14-8分かった事
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
夕飯の支度が出来てユカ父さんが帰って来たのですぐに夕飯かと思ったらアニシス様が一緒に来ていた。
「アニシス様! お帰りなさい、大丈夫でしたか?」
「ありがとうございますですわ、リルさん。でも状況はあまり宜しくありませんわ」
アニシス様はそう言って軽くため息を吐く。
「取りあえず、アニシスも上がって一緒に夕食を食べて行きなさい。急いでボヘーミャに戻って来たのでしょう?」
「よろしいのですの? ではお言葉に甘えますわ」
そう言ってユカ父さんと一緒に家に上がって来る。
マーヤ母さんはすぐにアニシス様の分も追加で準備をする。
この辺は流石と言うか。
「お帰りなさい、アニシス様~」
「ただいま戻りましたわ、ルラさん……」
アニシス様はルラを見てちょっと考え込む。
何なのだろうね?
「とにかくまずは食事です。せっかくの食事が冷めてしまってはもったいないですからね」
ユカ父さんがそう言ってとにかく夕ご飯を食べる事とtなるのだった。
* * *
「ご馳走さまでしたわ。大変美味しかったですわ」
意外だったのがアニシス様がお箸使えると言う事だった。
完全に和食のこのお料理を西洋風の生活に慣れているはずのアニシス様がお箸を使ってしかもお作法がとても良く、奇麗なご飯お食べ方をしていた。
「はい、これお茶ですよ~」
「ありがとうございますですわ」
マーヤ母さんからお茶も貰って両手でそれをすする。
その姿も奇麗に背筋を伸ばして正座して。
「さて、先ほどの続きを聞きましょう。ちょうどリルやルラもいます。彼女たちも迷いの森やエルフの村について心配をしていましたからね」
「はいですわ。それでは今まで何があったかをお話しますわ」
そう言ってアニシス様は話始めるのだった。
それはいきなり現れたそうだ。
しかも全くの前触れもなく。
被害に遭った「鋼鉄の鎧騎士」の乗り手たちはみんな口をそろえその化け物が体長約二メートルから三メートルほど、上半身が女性の形をしていて下半身が蛇みたいになっているそうな。
そして驚かされるのが顔が無く、そこには大きな口が存在しているとか。
その化け物はとても強く、大きさ的に倍以上ある「鋼鉄の鎧騎士」の外装を爪でいとも簡単に切り裂き、そして素体までも簡単い破壊しているらしい。
「ティナの国製の『鋼鉄の鎧騎士』にはクロスバンド方式のミスリル合金が使われていますわ。流石に量産型にはエルリウムΓは使っていませんがそれでもミスリル合金のクロスバンド方式であるならばその強度は例え中古であっても相当なモノ。それをあれ程いともたやすく破壊するとはですわ……」
アニシス様はその化け物についてそう語ってから一口お茶を口にする。
そしてまた話し出す。
「その魔物には他の魔物も同行していたらしいのですの。ただ、その数がかなりのモノでこちらはどうやらオーガかサイクロプスか、その辺ははっきりしませんが集団で動いているとの事ですわ」
「オーガ? サイクロプス??」
オーガとは人より一回り大きな鬼みたいな魔物。
そしてサイクロプスと言えば大きな個体は「鋼鉄の鎧騎士」並みに六メートル近くもある一つ目の巨人。
そんな物騒なのがその魔物と一緒にいるだなんて、一体……
「今までに迷宮などで魔物たちが群れる事はありましたが、街の近くでそう言った事例はありませんでした」
ユカ父さんはお茶をすすってからそう言う。
そしてアニシス様を見て言う。
「魔物が群れるという場合はその指導者がいる場合が多いはずです。その辺については?」
「ごめんなさいですわ。残念ながら私自身はその魔物に直接接触しておりませんの。ですのでそこまで状況は詳しくありませんわ。でも連合軍を含む遭遇した人々の話を聞く限り、暴れているのはその魔物だけでオーガやサイクロプスたちはただその様子をじっと見ているだけらしいのですの。実際その魔物がオーガたちの指導者かどうかは不明ですわ」
魔物が群れを成し、そして何かの意図をもって動いていると言う事?
そんな話は確かに聞いた事が無い。
「ふむ、そうするとその魔物たちは一体何を目的としているのでしょうか?」
「それが分からないのですわ。しいて言いうならば力試し…… そう、力試しという言葉が当てはまりますわね……」
アニシス様はそう言ってルラを見る。
ルラは首を傾げ頭の上にクエスチョンマークを浮かべているので話を理解していない様だ。
「力試しですか…… そう言えば連合軍もかなりの痛手を受けたとか」
「はいですわ。連合軍が送り込んだ合計五体のうち四体が無残にも破壊されましたわ。アイザック様の改修型が到着が遅れ、その場に到着した時点ではすでに四体とも大破して全く動けない状態だったそうですわ。破壊された連合の『鋼鉄の鎧騎士』を見ましたが、どれもこれも一撃の様な傷跡でしたわ。中には操縦者にまで被害が出て大ケガをしていましたが、一命はとりとめましたわ。そしてその後にその魔物たちはスィーフから離れ北上したと言われていますが、全くと言っていいほど足取りが取れていませんの。あのまま北に行けば迷いの森にぶつかるはずですが、そう言った魔物の目撃情報が一切ない、まるで霧か何かのように消え失せてしまったのですわ」
アニシス様はそう言って大きくため息をつく。
そしてここまでが私が調べた事ですわと言ってお茶をすする。
「うーん、アイザックさんと改修型は無事なんですね?」
「はい、改修型は仲間の大破した『鋼鉄の鎧騎士』の回収を最優先したので、追撃はしていませんでしたわ。ただ、エルリウムΓを使い、外装をミスリル合金のクロスバンドで仕上げたあの機体でもあれだけの攻撃力を持った魔物に対抗できるかどうか私でも心配になりましたわ、あの大破した『鋼鉄の鎧騎士』を見た後ではですわ……」
アニシス様はそう言って自分で自分の両腕を抱きしめてぶるっと震える。
それほどまでにその魔物は強力という事になる。
しかし、北上を始めて姿を消しただなんて、一体どこに行ったのだろう?
「ご苦労様でした、アニシス。状況は分かりましたのですぐに連合の本部とファイナス市長に連絡をしましょう。世界的にこの情報を流し、その魔物たちが今どこにいるかを掴むのが最優先になるでしょう」
「そうですわね、そうした方がいいですわね……」
アニシス様はそう言って力なく頷くのだった。
* * * * *
「聞いたわよリル、アニシス様が昨晩戻って来て例の魔物について話をしてくれたんだって?」
翌日教室でヤリスがそう聞いて来た。
情報が速いなとか思いながら答える。
「はい、夕飯時に来たので一緒に夕飯食べてから話を聞きました」
私がそう言うとヤリスはうらやましそうに言う。
「え~、リルの手料理食べてたんだ~」
「夕食はマーヤ母さんが作ってくれて手伝っただけですよ、私は」
私がそう言ってもなんかうらやましそうにしている。
と、そんな話をしていたらアリーリヤさんが珍しく声を掛けて来た。
「アニシス殿下が戻って来た? 例の魔物ってなに?」
「あ、いやそれはその~」
隣にいたアリーリヤさんにしっかりと聞こえていたようだ。
この件についてはまだ正式に発表されて無い話だしなぁ。
「まだはっきりしたことは言えないですけど、水上都市スィーフに魔物が現れてそれが問題になっているらしいんですよ。それでアニシス様が調べに行っていたんですよ」
「水上都市スィーフに……」
アリーリヤさんはそれだけ言って黙り込んでしまった。
「それでリル、アニシス様とどんな話したのよ、教えてよ!」
「あ~はいはい。順を追って話しますね」
ヤリスにせがまれて私はまた話を始める。
アリーリヤさんのうっすらと笑う仕草に気付かずに。
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