12-40大魔導士杯第三戦目その3
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
勝手に私をかけた勝負が組まれてしまった。
「アニシス様、どう言う事ですかこれは!!」
「うふふふふ、まさしく棚ぼたですわ。スィーフのあの四人が私のモノになる、犬になる。どう調教してあげましょうかしらですわ~♡」
駄目だ、完全に私が勝つ事前提になっている。
もしこれで負けたら私は一晩あのミリンディアさんに好きにされてしまう。
冗談ではない!
こんな所で乙女の命を散らしてたまるもんですか!
「絶対に負けられない……」
「そうよ、リルの初めては私がいただくんだから!」
「お姉ちゃんお初めてって何?」
既に頭お花畑のアニシス様は楽しい妄想をしている様だ。
ヤリスはヤリスで私の周りで両手の拳を胸の前に持って来て鼻息荒く変な事言ってるし、ルラはルラで余計な事に興味を持っている。
「とにかく、勝ちにいきます! 相手はスィーフチーム。きっと自国のお料理とか出してくるはずです!」
スィーフチームのお姉さん方が一体どんな料理を出して来るか分からないけど、自国の料理を出して来るのが一番可能性が高い。
となればこちらは……
「今の時期に見合った食材を選定して、そしてそれの味を引き出したお料理を……」
と、そこまで言ってふと気づく。
ここ数ヶ月このボヘーミャにいたけど季節の変わり目を感じない。
いくら何でもそろそろ季節が変わってもおかしくないはずなのに……
「ねえヤリス、ボヘーミャって四季ってあるのですか?」
「ん? 四季? 春夏秋冬の四季? 無いわよ。ここは一年中ほとんど変わらない気候で熱くもなく寒くも無い、ほどほどに乾燥もしていて一年中温和な場所よ?」
しまったぁーっ!
そうか、なんか変だと思ったらボヘーミャって四季が無いのか!?
エルフの村はあれでも四季があった。
夏と冬はそれほど厳しくないけど、それでも季節の変わり目があり木の実が出来る時期や花がたくさん咲く時期とか有った。
エルハイミさんたちに飛ばされたイージム大陸にも四季らしきものはちゃんとあったし、南方のサージム大陸の方もそうだった。
しかしサージム大陸に近いウェージム大陸南方のここボヘーミャは四季が無いのか!!
「こ、これでは旬の素材を使ったお料理が出来ない…… ん? そう言えばマーヤさんって一体どこで旬の食材手に入れているんだろう??」
お料理を手伝っていると「今日はさんまの良いのが手に入ったから大根おろしと一緒に焼きさんまにしましょう~」とか、「タケノコの良いのが入ったから、タケノコご飯にしましょう~」なんて言っていた。
あまり気にしてなかったけど、ボヘーミャの近くでそんな季節の変化が無いのに何処で手に入れたんだろう??
『それでは各チーム準備が出来たようですね? 制限時間は二時間、さあ審査員を唸らす【美しき料理】はじめっ!!』
私が悩んでいると司会のメリヤさんが開始の合図をする。
途端に各チーム材料置き場に走り必要な素材を取り始める。
私も慌てて材料を見に行くけど、ホント一体どこで手に入れたんだと言うような食材が並んでいる。
「えーと、リルどれを持って行けばいいの?」
「お姉ちゃんお肉あるよ、いっぱい!」
「私、お魚はあまり得意ではないのですわ、ティナの国では魚の燻製ばかりで飽きてしまいまして」
一緒に来てくれたみんなは材料の前でそんな事言ってるけど、一体どうしたら……
ちらりとスィーフチームを見ると案の定、魚を主体に材料を持ってゆく。
和食、洋食、中華……
一体どれが正解なんだろう?
「お姉ちゃん、どうするの?」
「どうするって…… とりあえずこれとこれ、この辺とかこの辺も持って行って! 後はこれとかも!!」
私はとりあえずよく使う材料と使えそうな材料、そして新鮮そうな食材をチョイスしてみんなで手分けして持ち去る。
そして自分たちのブースでその食材を並べながら考える。
「見た目の美しさ、それを加味して美味しく香りがよく、そして楽しめるもの…… って、そんなものあるの!?」
思わず頭を抱える。
私の技術じゃフグの薄造りとかできないし、そもそも奇麗なお皿も無い。
鶏や獅子牛の丸焼き?
嫌見た目のインパクトは有っても「美しい」と言えない。
イタリアン?
いや、美味しいけど見た目では今一なんだかわからないものが多い。
中華?
満漢全席とか凄いけど、見た目じゃなくあれは量だ。
「となると、やっぱり和食か…… 今の私の技術で何処まで出来るか……」
精霊都市ユグリアでイチロウ・ホンダさんのお料理をいただいたのを思い出す。
あれは完璧に懐石料理だった。
味も見た目も素晴らしく、こちらの世界に来て一番驚かされた料理だった。
しかし……
「駄目だ、イチロウ・ホンダさんのあんな凄い和食の真似なんて出来ないよぉ~」
「お姉ちゃん?」
頭を抱えている私にルラが覗き込んでくる。
「お姉ちゃんの作る物ならきっと凄いのが出来るって! あたしお姉ちゃんの料理全部好きだもん!」
「あのねぇ、全部好きってお子様ランチじゃあるまいしいろいろなモノ全部なんて……」
ちょっと待て。
お子様ランチ??
確かにあれには子供が好きそうなものが一つのプレートにモリモリに詰め込まれていた見た目もそうだけど楽しくなってくる。
―― 一番大切なのは真心なの。誰かの為に作るお料理はきっとその人に笑顔をもたらすわ ――
マーヤさんのあの言葉が蘇る。
一番大切なのは誰かの為に作るお料理。
それはきっとその人を笑顔にする。
そうだ、見た目の「美しき料理」は奇麗なだけじゃない!
見てて楽しく、そしてその人に笑顔をもたらせれば!!
「ルラ、やるよ、お子様ランチ作るよ!!」
「え? お子様ランチ?? わーい、あたしそれ大好き~♡」
そう、お子様じゃなくてもお子様ランチはワクワクするもの。
だってみんなが好きなお料理を詰め込んだ宝箱なのだから!
私は早速お子様ランチの構想を練り始めるのだった。
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