15-24捕らわれのリル
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
「ヤリス!」
私は足元に広がる深い穴の底でこちらを見上げるヤリスを見て叫ぶ。
ヤリスは私と同じく「従属の首輪」をされて身動きできずにただこちらを見上げていた。
「リ、リル…… だめ、体が言うこと聞かない」
どうやら体の自由を奪われている様だ。
しかしそれを理解した私にアリーリヤが命令をしてくる。
「さあ、そいつをあなたのスキルで消し去って始末しなさい!」
「そんな事出来る訳なぃ…… えっ!?」
私が拒否しようとしたその時、頭の中で勝手にヤリスを「消し去る」かどうかの可否の判断があおがれる。
そんな、私はスキルを使うつもりなんて無いのに!!
「ぐ、断固拒否よ! ヤリスを『消し去る』なんて出来る訳無いでしょ!!」
「そいつは女神を崇拝する覚醒者。女神の血に連なるやつよ? 生かしておく理由が無いわ」
アリーリヤは鎖を持ち上げ私に強く言う。
「命令よ、そいつを消し去りなさい!」
アリーリヤがそう言った瞬間だった、また頭の中に選択肢の可否が浮かび上がる。
私は必死に「否」を選ぶけど、その都度再度可否の選択が浮かび上がる。
なんどもなんども。
「流石になかなかいう事を聞いてくれないのね?」
「あ、当り前よ! 誰がヤリスを『消し去る』もんですか!!」
「じゃあ命令を変えてあげるわ。ルラの右足を消し去りなさい!」
「なっ!?」
そう言って向こうをちらりとアリーリヤは見る。
するとそこにはまだヤツメウナギ女さんと戦っているルラがいた。
ただ、ルラは私とヤリスの異変に気付き、こちらに来ようとしているけどヤツメウナギ女さんに邪魔されてこちらに来られない。
「そんな事出来る訳無いでしょっ!」
そう叫んでもまた私の頭の中にはルラの右足を「消し去る」の可否選択が浮かび上がる。
またしても私は「否」を選択するけど、その度にまた可否の選択が浮かび上がる。
「しない、絶対にルラの右足を『消し去る』なんてしないっ!!」
「ふう、体の自由は奪えても流石に精神は言う事を聞かせられないか…… だったらこうよ、イリカ!!」
アリーリヤはそう叫ぶとイリカはニヤニヤしながら鎖を引っ張り言う。
「それじゃぁ、お友達同士殺し合ってね。ルラさんを殺しなさい!!」
イリカは鎖を握りながらそう命令をすると、穴の奥底にいたヤリスが高く飛び上がる。
ばっ!
「なっ!?」
ヤリスは覚醒した状態で鎖を伸ばしながらヤツメウナギ女さんと戦っているルラに飛び込んでいく。
「ヤリス!?」
ヤツメウナギ女さんの攻撃を捌いていたルラのもとに覚醒したヤリスが飛び込んで行き、ルラに蹴りを入れる。
ばきっ!
「うわっ!」
「くぅ、ごめんルラ! 体が言うこと聞かないの、自由を奪われてるの!! 逃げて!!」
涙目のヤリスは必死になってルラにそう言うも、蹴り飛ばされたルラは大きく退いてから地面に降り立つ。
「くぅ~、ヤツメウナギ女さんとヤリスが同時に相手かぁ…… 流石にこれはきついな……」
そう言ってルラは構える。
「でも、ヤリスはヤツメウナギ女さんよりは弱い! だからあたしは『最強』! 行くよヤリス、ごめんね!!」
ルラはそう言って高く飛び上がり腰に拳を溜めて叫ぶ。
「はぁっ! ドランゴ百裂掌!!」
それは黒龍のお付きメイド、クロエさんの技だった。
まるでルラの拳が分裂したかのように分かれてヤリスにそれが雨のように降り注ぐ。
どががががががっ!
「うわっ!」
ヤリスは防御そするけどその隙にルラは一気にヤリスの目の前にまで飛び込んでいてお腹に拳を入れる。
どっ!
「うっ!」
ヤリスはうめき声を漏らしてそのままルラに寄りかかるように倒れる。
それをルラは抱きかかえ、長く伸びている鎖を手刀で断ち切る。
ぱきんっ!
そして気を失ったヤリスを端の方へとそっと寝かせる。
「あらあらあら~、覚醒者あたりもルラさんには全く歯が立たないのですか? 困りましたねぇ~。アリーリヤ、あの覚醒者奪われちゃったわよ? どうしましょう?」
「ちっ、ルラの能力は想定以上か…… でもまだヤツメウナギ女がいる! ヤツメウナギ女よ、ルラを捕らえなさい!!」
アリーリヤはそう言って右手を掲げる。
そこにはもう一つの「賢者の石」があり、赤くその輝きを増す。
それと同時にヤツメウナギ女さんはルラに襲いかかる。
『ぐるぁらららぁああああぁぁぁぁっ!』
ぶんっ!
大きく振りかぶった腕がルラに一直線に振り下ろされる。
「なんのっ!」
どしっ!
だがルラはそれを片手で受け止め拳を放つ。
「必殺ぱーんち!」
ずにゅる、どんっ!
『ごふっ!』
その拳は見事ヤツメウナギ女さんに当たり、ヤツメウナギ女さんを吹き飛ばす。
ルラはチートスキル「最強」をヤツメウナギ女さんを相手に「対象」にしているから、確実にヤツメウナギ女さんより強いはずだ。
だからヤツメウナギ女さんにルラが負けるはずはない。
「ふう、まさかこっちの方が面倒だったとはね…… ルラ、動かないで。出来ればリルは傷つけたくないの」
ちゃきっ!
アリーリヤはそう言って短剣を私の喉元に当てる。
「お姉ちゃん!」
「動かないでルラ。動くとリルがただでは済まないわよ?」
「ぐっ……」
しまった。
私が人質になっているせいでルラの動きが止まってしまった。
「まあ、それでもあなたたちの実力を知るのによかったわね。ルラ、大人しくしなさい。イリカ!」
「はいはい、ルラさんも~」
ひゅん!
がき~んッ!!
「くぅっ!」
アリーリヤに言われてイリカがルラに投げつけたのは私の首についている物と同じ「従属の首輪」だ。
それは難なくルラの首を捕らえ、ルラの身体にあの電撃を流す。
ばちばちばちっ!
「くはっ!」
電撃を喰らったルラはその場で倒れる。
「ルラっ!!」
私の叫び声が響くのだった。
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うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。
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