15-3身辺調査
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
生徒会の自警隊に入り、生徒たちの身辺調査に協力をする事になった。
「とは言え、私たちは特にやる事無いのよね~」
「ははは、まあ私たちのスキルとかはそうそう使う事無いですもんね」
生徒会長のアスラスさんはとりあえず身辺調査をする時に付き添ってくれという事だった。
万が一相手がジュメルの関係者だった場合に取り押さえるのに協力して欲しいと。
まあ、私たちのスキルや力があれば大抵の事は出来てしまうだろう。
マーヤ母さんやソルミナ教授に言われるような危ない事も無いと思うし。
と、生徒会の人が数枚の書類を出して来る。
「この人たちの身辺調査をします。一般生徒の中でも特に素性が不明瞭な方たちです」
書記のアルフェさんはそう言って三人の書類を私たちに見せる。
それは女生徒が二人、男生徒が一人だった。
「なになに、三人とも実力で入試には合格しているけど初級魔法が収得済み? 一般人で平民だとかなり珍しいわね」
ヤリスはその書類を見てそう言う。
私は思わず首をかしげる。
「あれ? 初級の魔法って生活魔法とかじゃないんですか??」
「それだけじゃないわよ、初級て言っても【炎の矢】とか誰かの弟子にでもならないと教えてもらえない魔法だってあるんだからね。特に攻撃魔法なんか一般人はほとんど知らないわよ? そんなモノが一般的に広まっていたらそれこそ犯罪の温床になっちゃうもんね」
そう言えば、生活魔法以外は収得する方法が誰かの弟子になるかこの学園にでも入学しないと教えてもらえないって言ってたっけ。
私たちエルフの使う精霊魔法と違って、魔法は呪文を唱えて女神様の御業を真似てるって言ってたしなぁ。
「そうすると、この人たちって誰かからその初級魔法を教わっていたって事ですか?」
「でしょうね、普通はそんな魔法は本とかで出回るのはご法度だからね。アルフェさん、この人たちをどう調べるんですか?」
資料を見終わったヤリスはアルフェさんに聞く。
「そうですね、まずは身辺調査をしてから当人に聞いてみるつもりです。既にうちのベーダ…… んんっ、知り合いが身辺を調査していますので、皆さんには当人を呼び出した時に立ち合いをしてもらいたいと思います」
そう言ってにっこりと笑う。
そう言えばアルフェさんって……
「アルフェさんはベイベイの出身でしたっけ?」
「え、あ、ええぇ、まぁ……」
なんか歯切れの悪い答え。
私は彼女を見ながら言う。
「あ、シェルさん」
「はいっ!? どこ、何処ですか!? シェル様! 私頑張ってますよ、シェル様ぁん♡」
あー、やっぱそうだ。
この人確かシェルさんの関係者だった。
大きくため息をついてから言う。
「アルフェさん、シェルさんの関係者ですよね? だったらもうこの人たちの身辺調査終わってるんでしょ?」
「えっ? あ、いあや、それはぁ……」
やはりそう言う事か。
「リル、どう言う事よ? シェル様の関係者って??」
「前に聞きました。シーナ商会のオーナーはシェルさんだって。世界的に有名なシーナ商会の本店がベイベイにあるって。そしてアルフェさんはシェルさんの関係者で生徒会役員。何を企んでるんですか?」
私がそう言うとヤリスもルラもアルフェさんを見る。
アルフェさんは脂汗をだらだら流しながら明後日の方を見てしどろもどろに言う。
「な、何の事でしょうかぁ~? わ、私は何も知りませんよ~??」
「ふう、アスラス生徒会長に私たちの事吹き込んだの、アルフェさんでしょ?」
「どきっ! な、何の事でしょうかぁ~」
完全に黒なアルフェさん。
私は思い切りため息を吐いてから言う。
「ずっと不思議に思っていたんです。シーナ商会って世界各国にあるのに何故か行く国、行く店全部私たちの事知っていたみたいで。それってシェルさんの指示なんでしょ?」
「な、何の事でしょうかぁ~??」
もう完全に目を合わせない。
そして滝のような脂汗。
「私やルラは未熟だから使えませんが、シェルさんならエルフのネットワークを使えますよね? あの時巻き込まれたけど、シェルさんは私たちの事気にしてくれてました。エルハイミさんにも私たちが異空間ではぐれた事に慌ててました。でもその後、シーナ商会に私たちが行くようになってやたらとシーナ商会は協力的になってますよね? それってオーナーのシェルさんの指示でしょ??」
「ぐぬぬぬぬぬぅ……」
今回の生徒会からの呼び出しとか自警隊に参加しろってのもなんかおかしい。
いや、むしろジュメルの関係者がまだ学園の中にいるだろうか?
最近マーヤ母さんやソルミナ教授も可能な限り私たちをジュメルから遠ざけようとしている感じがする。
いや、単純に心配してくれていて危ない事に首を突っ込まない様にしようとしているように感じる。
「アニシス様が新型連結型魔晶石核を急いで作り上げて、最強の『鋼鉄の鎧騎士』を作り上げようとかしているのも私たちに何か知られちゃいけないような事を知っているからじゃないですか?」
言いながらだんだん色々が頭の中でつながり始める。
ジュメルは私たちのスキルを欲しがっている。
アリーリヤがあの日いきなり前に現れて言ったあの言葉。
「世界の矛盾」というのは今だに私の心に引っかかっている。
「私たちの知らない何かが動いているんでしょう?」
私はアルフェさんにそう言うとアルフェさんはくるりと後ろを向いて駆け出す。
「すみません、急用を思いださいました! 私はこれで失礼します!!」
そう言って走るように逃げ出した。
「あ、ちょっと! 身辺調査どうするのよ!?」
「あ~あ、行っちゃった」
走り去るアルフェさんの後姿を見ながら私は思う。
何か大きなことが動き始めているのではないかと……
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うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。
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