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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十二章:留学
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12-19たこ焼き

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


 イメージトレーニングを始めて一週間が過ぎた。

 正直言って何の変化もない。


 あ、変化と言えばルラには内緒で借りて来たソルミナ教授の薄い本がマーヤさんに見つかり、怒られるかと思ったら一緒に楽しむ仲になってしまった。



「これ、凄いわね。こんな風に攻められちゃうんだ」


「いやそれはほら、空想ですから///////」



 マーヤさん、容赦なくその描写が描かれている絵を見せながら指さして言わないでぇ!


 真っ赤になりながら私はもじもじと言う。

 するとマーヤさんはあっけらかんとした顔で言う。



「何恥ずかしがっているの? リルは転生者だから以前こう言った経験がるのでしょう?」


「な、無いですっ! あの時だって私まだ高校生で、そんな事経験なんて無いですってば!」



 妊娠した事のあるマーヤさんはそっちのほう面ではやたらとおおらかで、ズバリと言ってくる。

 正直通算で三十路を越えている私だけど精神年齢はあの時のまま止まっているし、経験だってもちろん無いからこういった話に赤面してしどろもどろになってしまう。


「ふぅ~ん、意外だったわね。高校生って確かユカと同じくらいよね? こっちで言う人族の成人してちょっとって感じかしら?」


「ま、まあそんな感じです」


 ペラペラと薄い本のページをめくりながらマーヤさんは笑って言う。


「でもこの指南書通りにやったらいくら私たちエルフでもすぐに子供できちゃいそうね? うーん、ユカが男でないのが残念ねぇ~」


「マーヤさん、学園長の子供を本気で欲しんですか? 女同士なのに??」


「そうねぇ、男でも女でも好きになっちゃったら変わらないわよ。そして出来ればその人との間に愛の結晶が欲しいって思うのは女として当たり前だと思うのだけど?」



 なんかマーヤさんが言うと深い。


 私が生前いた世界でもマイノリティ問題って言うのはあった。

 同性同士のカップルや男なんだけど心が女とか、女なんだけど心が男とか。

 多様性が求められる時代だったけど、生物としては不可能な願望。

 同性同士で子供は出来ない。

 それが常識だった。



 でも……



「エルハイミさん、手伝ってくれないかなぁ~。一応育乳や子宝の女神様でもあるんだからねぇ~」


「いや、マーヤさんあの人にお願いするといろいろまずいんじゃないでしょうか…… 生物の理が完全に狂っちゃう人達ですから……」



 この世界おかしいよ!

 同性同士で子供できちゃうなんて!!



 そりゃぁ私も好きなBとLの本で出来ちゃう話あるけど、それって空想だから良いのであって現実に男性同士じゃどうやって生み出すのよ?

 もしこの世界でも男性同士で出来ちゃったらどうなるのよ?

 出産できるの??

 しちゃうの??



「お姉ちゃん、見て見てこれ!!」


「おふっ! ル、ルラぁ///////」



 なんかものすごい事想像していたらルラがいきなりやって来た。

 慌てて薄い本をしまってマーヤさんに押し付けるけど、ルラはそんな事には気付かずにちゃぶ台の上に両手に持っていたモノを置く。


 そこにはどこからどう見てもたこ焼きにしか見えないものがあった。


「ル、ルラこれってもしかしてたこ焼き?」


「あら、そう言えばリルとルラはこのボヘーミャの名物料理『たこ焼き』って食べた事無かったっけ?」


 マーヤさんは薄い本を見事に瞬間で何処かにしまい込みちゃぶ台の上のたこ焼きを見る。

 するとルラはにこにこしながら楊枝を突き刺して言う。


「ヤリスに奢ってもらったの、おっぱい触らせたら~」


「こらルラ、そういうのやめなさいって言ってるでしょうに!!」


 やばいやばい、ルラもだんだんとヤリスに感化されている。 

 このままでは妹の操が危険だ。



「それより早く食べようよ~ せっかく温かいんだから~」


 言いながらルラはたこ焼きを一つひょいっと持ち上げ口に運ぶ。


「はふはふ、おいひぃ~」


「あんたねぇ…… でもたこ焼きなんてのがここボヘーミャの名物だったなんて」


「そうねぇ、千年前くらいにイチロウ・ホンダさんがこっちで広めたのよ。ボヘーミャはクラーケンのちっちゃいのが良く捕れるからね。そう言えば最近私も食べてなかったわね、どれどれ」


 言いながらマーヤさんも手を伸ばし、一つ口に運ぶ。


「はふはふ、うん、おいひいわね。このあふいのがたまらないのよね~」


 なんかベタな事言っている。

 私は軽くため息をついてからたこ焼きを口に運んでみる。


 そして驚く。



「はふはふっ、これはぁ!!」



 いや、これすごいレベル高い。

 たこ焼きのセオリーである周りがしっかりと焼かれていて、しかし油で揚げたようなカリカリではない。

 噛むと中がまだトロトロで、ギリギリ生地に火が通っている感じは絶妙な焼き加減である。

 生地にもしっかりとした味がつけられているので、もの凄く美味しい。

 しかもこれって多分かつおだしに昆布が使われている。

 中に入っている具の選定も素晴らしく、長ネギに少量のキャベツ、天かすに大ぶりのタコ、そして分からないように含まれているいりごま!!


「こ、これすごい。もの凄くレベルが高いたこ焼きだ……」


 私にはわかる。

 これってソースをかけないで塩でも行けるほどおいしい。

 勿論今このたこ焼きにはソースが塗られ、鰹節に青のりもしっかりとかかっている。

 向こうの舟にはマヨネーズなんかもかけられているのでそっちにも手を出す。



 はむっ!



「んっ、こっちもおいひぃ~」


「だよね、こっちのマヨネーズ付きも美味しいってヤリスが言ってた~」


「あら、こっちもいけるわね。マヨネーズかぁ、今度作ろうかしら?」



 マーヤさんもマヨネーズ付きを食べながらそんな事を言っている。

 そう言えばマヨネーズって表面の細菌をちゃんと消毒しないと食中毒になるから要注意なのよね。



「マーヤさん、マヨネーズ作るなら手伝いますよ。生卵の表面は雑菌が多いから私のスキルで『消し去る』すれば安全ですよ」


「あら、それって便利ね~。じゃあ今度一緒に作ろうか? そうそう、確かチキン南蛮とか言うのにも合うのだったわよね? 今晩はそれにしましょうかしら?」


「わーい、チキン南蛮だぁ~。あたしそれ大好き~」


 たこ焼きを食べながら今晩のおかずの話するのもなんだけど、マーヤさんの作るお料理は確かに美味しい。

 それにたまにはちょっと洋風のが混じった食事も好いもんね。

 基本ここに居るとずっと和食だから。




「すんすん、おやこの香りは『たこ焼き』のようですが?」


 マーヤさんと色々話していたら学園長がやって来た。

 珍しく鼻をヒクヒクさせている。


「あらユカ、お帰り」


「みんなでどうしたと言うのです?」


「ああ、ルラがたこ焼きを持って来てね、ユカも食べる?」


「たこ焼きですか、久々ですね。では御相伴に預かりましょうか……」



 はむっ!



「もごもご、ん?」


 マーヤさんがそんな話をしているとルラが最後のたこ焼きを食べてしまった。


「あら?」


「あっ……」


 残念ながら学園長は一個もたこ焼きを口にすることは出来なかった。

 もうちょっと早く来ればよかったのにねぇ。





 

 翌日の朝稽古が何故か厳しかったのはまた後で語る事にします……

  


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[一言] >ボヘーミャはクラーケンのちっちゃいのが良く捕れるからね うんえー「またこれを運動会の障害物走で使ったら、メッ!しますからね?」 < ○ >  < ○ >
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