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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十五章:動く世界
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15-28救いの手

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


「分かる? この世界の矛盾が」



 挿し込んだ一筋の光の中にアリーリヤがいた。

 彼女は私に向かって優しく微笑んでいる。


「……アリーリヤ」


「そう、私はジュメルの七大使徒の一人アリーリヤ。でもねリル、この世界での唯一の貴方の理解者よ? だって私だってあちらの世界からこちらへ転生させられた被害者なのだもの」



「!?」



 アリーリヤのその言葉に私は思わず息を飲んだ。

 転生者?

 あちらの世界?



「女神そっくりな『あのお方』とか言うのに騙されてこちらの世界に転生させられた被害者よ。あなたと同じ、転生者なのよ!」


「そ、そんな……」



 アリーリヤはそう言ってふっと苦笑を浮かべる。



「あなたはエルフに転生、私はしがない平民のしかも貧しい家に転生したわ。でもあちらの世界よりはこちらの世界がまだましと思っていた。魔法と言う特別な力があれば努力さえすればこちらの世界で幸せになれると思っていた。でもそれは違う! あの女神は結局自分だけ。同じ転生者の癖に、『あのお方』の力を受けているのにすべて独り占め。私にはあなたたちのようなスキルさえもらえなかった、『あのお方』はあの女神をこの世界の末端にするから彼女に頼ればいいと言った、でもどんなに近づこうとしてもこの世界では女神は絶対、どんなに努力しても近づく事さえ許されない! 私の声なんか届きやしない! 矛盾だらけの世界よ!!」


 アリーリヤはそう叫ぶ。


 私はアリーリヤが同じ転生者だと言う事に衝撃を受けていた。

 そしてジュメルなのに何故か彼女の言葉に耳を傾きかけてしまった。



「いい事リル、この世界はあの女神のせいで凝り固まった思想と政治体形、国家も変動を見せる事無く千年の時を過ごしてきたわ。その間何も変わらずなにも起こらず。女神の導きと言って変化を良しとしないまま。でもそれは傲慢な貴族たちを更にのさばらせ、人々の暮らしが良く成る事は無いわ。イージム大陸は相変わらず魔物の脅威に怯え、サージム大陸だっていつ復活するか分からない太古の魔物たちにおののき、ウェージム大陸は世界の穀物庫に胡坐をかき富をむさぼる。ノージム大陸は公国になりはしたものの北の寒い大地では相変わらず食糧難に悩まされる。どうして魔法と言う奇跡の力があってもそれによる発展が無いの?」



 アリーリヤは一つ一つ確認するかのようにそう言う。



「それは変化をさせると女神にとって不都合が生じるからよ! 自分の思い通りにならない、自分の必要とすること以外が発生する、そんな我が儘にこの世界はずっと振り回されているのよ」


「でも、それでもあなたたちは世界に不幸を振りまいている、悪い事をしてるんでしょ!」


「それは必要悪よ。分かっているでしょう? きれいごとだけでは世界は動かないわ」



 ぐっ……

 頭では分かっている。

 アリーリヤが言わんとすることは。

 でもそれを肯定してしまうと目的の為に不幸になる人が出てしまう。



「それでも、私は……」


「リル、分かっている? この世界には輪廻転生システムが存在するわ。もし今の人生が上手くいかなくても、不幸になっても世界をより良い方向へ導けばやがてその魂は救われる。私たちがいたあちらの世界とは根本的に違うのよ。人生はやり直せるのよ!」



 人生がやり直せる……


 それは今の私にもの凄く響いてしまった。

 どんなに頑張っても悪い事なんかしていなくてもエルフの村に戻るまでにどれだけ苦労をさせられたか。

 しかもやっと戻ってもさっきみたいに村のみんなからは非難され、心のよりどころだったトランさんでさえ私を小娘扱いにして……



「全部エルハイミさんが関わっている……」


「そうよ! あの女神さえいなければ輪廻転生システムだって解除されそして人々は魂の自由を手に入れるのよ! 私のようにこの世界にで終わる事の無い輪廻転生で何度も苦汁をなめさせられる事だって終わりに出来るのよ!!」



 アリーリヤは瞳を輝かせてそう言う。

 なんどでも輪廻転生?

 思わずアリーリヤを凝視する。



「永遠に近い命を持つあなただって何かの拍子に死んでしまうことだってある。でもこの世界ではまた輪廻転生をして前世の記憶と共に終りの無い人生を繰り返すのよ。それを操られてはたまったもんじゃないわ!」


 瞳に憎悪の炎を燃やしアリーリヤは私に向かって手を差し伸べる。



「来なさいリル! この世界の矛盾を取り除くために!! そして私たちは本当の幸せを手に入れるのよ!!!!」



 アリーリヤはそう言って更にぐっとまた手を伸ばす。


「わ、私は……」





 私はそう言いながらもアリーリヤの手を取ってしまうのだった。

  


面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*すみませんが、今後当分の間は土、日曜日の更新は停止させていただきます。

うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。

ご理解の程、どうぞよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] >私の声なんか届きやしない! 矛盾だらけの世界よ!!  何も発展してないって主張は、てめぇが科学知識をバラまけば良いだけだろうに。  それが出来ない、勉強ができない人に教えるのがダメな奴だ…
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