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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十三章:魔法学園の日々
329/438

13-31渡りのエルフ、ファム

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


「ふわぁ~凄いね~っ!」



 ルラは街の西側にある煙が黙々と出ている工場を見ている。

 規模的にもかなり大きな工場だ。


 翌日ティナの街を見に行こうと言う事で、まずは同じエルフ族がいるという製糸工場を見に行く。

 なんでもここティナの街はシルクの産地でもあるらしくその産業を立ち上げるのに私たちエルフ族の尽力もあったそうな。


 で、今だにそれが続いているようでここ製糸工場ではファムさんと言うエルフがいるそうな。

 名前からして女性っぽいけど、もう千年くらいここで絹糸づくりをしているらしい。



「そう言えばエルフの村でもお父さんが食べてたあのさなぎって糸取った後のやつだったような……」


「ああ、あの白いやつかぁ~。そう言えばお母さんはそれ集めて糸作ってたっけ~?」


 エルフの村での事を思い出しながらあの油で揚げたさなぎを思い出していた。

 なんであんなゲテモノ食べるんだろう……


 エルフの村は基本自給自足だから、何でも自分たちでやらなければならない。

 ちなみに意外かもしれないけど、鍛冶もやっている。

 サラマンダーとか精霊の力は借りるけど。



「ここがティナの街の産業の要である製糸工場ですわ~」


 アニシス様はにっこりと笑って工場の中へ入る。

 途端に繭を茹でている匂いがする。



「うっ、この匂いきついわね?」


「ああ、これこれ~。油で揚げててもこんな匂いするんだよねぇ~」


「ううぅ、嫌な事思い出した……」



 まだよくわからない頃にカリカリで美味しいとか言われて騙されて食べたさなぎの油揚げ。

 ちょっと酸っぱかったりしてにゅるにゅるしているから何かと思ったらさなぎ。

 昆虫食はエルフでは普通にしているけど、繭以外の他のさなぎなんか捕まえて来て油で揚げる前までうにうに動いているし!!


 私がそんな事思っていると、アニシス様が奥で誰かと話をしている。



「いえ、ですからお断りしますって! アニシス様はもうたくさんの妾がいるでしょうに!」


「でもエルフの方はいないのですわぁ~。ファルさんがもし来て下さればきっと満足させてあげますわ!!」



 めげないな、アニシス様。

 ブレないとも言う。

 まったく自分の欲望に忠実な人だ。



「アニシス様、良いですか?」


「あらあらあら~私ったらファルさんに会えて舞い上がってしまいましたわぁ~。ファルさん、こちらエルフの村から現在ボヘーミャに留学中のリルさんとルラさんですわ~」


 放っておくと長くなりそうなので先に声を掛けさせてもらった。

 するとアニシス様はファルさんと言うエルフの女性に私たちを紹介する。


「あら、見た感じまだだいぶ若木だけど年幾つ?」


「あ、どーも。リルです。こっちは双子の妹ルラです。えっと、生まれて十七年です……」


「渡りのファムよ……ってぇ! 十七歳!? いやちょっと待って、あなたたち誰の娘?」


 なんかかなり驚かれている。


「えっと、母はレミン、父はデューラです」


「レミンさんの娘? なに、レミンさんって子供いたんだ! ん? ちょっと前にエルフのネットワークで言っていた双子のエルフの姉妹で失踪してってのはもしかして……」


「ああ、多分それ私たちです。かくかくしかじかで、シェルさんとエルハイミさんがらみです」


「うっわぁ~……」


 ざっくりと経緯を言うともの凄く微妙な顔した後にファムさんと言う渡りのエルフは嫌そうな顔した。

 やっぱりシェルさんとエルハイミさんの名前出すとみんなこんな顔するんだよね。



「ま、まあそれでも生き残れたのは僥倖よ。しかもイージム大陸でしょ?」


「は、はぁ。そうですけど……」


 流石にファイナス長老も全部は皆に言ってない様だ。

 私たちの秘密の力は大々的に言うもんじゃないし。


「とにかく、その若さでここまでしっかりしているとは、レミンさんも凄い子供産んだわね。あ、そう言えばデューラさんは結局レミンさんの尻に敷かれたか……」


「はははは、ファムさんはうちの母と父をご存じで?」


「村にいた時にね。レミンさんは若木に精霊魔法を教えてたのよ。そうかぁ、あのレミンさんがねぇ」


 何となくしみじみと言う。

 しかし目をつぶってひとしきり頷いてから私たちを見て言う。


「それで、ファイナス長老からボヘーミャに留学しろって言われたわけ?」


「はい、いろいろ学べと」


「ふーん、まあイージム大陸を生き延びてきたんだから大丈夫でしょう。所でここの見学に来たのよね?」


 ファムさんはそう言って大きな釜で茹でられているお蚕のさなぎを指さす。

 私は頷いて言う。


「はい、ここの産業を立ち上げたのがエルフ族って聞いて。それとマーヤ母さん……と、マーヤさんにも買い物頼まれていますしね」


「マーヤ? マーヤってボヘーミャにいるマーヤさん??」


「はい、今は私たちのボヘーミャの身元引受人兼保護者になってもらっています」


 そう言うとファムさんは私たちをじろじろともう一度見る。


「まあ、マーヤさんもねぇ~。じゃあリルやルラは実の子供のようにかわいがられているでしょう?」


「よくわかりますね。マーヤさんの事はマーヤ母さんって呼んでます」


「やっぱりね、マーヤさんも子供欲しがっていたしなぁ。学園長との間に子供作るにはエルハイミさんたちの力が必要だし。そう言えばあの女神さん今何やってるのだか」


 ファムさんはそう言って目を細めて唸る。


 いや、エルハイミさんたちはジルの村で修羅場が続いているっぽいのですが……



「ま、いっか。で、ここは大量のお蚕を養成してこの口上でシルクの絹糸を生成しているのよ。そうそう人族はさなぎ食べないからさなぎは養殖池の餌になっているのよ」


「養殖池?」


「ここティナの街は北方だけど様々な産業があるの。もともとここはエルハイミさんたちの拠点だったしね」



「はいっ!?」



 ファムさんにそう言われアニシス様を見る。



「そうですわ~。始祖母様はここでティアナ姫の転生者と子を成し、今のティナ王家を築いたのですわ~。でも女神の身で人の国に留まるのは良くないと、子孫である私たちに国を預け天界にお住みになられたのですわ~」


 アニシス様はそう言ってうんうんと頷く。


「あ、うちのガレントも同じよ。ティアナ姫の転生者って人が私たちの祖先になるの。勿論女神様との間に生まれた子供よ!」


 今までいろいろ見ていたヤリスがここぞとばかりに自慢げにそう言う。


「もともとガレントと王国は魔法王ガーベルが起こした国。そして始祖母様もその魔法王の血を引いていたと聞きます。つまりティナの国もガレントも元は同じと言う事ですね」


 アイシス様もヤリスに続きそう言ってくる。

 つまり、この辺奥にはみんなエルハイミさんの血統と言う事か……

 道理でヤリスもアニシス様も女の子が好きなわけだ。

 少しその血統に背筋がぞわぞわして近づきすぎると私の貞操が危なくなるような気がして来た。


 うん、適度な距離とろう。



「それで、ここで出来あがった絹糸を隣の紡績工場でシルクの反物にしていろいろなモノを作るのよ。おすすめは女性の下着ね。当時のデザインが主流になっているから後で縫製工場も案内してあげるわよ。でも一度使ったらこの下着以外使えなくなってしまうから要注意ヨ~」


 ファムさんはそう言ってにっこりと笑って短めのスカートをめくる。



 ぴらっ♡



 そこには白のレースがたっぷりと使われた、おっとなぁ~な下着があった。



「これなんか最新作よ? 履き心地は勿論お尻の形を矯正する為にラインにお尻を持ち上げる構造を入れているから、奇麗なお尻の形になるのよ!」


「いや、分かりましたからしまって下さい! いくらここに居るのは皆女性だからって、見せなくても良いじゃないですか!!」



 実演ではないけどまさかスカートまくり上げられて下着を見せられるとは思わなかった。



「はぁはぁ、うっすらと金色が見えましたわぁ!」


「え、エルフが穿くともの凄く見栄えが良いわね! リルやルラにも穿かせたい!!」


「あら、この新作は私も欲しいですね。お尻のラインが美しくなるならなおさらに」



 案の定アニシス様もヤリスも大興奮でファムさんの下着姿をガン見しているし、アイシス様も冷静に矯正に興味があるようでファムさんのお尻を眺めている。



「とにかくファムさんしまってください! そんな事ばっかやっているからアニシス様たちからアプローチ喰らうんですよ!!」



 職人気質なのだろうけど、お願いだからそう言う実演はしないで欲しい。

 エルフがみんな痴女と思われてしまうから。




 工場の大きな音に負けないくらいに私の叫び声もこだまするのだった。



面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

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[一言] >道理でヤリスもアニシス様も女の子が好きなわけだ。 >少しその血統に背筋がぞわぞわして近づきすぎると私の貞操が危なくなるような気がして来た。  そしてその中には…… ルラ「お姉ちゃんも同…
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