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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十三章:魔法学園の日々
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13-36夏休み終わり

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


「お姉ちゃんここどうやるの?」


「あ~ここはねぇ~」




 なんだかんだ言って私たちはボヘーミャの魔法学園に戻っていた。

 今回はヤリスの国やアニシス様の国に行って色々なものが見られた。

 

 今までと違って自分で何とかして帰らなければならないとかと言うのとは違って、終始ご飯は出るわ、お風呂は気持ち良かったわ、おやつのクッキーとかチョコレートは美味しかったわで至れり尽くせりだった。


 まあ、それ以外にもいろいろ有ったけど、基本やはり友人宅に遊びに行っていたようなものだったから、気分的にだいぶ余裕があった。



「とは言え、課題をやってなかったのはまずいわねぇ~。ユカも緩んでいるから明日から稽古の量を増やすとか言ってたわよ?」


「う”っ!」


 マーヤ母さんはお土産の下着を並べながらニコニコしている。

 そしてたまに「これなんかどうかしら?」とか言いながら夜の営みに使う下着選定の意見を私に聞いてくる。

 

 いや、そういう経験ないから分からないですってば!



「うわぁ~ん、お姉ちゃんここも教えて、後ここもっ!」


「ほとんど全部じゃない! ルラ、あんたちゃんと講義聞いていたの?」


 夏休みの宿題に頭を抱えるルラ。

 私は私でちゃんと終わっているから、あとは自由研究位なんだけど。

 後一週間くらいはあるからその間に何か研究しなきゃなぁ……


 と、とあることに気付く。


 魂の中に魔素ってのがあって、それを引っ張り出すと魔力になり、世の中に存在するマナに影響を及ぼして魔法を発動させる。

 これが魔法の原理。

 でも元居た世界でそんなおとぎ話のような魔法なんか存在しない。


 でも現に私たちはこっちの世界で魔法が使える。


 なんでだろう?



「あの、マーヤ母さん。ユカ父さんって一旦はあっちの世界に帰ったんでしょう? その時も魔法は使えたんですか?」


「ん? ユカの元居た世界? 駄目ね、あっちの世界は魔素が魂に封じ込められていて、魔力として外に出す事が出来ないらしいのよ。だから魔法が使えない。でも自身の体内ではその魔力循環に似た事が出来るので身体強化とか、同調に近い事は出来たらしいわね。おかげであっちの世界ににじみ出ちゃった異界の住人たちは何とか倒せたみたいだけど」


 そう言いながら下着の一つをつまみ上げて私に見せる。


「ねぇねぇ、これなんかどうかしら? ああ見えてもユカって派手なのを好むのよ!」


「いや、ですから経験の無い私に聞かれても困るんですけど…… 良いんじゃないですか?」


 私がそう言うとマーヤカーさんは大喜びをする。

 まあ、夫婦円満は何よりだし、あれって確かおまけでもらったやつだ。


 私がそんな事を思い出しているとマーヤ母さんは早速その場でスカートを脱ぎ始める。



「マーヤ母さん! 自分の部屋で下着替えてください!!」


「あらあらあら~つい嬉しくてね~。じゃ、ちょっと行ってくるわね~」



 私は大きなため息を吐くのだった。



 * * * * *


  

「リルぅ~! 夏休みの宿題全然やってなかった! お願い手伝って!!」


「あんたもかいぃっ!!」



 朝稽古が終わって、ソルミナ教授の所へ自由研究について相談に行ったらヤリスがいた。

 そして私を見るなり今のこれだ。

 ルラもそうだけど、絶対に最後の数日で宿題終わらなくて徹夜するパターンだ。



「まったく、課題はそれほどないんだからちゃんとやりなさいよね? それでリル、何の用?」


 ソルミナ教授は何やら魔晶石をいじっていた。

 私は抱き着くヤリスを片手で押さえてソルミナ教授に聞く。


「えーと、自由研究で気になっていたんでその辺について聞こうかと思って。魂と魔素の関係について」


 私がそう言った瞬間だった。

 ソルミナ教授が手を止め、ヤリスが騒がなくなった。



「リル、あなた……」


「リル、本気で言ってるの?」



 ソルミナ教授もヤリスも私を見ながら絶望するような顔をする。

 いや、一体何か悪い事でも聞いた、私?



「あの、魂と魔素について何か聞いちゃまずい事でもあるんですか?」


「リル、魂ってなんだかわかる?」


 私がソルミナ教授にそう聞くと質問で返された。

 ソルミナ教授のその質問は、はっきり言って良く分からない。


「魂って、えーと……」


 改めてそう言われると一体何なのだろう?

 その人の中核を成すもの?

 でも転生とかしたらまた違ってくるし、言われて見れば何なのだろう?


「駄目です、よくよく考えると分かりません」


「……そうなのよ。魂って未だになんだか解明されていない。ただ言えるのは私たちの魂は成長できるって事。それはジルのあの村で実証されているわ」


「はいっ?」


 魂が成長できる??

 なにそれ?


 私が頭の上にクエスチョンマークを浮かべているとソルミナ教授は言い始める。



「通常魂って『魂』としか認識されていなくてそれが何であるかの本質を研究した実例は無いわ。ただ分かっているのは、女神様を含め皆その『魂』ってのを持っているってことよ。そして『魂』の大きさは魔力の大きさに比例する。つまり、『魂』に内包された魔素が魔力の強さに比例するの」


 ソルミナ教授は魔晶石を置きながらそう言う。

 そして自分の胸に手を当て、言う。


「私たちエルフの魂は人族のそれとほとんど変わらない大きさよ。やや大きいかもしれないけど、それは私たちエルフは内包する魔素が大きいからかもしれないわ」


 そしてヤリスを指さし言う。


「人族の魂はエルフ族よりやや小さいのが多いいの。でも中にはとても大きな魂を持つ者がいるわ。それが転生者。転生者はその魂自身が経験を積み、鍛錬を重ねる事により大きく成る。そして破格の魔力を保有して強靭になって行く。それが実証されたのがあのジルの村。何度も転生してその魂が強靭になり、大きく成って行く。それはエルハイミさんが何かを望んでいるからだと思うのだけど、私たち下界の者にそれを理解できるかどうかね……」


 そう言ってソルミナ教授はまた魔晶石を手に取って言う。


「例えばこの魔晶石、これには風の精霊が閉じ込められているわ。単に閉じ込めただけだから持って二十年くらい。私たちエルフにしてみれば一瞬ね。でも人の世ではこれにより天候を予見できる魔道具に仕える。二十年間もの間に天候の予見が出来ればその土地の作物は豊かに育つ」


 そう言って私たちを見渡してからさらに言う。



「でもこの魔晶石の中にいる風の精霊には『魂』が無いの」


「えっ?」



 言われて初めて気づいた。

 確かに精霊には魂が無い。

 動物や生き物にはあるのに。



「それが『魂』の不思議な所よ。魔素を内包して魔力を出して来る存在。その人物を成型する中核。そして転生する事によってその大きさが大きく成って行く。ほんと、不思議な存在よね、『魂』って。だから誰も研究をしない。しても理解が出来ないモノ、それが『魂』なのよ……」


 そこまで言ってソルミナ教授はため息をつく。


「魔導士として興味を持つ事は良い事だわ。分からない事を紐解くというのも魔導士として重要な事。特に私たちエルフ族には時間がある。リルがその気があるなら『魂』について研究するのもいいかもね。あ、でも夏休みの自由研究として題材に取り上げるのは難しいわよ?」


「ですよ、ね…… うーんじゃあ何を研究対象にすれば……」


「そうだ、お姉ちゃんソルミナ教授のお土産は?」


 ルラは課題のノートから顔を上げて私の腰のポーチを指さす。

 そう言えばティナの国でシルクの下着を買って来たんだった!



「ソルミナ教授、遅くなりましたがこれお土産です。ファムさんもよろしく伝えてくれって言ってました!」


「ファム? あのベイベイにいたファム? そうかぁ、あの子今はティナの国にいるんだっけ。とするとこれは……」


 紙袋に入ったそれをソルミナ教授は引っ張り出して広げる。


「やっぱりシルクの下着! しまったぁ、もっとセクシーなのお願いしとくんだった!! 今度こそ兄さんを襲う為に!!」


「いや、襲わないでくださいよ。普通に使ってくださいってば……」



 駄目だ、どうもエルフのお姉さん方はすぐにそっちに考えが行ってしまう。




 私はヤリスがだったらこっちのも在りますよと何故か別のシルクの下着を引っ張り出すのを見てため息をつくのだった。

     


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