう見た目はサッパリしたし、もう恐くないよ?」


「最初からおかしいという話だ」


「あ~、うちは元々強面の大人が多かったからじゃない? 親方たちでしょ、料理長に、あ、料理班もわりと強面がいるな~。狩猟班もそこそこな人たちだし。ね?」


思い出しながら頷く男。それをそばにいたマークが付け足す。


「子供たちが一番に恐ろしいと思ってるのはお嬢だよ。その次はお母さんたちだな~」


おいコラ、マーク。

ちょっと!何で納得!? あ~!ってなんだ!?


「お嬢がいるとはいえ、あんたらがあんなに子供たちの相手をするとは思ってなかった。ありがとう」


マークにそんな風に言われ、男はほんの少し赤くなる。

ぶふっ。

睨む男に笑いをこらえながら謝る。


「ごめんて。え~と、ジム。ここでやってみたい職業はある?」


目を丸くするジム。

ん?


「こんだけの人数がいるのに名前まで覚えたのか・・・」


ああ、そういうこと。


「ジムのとこは腕の立つ人が多いからゆくゆくは自警団を組織してもらいたいんだ。平和なまんまで過ごしたいけど、私がいない時の保険は準備しておきたいの」


ジムの目が更に丸くなる。


「盗賊あがりに、自警団をさせるのか?」


「もちろん本職は農業よ。犯罪以外は要望は聞くわ」


「・・・俺らを信用し過ぎじゃないか?」


「そうかもね。でもうちの子らがあれだけ懐いているのを、裏切るのは難しいと思ってる」


苦虫をかんだような顔をした。

人が良いのは誰かしらね~?


考えておいてねと、その場を別れた。



子供たちはほとんどが小虎(ことら)隊に入る。

小虎隊とは、猫ミミ&尻尾を付けた子供たちがダンスをする隊のこと。

サリオンの姿で動く白虎をコトラと呼ぶことにし、それと同じ姿だから小虎隊。


小虎隊は今や一座の一番人気だ。


そして、ガットとライリーはなかなか馴染もうとしない、オッサン共だ。共に40才だけどいつも二人一緒で、盗賊一味の(かしら)に心酔していたようだ。

だから、頭を捕まえた私が近づくと物凄い目で睨む。


・・・悪いけど、全然恐くないし。



慣れるまで時間がかかるだろうなとは思っていたが、まさかこんなに早く行動するとは。



領地を出るのは見逃そうと思ってた。駄目な時はどうしたって駄目だから。



だけど誘拐は絶対に許さん!!



何で誘拐と判断したか。

ロイが5才で、小虎隊で一番人気だから。

貴族に限らず幅広い女子に人気。ふわふわ銀髪の青い目で、男の子なのに女の子にも見える中性さが受けている。

高価(たか)く買ってくれそうな人がわんさといそうだ。


《お嬢、馬の気配を辿った先にロイがいる》


ビンゴ!


「私が着くまで待機」


《承知。視界を共有する》


従魔と視界等を共有出来ると教えてくれたのは学園長だ。

スケボーを走らせながらも、今シロウが見ている隠れ家の様子も見える。


森の中の更に藪に隠された小さな小屋。場所がカーディフ領ということは、奴隷売買で使われていたのだろう。

全部壊したと思ったけど、まだあったのか。

そして地元でもない二人が知っているということは、横の繋がりもあったのだろう。


あ!ダン!


ダンも私に気づいたのか、振り返る。


その瞬間、別映像では泣きじゃくるロイをガットが殴り飛ばした。



カッとなった。ということはわかった。







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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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