15-10見えたモノ
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
船に揺られ二日が経った。
「見えてきました、あれが貿易都市サフェリナです」
船首に立っていたユカ父さんはそう言って遠くに見えて来た陸地を見ている。
私たちもその横に並んでその先を見ると、港町が見えていた。
ところどころ細い煙が登っている。
「ユカ父さん、街から煙が……」
「ふむ、市民のほとんどは退避はしているはずですが、流石にリルは目が良いですね。マーヤもそうでしたが私にはまだよく見えません」
ユカ父さんはそう言って陸地を凝視している。
私たちエルフ族は目が良い。
結構遠くまで見えるので港町の状況も薄っすらと見えている。
「ほんとだ、いくつか煙が登ってる」
「良く見えるわね……『同調』したってあんな遠くは見えないわよ」
ルラもサフェリナの街を見ながらそう言う。
ヤリスも同調してそれを見ようとしているらしいけど、人族にはまだ良く見えないらしい。
既にサフェリナの防衛の要である「鋼鉄の鎧騎士」は全滅したと知らせが入っていた。
「このまま港に着けるわけにはいきませんね。メリヤ、近くに『鋼鉄の鎧騎士』を降ろせそうな場所はありませんか?」
「え、えっと。たしか港の東側に砂浜があるからそこまで行けば自力で上陸できると思います」
ユカ父さんは地の利を知っているメリアさんに適所を聞く。
東側に砂浜があるならそこまで船を近づければ「鋼鉄の鎧騎士」を降ろせるらしい。
「アイザック殿、よろしいか?」
「ええ、沈みさえしなければ問題はありません。残念ながら『鋼鉄の鎧騎士』は水の中までは行けませんからね。乗っている操縦者が水で溺れてしまいますから」
意外な話、「鋼鉄の鎧騎士」は耐水性が無い。
ここに来る前にも話が出たけど、水に浸かると隙間から水が入って来て操縦者が溺れてしまうらしい。
うーん、意外とそう言う所が弱点なんだ。
「伝説のオリジナルなら耐水性もしっかりとしていたと聞きますわ。しかし耐水性を上げると重量も居住性も厳しくなってしまうのですわ」
アニシス様はシートを外し始めた「鋼鉄の鎧騎士」を見ながらそう言う。
「しかし水が入ってこない浅瀬なら問題ありません。学園長、すぐにでも出ます」
アイザックさんはそう言って騎士団の人たちに号令をかけようとする。
「待ちなさい、アイザック殿。相手は『鋼鉄の鎧騎士』を一撃で倒す魔物です。私たちが同行した事をお忘れなく。まずは上陸し、現状の偵察をするべきです。はやる気持ちはわかりますが相手の規模を把握しないといけません」
しかしそれをユカ父さんはそう言ってアイザックさんを押さえる。
アイザックさんにしてみればスィーフでの屈辱があるからすぐにでも奇襲をかけたいのだろうけど、ユカ父さんお言う通り。
まずは偵察をして相手の状況を確認しなければいけない。
「学園長! 私も偵察に同行します。お父様やお母様が心配です!!」
「メリヤ、アインシュ商会の方々は風のメッセンジャーで郊外の別荘に退避していると聞いています。残念ながらその後については詳細が分かっていませんがまずはそこへ接触をしてここ数日の状況を聞くことが先決です。郊外の別荘という場所へ案内してもらえますか?」
ユカ父さんはメリヤさんいそう言うとメリヤさんは頷きながら答える。
「はい、丁度別荘は東の丘の上にあります。アインシュ商会の別荘ならそこから街の全貌が見えます。私が案内をします」
それを聞き私たちはまずは東の砂浜を目指すのだった。
* * * * *
東の砂浜は遠浅になっていて、船でぎりぎり船底がつくかどうかの場所まで来ていた。
「ここまで来れば『鋼鉄の鎧騎士』で上陸できます。よし、全機搭乗! まずは上陸して拠点の確保だ!!」
アイザックさんのその号令ですぐに四機の「鋼鉄の鎧騎士」が起動をする。
「それでは我々は拠点確保の為先に上陸を始めます。拠点作成後は偵察が戻るまで待機します」
「ええ、そうしてください。では私たちも行きましょう」
そう言ってユカ父さんは小舟を準備して乗り込む。
偵察部隊にはユカ父さん、メリヤさん、私、ルラ、そしてヤリスも同行する。
アニシス様は拠点での準備を手伝ってもらう事になる。
「こちらの事は任せてくださいですわ。サ・コーン、ウ・コーン上陸後はテントの設営を。それと機材搬入もお願いしますわ!」
「お任せください、アニシス様」
「では我々も資材運搬を始めます」
ちなみに絶対についてくると言っていたスィーフのミリンディアさんたちは連れて来ていない。
最後の最後までアニシス様についてくると駄々をこねていたが、アニシス様が今回の件に関しては同行を許さなかった。
まあこの辺はかなりもめたけど、アニシス様がどう言った説得をしたのか最後には涙をぼろぼろ流しながら私たちを見送ってくれていた。
「では行きます。準備は良いですね?」
「「「「はい」」」」
小舟に乗りこみながらそんな事を思い出ていたけど、ユカ父さんのそれに私たちは応えるのだった。
* * *
砂浜の向こうには林が見えていた。
メリヤさんの話ではこの林をつきってしばらく行くと小高い丘があり、その頂上付近に別荘があると言う。
「こっちです。もうじき別荘に着きます」
メリアさんの案内で林を突っ切ると、小高い丘が見えて来た。
所々雑木林があるそれを上ってゆくと大きなお屋敷が見えて来た。
「あれ? 大きな建物がある」
「もしかしてこれ別荘ですか? まるでお城みたいに大きい」
「うん、うちの別荘だよ。それよりお父様もお母様も無事かな……」
メリアさんの案内で別荘に着くけど、鉄格子のような外壁があって正面の門の所にまで行かないと中へは入れそうにもない。
メリアさんはそのまま正面の門にまで行く。
「あなたは! メリヤ様!!」
回り込んで正面の門にまで行くと見張りをしていたらしき人物がこちらに気付き驚きに声を上げる。
「ロバート! お父様やお母様は!!!?」
「おおぉ、メリヤ様! 奥様も旦那様も無事です!!」
ロバートとか言うおじさんにメリヤさんは駆け寄り手を取り合って安否を確認する。
「失礼ですが、アインシュ商会の方ですね? 連合軍の増援としてきました。アインシュ商会の会長にお会いしたい」
「連合軍の! はい、ただいまお連れします。どうぞこちらへ」
ロバートさんはそう言って私たちを中に入れるのだった。
* * *
「お父様、お母様!!」
「メリヤ? メリヤなのか!?」
「メリヤ!? どうしてここへ!?」
ロバートさんに案内されて建物の中に入って行ったけど、中にはほとんど人がいなかった。
数人の人がメリヤさんの姿に驚き、「お嬢様!」とか言って駆け寄って来ていた。
そしてロバートさんは大広間に私たちを連れて行き、扉を開くと数人の人たちがいた。
「お父様、お母様、それにアーシアも無事でよかたぁっ!」
「メリヤ、なぜあなたがここへ?」
抱き合うメリヤさんたち。
家族が無事と知ってメリヤさんは涙を浮かべて喜んでいる。
「再開のさなか失礼します、魔法学園ボヘーミャの学園長をしているユカ・コバヤシです。アインシュ商会会長エルバ殿ですね?」
「あ、え、ええぇ、失礼。アインシュ商会会長エルバ=アインシュです。学園長お久しぶりです」
メリヤさんと抱き合っていた女性はメリヤさんから離れユカ父さんに向かってお辞儀をする。
お久しぶりって、面識があるのかな?
「学園長は全くおかわりありませんね」
「あなたは立派になられた。往年のアインシュ商会の会長たちに引けを取りません」
ユカ父さんがそう言うとエルバさんは苦笑を浮かべ言う。
「そう言っていただけるのは嬉しいですが、今このサフェリナはこの状態です。この街を仕切るアインシュ商会の者として歴代の会長たちに顔向けが出来なく恥ずかしい思いをしております」
「今回の件は異例です。早速ですが状況を教えてください。連合軍の増援を引き連れてきました」
ユカ父さんのその言葉に顔を明るくしてエルバさんは話を始めるのだった。
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<業務連絡>
*申し訳ございませんが、海外出張が確定となりました。
2023年10月14日から22日まで上海に行く事となってしまいました。
こちらなろう様は中国からのアクセスが出来ませんので、その間更新はお休みさせていただきます。
不便な国ですよね~中国って……
こんな物語を読んでいただいている読者様には申し訳ございませんが、どうぞご理解の上よろしくお願い致します。




