16-22ジルの村の授業その2
女神エルハイミにより正気を取り戻したエルフの双子姉妹リルとルラ。
秘密結社ジュメルの野望に操られ加担していたが、女神によりその正気を取り戻す。
そして自分の犯した罪に後悔しながらも前に進もうとするリルとルラ。
果たして彼女らはどうなるのか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
午後は学校の広場で実技だと言う。
「うわぁ~本当に『鋼鉄の鎧騎士』だあ~」
ルラはアインさんの家の裏にある納屋から出て来た「鋼鉄の鎧騎士」を見上げている。
しかし、この「鋼鉄の鎧騎士」は私たちが知っているモノとは少し違う。
以前アニシス様が修理や解体をしていた時の「素体」と呼ばれる状態だった。
実際アインさんの顔が首元から覗いているし……
「やっと本気で体動かせる!」
「先生、あたしからね!!」
「いやまってよ、イルシャは前回先にやったじゃん、今度は僕が先!」
何故か子供たちはウキウキとこの「鋼鉄の鎧騎士」の前で騒いでいる。
一体これを使って何を始めるつもりなのだろうか?
「それじゃぁまずは魔法組からだな。合図をしたら始めてくれ」
アインさんがそう言うと、数人の子供たちが前に出る。
そしてラーシアさんが合図をするといきなり無詠唱魔法をぶっ放した!?
ぼっ!
しゅぼぼぼぼぼぼっ!!
どどがぁ~ん!!
「ひっ!? な、なにっ!?」
思わず驚いてアインさんの乗る「鋼鉄の鎧騎士」を見るけど、傷一つない。
そう言えば「鋼鉄の鎧騎士」には対魔法処理がされているんだっけ。
私がそんなこと思っていると地面が隆起して土の槍が伸び出る。
【地槍】アーススパイクと言う魔法だ!
どががががっ!
キリのようなトゲがアインさんの「鋼鉄の鎧騎士」を襲うも、アインさんは全て手に持つ剣でそれを薙ぎ払う。
「くぁ~、やっぱり全開で魔法使うの気持ちいいっ!」
「ほんとだね、思い切りやっても先生なら大丈夫だし、『鋼鉄の鎧騎士』ならこのくらい平気だもんね!!」
「あ~でも全然堪えてないな、先生」
いやいやいや、今の攻撃魔法って下手したら連合の「鋼鉄の鎧騎士」じゃ対処できなかったんじゃない?
確かに【炎の矢】くらいの魔法なら何とかなっただろうけど、【地槍】なんか対処できないで吹き飛ばされてたんじゃないの!?
「よ~しぃ、次は剣術派の連中だ、一度にかかって来い」
アインさんはそう言うと、剣を抜いた子供たちが一斉に飛びかかる。
「操魔剣!」
「はぁ、ガレント流剣技二の型、二重の刃!!」
「八方切り!!」
子供たちは必殺技を叫びながら攻撃を始めるけど、この技って全部とんでもないやつじゃない!?
がきーん!
ががんっ!
ガガガガガガガガガッ!!
子供たちの放った必殺技はアインさんの剣や盾で防がれる。
「うん、だいぶ良くなったがまだまだ踏み込みが甘いぞ! こうやるんだ、操魔剣!!」
アインさんはそう言って一瞬で姿を消し、子供たちの後ろに立つ。
そしてこつんと「鋼鉄の鎧騎士」の指で子供たちの頭を小突く。
こつん!
「いってぇ~! 先生本気出したらずるい!」
「先生の操魔剣早すぎ!!」
「ちっくしょう~、右に残影が見えたと思ったのに、連続で操魔剣使うとかずるい!」
子供たちは剣を手放し、頭を押さえながら文句を言う。
「お姉ちゃん、なんかみんな凄いね……」
「凄いどころか、これって普通じゃないわよ!」
そう、ここに居る子供たちみんな化け物じみた魔法や攻撃技を平然と繰り出していたのだった。
「あらあらあら、今日は先生ずいぶんと優しいのね? いつもなら子供たちが吹き飛ばされている頃なのに」
「いやちょっと待ってください、ラーシアさん。いつもなら吹き飛ばされるって……」
涼しい顔して救急箱とか持ってきているラーシアさん。
私は思わずラーシアさんに聞いてしまう。
「もしかしてジルの村ってこんな人ばかりなんですか!?」
「う~ん、そうね、大体みんなこんな感じかな?」
だっはぁーっ!
これは確かに普通に転生させちゃダメな人たちだ!!
こんなのが普通に世界に現れたら大事になってしまう。
「うちの村じゃ、ボケと突っ込みで突っ込みの手の平を避けないと岩を砕くくらいの力だからね~」
「それ、突っ込み違う!」
思わずラーシアさんに手のひらで突っ込みと入れるけど、ラーシアさんは笑ってそのぽよんぽよんの胸で私の突っ込みを受ける。
ぽよん♡
「くっ、大きい……」
「あらあら、リルちゃんだってそのうちシェル様と同じくらいに大きく成れるわよ。そ・れ・よ・り、そのシャルさんってどんな人? 先生のなに?」
はっ!?
突っ込みを入れた後、ラーシアさんの顔を見るとにこやかに笑っているのに前髪の下にやたらと縦線が加わった影が!!
「あたし、アインさんとやってみたいなぁ~」
「はっ!? そ、そうだルラがアインさんと手合わせしたがってるので、また後で! それじゃぁ失礼します!!」」
「あ、リルちゃん!! もうぅ~」
私はルラを引き連れて慌ててアインさんたちのもとへ行くのだった。
* * *
「みんな力ばかりに頼っていてはだめだぞ?」
アインさんは子供たちを前にそう言っていた。
しかしみんなは「鋼鉄の鎧騎士」から降りて来たアインさんにブーブー言っている。
「そりゃぁ先生は「鋼鉄の鎧騎士」に乗ってるから強いよ!」
「そうだよ、あんなの反則だよ!!」
「私、先生に勝って結婚してもらう約束まだあきらめてませんからね!!」
子供たちはそう言ってアインさんの周りに集まっている。
私とルラはそんなアインさんたちの所へ来て言う。
「あの、すみませんがルラが手合わせ願いたいって言うんですけど」
「ん? そうか、そう言えばリルとルラはスキル持ちなんだってな? いいぞ、みんなもいい機会だから見ておくといい」
アインさんはそう言ってルラに向かって向こう側の広場を指さす。
ルラは首をかしげてから言う。
「アインさん、『鋼鉄の鎧騎士』に乗るんじゃないの?」
「みんなにも教えておこうと思ってな、『鋼鉄の鎧騎士』に乗らなかくてもやりようはあるってな」
「うーん、あたし強いよ?」
「ああ、分かっている。だからこちらも色々と技を使わせてもらうよ」
そう言って広場に歩きながらアインさんは言う。
こうしてルラとアインさんの手合わせが始まるのだった。
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うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。
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