17-7修復
異界の者を撃退して、世界の崩壊の危機は免れた。
しかしリルとルラのやってしまった事は皆に迷惑をかけ、それを気に病むリル。
そんなリルの背中を押すようにジルの村の長老の妻は言う。
「迷惑をかけたと思う人がいれば、みんなに同じようにリルさんが誠意を込めてご飯を作ってあげなさい。きっとみんなそれで許してくれるわよ」
その言葉にリルはまた動き出すのだった。
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
ジルの村での戦いからわずか二週間後、この村で壊された家々はほぼ元どうりになっていた。
「凄いよね、あれだけ壊れたのにもう直ってる」
「うん、まさか最後にゴーレムが家の材料になっていくとは思わなかった」
ジルの村を今までの私たちの常識と比べてはいけない。
正直、ここに居る人たちは強さも何も規格外だ。
どんなにちっちゃな子供だって、崖から落ちても平然としているし、魔法だって無詠唱魔法ばかり使われている。
住んでいる人だって人族、獣人族、ドワーフといろいろな人たちが住んでいる。
「今日も学校へ行って見るのかのぉ?」
「はい、でも今日で最後にするつもりです。それと、私たちもそろそろボヘーミャに戻ろうと思います……」
このひと月近くお厄介になっていたラディン長老にそう言うのはなんか寂しい。
でもずっとこの村にいる訳にも行かない。
私はあの避難生活の間に可能な限り皆さんに美味しいご飯を作った。
そしてそれを皆さんに配るたびに謝った。
皆さんはそんな私に「気にする事は無い」と言ってくれて笑って許してくれた。
なので、その後私はアインさんの所へ通い、そこでもみんなに可能な限り美味しいご飯を提供した。
でも、村も復興したし私の役目もそろそろ終わっても良いのかなと思い始めていた。
そして当初の目的だったこの村を見て静香を転生させてもらう事にした。
「そうか、少し寂しいがリルさんやルラさんにはまだやる事があるのかのぉ?」
「はい、その為に先ずはボヘーミャに戻ります。まだまだ迷惑をかけた人たちが沢山いるので……」
私がそう言うと、ラディンさんはすっと私の頭に手を載せて撫でてくれる。
「リルさんはいい子じゃのぉ。エルフにしてはまだまだ若木のはずなのに、今まで出会ったどのエルフより立派じゃよ」
「えへへへ、ありがとうございます。それじゃぁ、学校に行ってきますね」
「気をつけてな」
ラディンさんにそう言われ、私たちはアインさんの学校へと向かうのだった。
* * * * *
「そうか、ボヘーミャに戻るか」
アインさんにこの村を出る旨を言うと、教室にいたみんなが一斉に声をあげる。
「え~、リル行っちゃうの?」
「リルのご飯美味しかったのにぃ~、ラーシアさんより!」
「ルラも行っちゃうの? まだルラには一度も勝っていないのに!!」
「そっか、行っちゃうんだ……」
なんかみんなもそんな事言ってくれる。
授業にもずっと参加させてもらったし、お昼ご飯は私とラーシアさんで作ってみんなに食べてもらっていた。
何と言うか、みんなとも仲良くなってルラなんか何度もパルム君に挑戦を受けていた。
エルムちゃんもお昼ご飯作る時に手伝ってくれて、将来アインさんのお嫁さんになるためにお料理を頑張るとか言っていた。
エルムちゃんが成人する頃にはアインさんって、おじさんになっちゃうのだけどなぁ。
それよりシャルさんの事、どうするのだろう?
「それで、アインさんにお願いがあります。エルハイミさんにお願いして静香たちをこの村に転生させてやってください」
「ああ、分かった。定時連絡でシェル様に伝えておこう」
「それと、申し訳ないのですがボヘーミャに一番近い所までゲートで送ってもらえないでしょうか? 流石にここからボヘーミャに歩いていくには道も何も分からないので……」
申し訳ない話だが、一刻も早くボヘーミャに戻ってヤリスやアニシス様たちにも謝りたい。
特にヤリスに対しては女神の力を「消し去る」してしまった。
謝っても許してもらえないかもしれない。
でも、これは私がした事、会いに行かなきゃいけない。
「分かった、そちらも動けるものに手配をさせよう。一番近い所ではガレント王国になるが、そこから先に関しても手配してもらうように知り合いに頼んでおこう」
「ありがとうございます、アインさん」
私はそう言って頭を下げる。
アインさんは笑って頭を上げるように言う。
「その、シャルに会う事があれば必ず迎えに行くと伝えてくれ。後何百年かかるか分からないが、リルのその友人の性根を叩き直してやって、みんなが平穏に暮らせるようになるまでな」
「はい、分かりました」
アインさんは少し恥ずかしそうに頬を指でかくのだった。
* * * * *
「それじゃぁ、行きますよ」
「お願いします」
翌日、皆さんのお見送りで私とルラはガレント王国へゲートで行く事となった。
既にアインさんがそのガレント王国の知り合いに連絡して、あちらに行ったらボヘーミャまで連れて行ってくれる事となっている。
「元気でな」
「また遊びにおいで」
ラディンさんやロマーさんにそう言われちょっとじわっと来てしまった。
おじいちゃんやおばあちゃんと言う感覚はエルフの村では希薄だ。
私たちにもおじいちゃんやおばあちゃんがエルフの村にいるらしいけど、既にほかの家族を作っていてそちらはそちらで幸せにやっているらしい。
エルフの村ではどうも直接の親子以外はあまり血縁関係や親戚も何も気にしない。
と言うか、場合によっては親子で夫婦とか、兄妹で夫婦なんてのもいる。
正直私の感覚だと考えられないのだけど、ソルミナ教授を見ているとちょっと納得してしまう。
「あちらに着いたらヴォルガ大臣が対応してくれる。出迎えもしてくれるから何か有ったら彼を頼るといい」
「ヴォルガ大臣? あ、あの人ですか!」
アインさんいそう言われ、その名前に反応する。
以前ガレント王国へ行った時にいたあの大臣さんか。
顔見知りの人でちょっとほっとする。
「分かりました。いろいろありがとうございます」
「ああ、それじゃぁ元気でな」
「リル、ルラまたね!」
「ルラ、今度来た時はもっと強くなって今度こそ俺が勝つからな!」
「あ~パルム、ルラちゃんが行っちゃうんで寂しんだぁ~」
「なっ! や、約束だからなルラ!」
「リルさん、私もっとお料理頑張ってステキなお嫁さんになりますね!」
「ばいばい~またね!」
学校のみんなも見送りに来てくれている。
私もルラも手を振ってからお辞儀をする。
「それじゃ、皆さんもお元気で!」
「ばいば~い!」
私のとルラのそのあいさつで魔法陣は起動を始め、私たちはボヘーミャへと行くのだった。
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