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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十三章:魔法学園の日々
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13-13ヤリスの故郷

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


 魔法学園ボヘーミャからガレント王国へゲートを使い私たちはやって来ていた。

 魔法のカーテンが上から下へと降りて行くと先ほどの学園の地下室とは全く違った場所にいた。



 そこは明るい窓のある小部屋だった。



「精霊都市ユグリアのファイナス市長、ようこそおいでくださいました。 それとヤリス王女お帰りなさいませ」


「こんにちは、ヴァルガ大臣でしたね。お久しぶりです」



 すぐに声をかけられてそちらを見れば初老のおじさんと近衛兵の皆さんがいた。

 ファイナス長老はゆったりとそちらに振り向き挨拶をする。



「ただいま、ヴァルガ大臣、アニシス様も来てるわよ?」


「これはこれは、アニス王女殿下もご無沙汰しております」


「ごきげんようヴァルガ殿、数日厄介になりますわ」


 アニシス様はそう言って膝を折る簡略的な挨拶をする。

 それを受けて大臣と呼ばれた初老のおじさんは胸に手を当て頭を下げる。


「勿論でございます、アニシス王女殿下。それでは皆様まずはこちへどうぞ」


 お辞儀をしてから私たちを引き連れ応接間に行く。

 ガレント王国のお城は小奇麗にされ、連れられてゆく応接室までには調度品が並べられその格式の高さをうかがわせる。



「皆様にはまずこちらでお休みいただきます。王の謁見の準備いたしますのでしばしお待ちくだされ」


「あ、ヴォルガ大臣、これ学園長から預かって来たものなの。私も着替える前に先にお父様にこれを渡しに行くわ」


「ほう、ボヘーミャの学園長がですか? ヤリス様、私が王にお渡ししましょうか?」


「大丈夫よ、直接お父様に渡して来る。それじゃみんなちょっとごめんね」


 そう言ってヤリスとヴォルガ大臣は出て行ってしまった。

 私はファイナス長老を見て言う。



「あの、私たちも王様に謁見しなきゃなんですか?」


「そうですね、ヤリス王女の友人として遊びに来ていてもまずは国王に挨拶する方がいいでしょう。リルもルラも人族の王に会うと言う体験はしておいた方がいいでしょう」


 いや、ジマの国でもう会ってます。

 もっとも、あの時はカーソルテ王よりも黒龍のコクさんの方が偉そうで、王様っぽく無かったんだよなぁ。


 でもちゃんとした王様に会っておくのもいい経験かも。

 それにお土産を渡さなきゃならないからね。


 そんな事を言いながらお茶を出してもらって待つ事しばし、応接室のドアがノックされた。



「お待たせしました、謁見の間で王がお待ちです。どうぞ」



 ヴォルガ大臣にそう言われ私たちは謁見の間へと連れられてゆくのだった。



 * * *



「って、まだ上るんですか?」



 私は思わずそう言ってしまった。

 だってどう考えたってもう五階分は上へあがっている。


「そう言えばリルとルラはガレント城は初めてだったな。この城は城壁の上にあるから謁見の間まではまだまだ上るぞ」


 ソルガさんはそう言ってまた上がり始める。

 ファイナス長老やアニシス様たちは平然と階段を上っている。

 息が上がり始めたのは私とスィーフの皆さん。

 ルラは平然としている。



「なんでこんなに高いのよぉ~」


「何でもその昔『落ちてきた都市』とかが有ってそれを取り囲む様に街の真ん中に城壁が出来てその上にこのお城が出来たって話よ」


「何で城壁の上に?」


「魔法王時代の空に浮かんでいた都市だから、魔法生物とか危ないゴーレムを封じ込める為らしいわね。冒険者がこぞってその遺跡に挑んでいるらしいけど痛い目を見るのがほとんどらしいわ」



 後ろではぁはぁ言いながらスィーフの皆さんがそんな事を話している。

 そう言えば前にそんな話も聞いたっけ。


 でもそんな苦労も見えて来た大きな通路の向こうの大きな扉のお陰で終わりを迎える。



「やっと着きましたか……」


「お姉ちゃん大丈夫?」


 スィーフの皆さんと一緒に息を整える為はぁはぁ言ってるとルラが覗き込んでくる。

 ほんと、双子なのにこの子は体動かすのだけは強い。



「そろそろ良いですか? それではガレント王、カムリグラシアに会いに行きますよ」


 ファイナス長老がそう言うと門の左右に立っていた衛兵さんが踵を鳴らし、声高々にファイナス長老、アニシス様たちの名を呼び大きな扉が開かれる。


 そこは正しくおとぎ話で出てくるような王様との謁見の間だった。


 私たちはファイナス長老とアニシス様を先頭に王様の前まで行く。

 そしてみんなして膝をつき頭を下げて挨拶をする。


 

「ガレント王におかれましてはますますのご健勝のこととお喜び申し上げます」


 ファイナス長老がそう言って世辞を述べる。

 するとすぐにガレント王も声をかける。 


「よく来られた、ファイナス市長、アニシス王女。どうぞ頭を上げられよ」


 もう初老に入るだろう頭に白いものがちらほらと見えるその王様、ヤリスの父親でもあるガレント王カムリグラシア=ルド・シーナ・ガレントその人の声は低くお腹に響くような声だった。



「ファイナス市長、早速だが状況を詳しくお伝え願いたい。中古とは言え、正規のあの『鋼鉄の鎧騎士』が倒されるなど少々信じがたい話ですのでな」


「仰ることはよくわかります。ガレント王国の『鋼鉄の鎧騎士』は世界最強と誉高いですからね。しかし入ってきた情報は事実。早急に連合軍の議会を開くべきでしょう」


 

 ざわっ!



 流石にファイナス長老がそう言うとこの場にいる人たちがざわめく。


「静まれ。 分かりました、では早急に議会を開かせましょう。 アニシス王女、済まぬがこの後急ぎの用が出来てしまった。晩餐は歓迎会を開く故、ご容赦願いたい」


「いえいえ、お気に召さらないでくださいですわ。私は友人であるヤリスとアイシスの所へ遊びに来たのですもの。難しいお話は陛下にお任せ致しますわ。勿論、ティナの国も何か有れば十分にご協力致します故に」


 そう言ってまた軽くお辞儀するアニシス様。

 カムリグラシア王はそれを聞き頷き「よろしく頼みますぞ」とだけ言う。


 そしてなんかこっちを見ているような……



「そなたらが学園長の娘であるリル殿とルラ殿か?」


「はいっ?」



 私とルラを見てそう言う王様に驚き顔を向ける。

 その眼は鋭く、しかし優しいおじさんの顔でもあった。


「娘とは仲良くしてもらっている様だな、一人の父親として礼を言う。そして学園長のあの手紙の話も読んだ。願わくば女神様の御加護を」


 そう言って立ち上がる。

 それで謁見は終わりとばかりに他の人たちもバラバラに動き始める。



「リル、ルラ、アニシス様! 終わったわね、こっちです!」


 と、初めて気づいたけど王様の後ろに控えていた奇麗なドレスを着たお姫様ってヤリス本人だった!!



「よく来ました。歓迎しますアニシス」


「はい、アイシス様もお変わりないよですわ」


 あ~、あのお姉さまもいるんだった。

 謁見は終わりなのでファイナス長老は私たちに向かってこう言う。


「私はこれから連合軍の議会に出席します。あなたたちとはこれより別行動になりますがあまり羽目を外し過ぎないように」


「では我々は行くが、リルにルラ、城ではあまり問題を起こすんじゃないぞ? 一応エルフ族とガレント王国は友好関係なんだからな?」


「しませんってば! 私たちはシェルさんじゃないんですから」


 そう言うと流石のソルガさんも笑って手を振ってファイナス長老と一緒に行ってしまった。



「さてと、堅苦しいお話は終わったから私の部屋に来て!」


「うん、でもヤリスの凄いドレスですね……」


 白を基調としたおしとやか風のドレス。

 あ、アイシス様も同じドレスだ。


「まあねぇ、一応外交用のドレスだけど窮屈でね。部屋言ってすぐ着替えるわよ」


「ヤリス、いくら友人とは言え城の中ではわきまえなさい」


 いつものヤリスだったけど、後ろからアイシスお姉さまのその一言でビクッとなり、背をただす。


「わ、分かっています! 大丈夫ですよ、リルとルラに色々と見せたいものがあるんですよ!!」


「ならいいですが。私はアニシスとお話がありますから。アニシス、私の部屋へどうぞ」


「はい、分かりましたわ。ではヤリスにリルさんルラさん、また後程ですわ」


 そう言ってアニシス様とヤリスのお姉さん、アイシス様は行ってしまった。

 ウ・コーンさん、サ・コーンさんとスィーフの皆さんを連れて。



「ふう、行ったか。さてとそれじゃぁリルとルラはこっちに来て、早速私の部屋を見せるわ!」


「まあいいですけど……」


「ところでお姉ちゃん、ユカ父さんに渡されたお酒をヤリスのお父さんに渡さなくていいの?」



「あ”っ」




 その後慌ててヤリス経由でお土産のお酒を引き渡す私だったのだ。 



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