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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十一章:南の大陸
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11-23:自宅

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


ただいまぁ~なのだぁ~!(ルラ談)


「お母さん、お父さん、ただいまっ!」



 私は扉を開けて開口一番そう大きな声で言う。

 

「ただいまぁ~」


 そしてルラも同じく。

 するとリビングにいたお母さんが手に持っていたエルフ豆の茹でたものを落す。



「リル、ルラっ!」



 お母さんはすぐに扉の所まで駆け寄って来て私とルラを抱きしめる。

 ふわっと香る花の香。

 お母さんが好んで付けていた香水の匂い。


 ああ、やっと帰って来られたんだ。

 思わず私もお母さんをぎゅっと抱きしめる。


「リル、ルラっ!! よく無事で!!」


 お父さんも駆け寄って来てお母さんと私、ルラを抱きしめる。

 ちょっと痛いほどの力だったけど、森の香りがする。

 エルフにしてみればちょっと汗臭く感じるけど、今はそれが心地いい。



「リル、ルラ良く帰って来てくれたわ。本当に心配したのよ。ファイナス長老からは外にいる渡りのエルフたちがあなたたちを保護してくれているから大丈夫って聞いていたけど何処も何ともない?」


「うん、大丈夫だよお母さん」


「えへへへへ、問題無かったよ~」



 お母さんに抱きしめられながらそう答える私とルラ。

 お母さんはもう一度ぎゅと抱きしめてから一旦離れ私とルラの顔を見る。


「本当に良かった…… シャルから話を聞いた時には本気で肝を冷やしたわよ。二人の顔をもっとよく見せて」


 シャルさんとあまり変わらないような年齢に見えるけど、うちのお母さん確か二千歳を超えていたはず。

 お父さんも確か二千五百歳を過ぎていたはずだから、千歳くらいのシャルさんよりずっと年上になる。


 ……シャルさんを二十歳とするとお母さんってもう四十歳か。

 それでこの見た目んだもの、やっぱりエルフって反則だよね?



「どうやら無事再会は果たせたようだな、レミン、デューラ話がある」



 聞こえてきたその声はソルガさんのモノだった。

 お母さんもお父さんもその声に反応してソルガさんを見るのだった。



 * * * * *



「ファイナス長老がリルとルラを呼んでいるの? どう言う事、ソルガ??」



 重要な話があると切り出したソルガさんはリビングの椅子に座ってお茶を飲んでいた。

 概訳を話し終わったソルガさんにお母さんは眉をひそめ聞く。



「ファイナス長老からはまだ聞いていないか? 実は二人には特殊な能力がある。スキル持ちだ」


「スキル持ちだって? こんな幼い若木か?? ソルガ、それは本当なんだろうな!?」


 ソルガさんのその言葉に思わずお父さんも食って掛かる。

 しかしお母さんは努めて冷静だった。



「ソルガ、教えて。この子たちには一体どんなスキルがあるって言うの?」



 お母さんはそう言ってソルガさんを見る。

 ソルガさんはお茶のカップをテーブルに置いてから私とルラをちらっと見てから言い出す。


  

「かなり強力なスキルだ。この子たち二人がいれば巨人すら倒せるだろう。そしてその力はジュメルにもうつけ狙われているらしい」


 それを聞いたお母さんもお父さんも驚きに言葉を失う。

 お母さんは私たちの所まで来てまたぎゅっと私とルラを抱きしめる。


「お、お母さん?」


「リル、あなたたちがスキル持ちって言うのは本当なの?」


 お母さんは抱きしめながらそう聞いてくる。

 まさか、エルフ族でスキル持ちってヤバいの?

 やっぱりそれを知られちゃうと村から追い出されちゃうの??



「う~ん、あたしは『最強』でお姉ちゃんが『消し去る』だよ~。コクさんはエルハイミさんと同じ力の源から来ているって言ってた~」



 うわっ、ルラそこまで言っちゃったらまずいんじゃないの!?


 お母さんはルラからそれを聞くと更に強く私たちをぎゅっと抱きしめる。

 それからゆっくりと離れて行ってまじまじと私たちの顔を見る。



 ごくり



 やっぱまずかったのかなぁ。

 お母さんも私たちの事嫌いになっちゃうのかなぁ?

 もし村を追い出されたらどうしよう?


 私がそんなことを心配していたらお母さんが歓喜の声をあげる。



「凄いわリル、ルラっ! エルフでスキル持ちだなんてもう勝ち組決定よ!! あなたたちはエルフの中でもエリートコース確定、凄い凄いっ!!!!」



「はえっ?」


「ん~あたしエリートなの?」


 完全に想定外だった。

 エルフ族でスキル持ちってそんなにもてはやされるの?

 じゃあ今までの私の気苦労は??



「レミン、喜んでいる所すまないがリルとルラのスキルはあまりにも強力すぎる。だからファイナス長老がお呼びなんだ」


 なんか親バカを見る目のソルガさん。

 それでもお父さんと一緒に喜んでいるお母さん。


 うーん。


 私はソルガさんを見る。

 するとソルガさんはやや肩をすくめて苦笑をする。



「あの、ソルガさんエルフでスキル持ちってすごいんですか?」


「ああ、そうだな。エルフでスキル持ちと言うのは初めてじゃないかな? もともと我々はどの女神様に作られたか分からないが、神話の時代から女神様につき『女神戦争』をしていたがいち早くそれから離脱した種族でもあるんだ。その後アガシタ様が主神になられたが我々には世界樹がある。だから女神様に対しての信仰が薄い。結果的に神の加護であるスキルを持つ者は生まれてこなかったのだよ」


 ソルガさんはそう言って私の頭を撫でてくれる。

 私は頭を撫でながら疑問に思う。

 だってカリナさんもソルガさんもこの力の事は秘密にした方がいいって言ってたのに。



「でも、それだけ凄い事ならなんでみんなに言っちゃダメなんですか?」


「それは…… 確実にメル長老に面白がられてお前たちが苦労するからな…… あのお方、自分の興味のある事にはやたらといらないやる気を出されるからな。ロンバ殿もそれで苦労なされている……」



 うっ。

 そう言えばカリナさんもそんなような事言ってたっけ。


 

「それにな、お前たちはまだまだ若木だ。そのあまりにも強力な力に振り回されないか心配でもある。だからファイナス長老もお前たちに会いたがっているのだよ」


 そう言うソルガさんの表情は戦士長の時とは違いやたらと優しい表情だった。

 しかしソルガさんはいつも通りの顔に戻りお母さんとお父さんに言う。



「そう言う訳で、明日ファイナス長老にこの二人を合わせたい。良いだろう?」


「そう言う事なら勿論よ、ああ、リルとルラがスキル持ちだなんて!!」


「私たちもついて行った方が良いのかな?」



 ソルガさんのその言葉にお母さんもお父さんも了解の返事をするけど、かなり浮かれている。

 しかし私にはすぐにでもしなければならない事がまだあった。


 私は魔法のポーチに手を入れ二つの包みを取り出す。



 一つはトランさんの遺髪。

 大事にハンカチで包んでおいたもの。



 もう一つは私たちを迎えに来てくれていてジュメルの連中に巻き込まれて死んでしまった狩人のジッタさんの遺髪。

 これもバーグと言う神官から渡された大切なものだった。



「ソルガさん、すみませんがトランさんのご家族とジッタさんのご家族の所へ連れて行ってもらえないでしょうか。これを預かっています」


 そう言って私はその二つの遺髪を見せる。

 ソルガさんはそれを見ただけで全てを理解した様で静かに頷いて言う。



「そうか、リルとルラが二人の魂を持ち帰ってくれたか…… 大樹もやがて寿命を迎え土へと帰る。出来れば自分の生まれ育った大地に帰りたい。二人ともよくやってくれた」


 そう言ってまた私の頭を優しく撫でてくれる。




 その瞬間トランさんのあの笑顔を思い出し私は泣き出してしまうのだった。



面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*申し訳ございませんが、私生活がまだまだ忙しくなっておりまして更新はしばらく不定期とさせていただきます。

読んでいただいている方にはご理解いただけますようお願い申し上げます。


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― 新着の感想 ―
[一言] >「レミン、喜んでいる所すまないがリルとルラのスキルはあまりにも強力すぎる。だからファイナス長老がお呼びなんだ」 >その瞬間トランさんのあの笑顔を思い出し私は泣き出してしまうのだった。 …
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