10-16海獣退治
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
海獣?怪獣??(ルラ談)
「あれは巨大で繁殖期にはとても獰猛になるのです……」
シスターネヴェリアさんはそう言ってぐっとこぶしを握る。
私はその海獣と言うモノについて全くと言って良いほどぴんと来ない。
一体どんなモノなのだろうか?
「海獣ていうから海の怪獣なのかな? 火を吹くとか?」
「いえ、そう言う事は無いのですがあまりの巨体の為船が転覆させられたりするのです。それと運が悪いと彼らの特徴である一角の角に貫かれて命を落とすと言う事もあります。本来は穏やかな性格なのですが繁殖期だけは獰猛になるのですよ」
そう言いながらシスターネヴェリアさんは立ち上がり「少々お待ちください」と言って奥の部屋へ行く。
そして一冊の本を持ってやってきた。
「これが海獣と言われる一角獣です」
本のあるページを開きながらそう言って私たちに見せてくれる。
そこにはオットセイみたいな姿に口の辺から一本の長い角が生えている挿絵が書かれていた。
「これが海獣? なんかアザラシかオットセイみたいだね~」
「うん、でもなんか昔テレビで見たことあるような生き物だね? でもこれってそんなに獰猛で大きいんですか?」
「はい、本来はもっと他の島々に生息するらしいのですが今回は航路にある小さな島々に巣をつくったとか。もともと大海は他の海獣、水龍やクラーケンなどという凶悪な海洋生物がいる為にガレント王国の保有する『鉄の船』でもない限りすぐに沈められてしまいます。このアスラックの町とサージム大陸の港町ツエマの間にある孤島の航路はそれ等狂暴な魔物たちが近寄らないので古くから定期航路として活用されて来たんですよ」
そうなんだ。
前々から思っていたけど、大陸間どうしでの船での航行はかなり限られているらしい。
その理由が航路上の海獣、つまり魔物たちの問題だったんだ。
「ネヴェリアさん、海の魔物ってそんなに強いの? 見つからない様に船って出せないの??」
「ええ、どうやら大海には縄張りがあるらしく、そこを航行する船は襲われやすいらしいです。ですので軍艦やそれ相応の武装をした船でない限り大海の航行はかなり危険視されています」
ルラはネヴェリアさんにそう説明されてう~んとか言って唸っている。
でもまあ、安定した航路があるならそれに越した事は無い。
「わかりました、実は私たちもギルドから海獣の駆除を依頼されているんですよ。明後日にギルドが準備した船で行くのですが事前にどんな怪獣か分かったので助かります」
「リル様とルラ様も海獣退治に行かれるのですか? やはりエルフの方は『女神の伴侶シェル様』のように有能な方が多いのですね! 凄い!!」
そう言ってネヴェリアさんは両の手を合わせキラキラした目で私たちを見る。
いや、別にエルフだからってすごいわけじゃないんだけど……
確かにシェルさんは規格外かもしれない。
あの黒龍のコクさんとエルハイミさんをかけて争ったとか言うらしいし。
それに私たちもチートスキルがあるのも普通じゃないのは自覚している。
今まではそれを隠していたけど、カリナさんがファイナス長老に暴露してくれたおかげで犠牲を増やさないために自力で戻って来いとか……
仕方ない事とは言え、最近の私たちの扱いはぞんざいなんじゃないだろうか?
「任せて! あたしは『最強』だから!!」
「凄い! 流石シェル様のお知り合い!!」
「いや、シェルさんとは知り合いだけどそれとこれとは別なんですが……」
今までもシェルさんと間違わられたりとしてきたけど、あの人と同格に見てもらいたくはない。
私たちはいたって普通だし、その、女の子同士でそう言う趣味は無い。
「とにかく色々ありがとうございました、私たちはこれで」
「ご武運を。女神様はきっとリル様、ルラ様を見守り続けていますから」
いや、エルハイミさんに見守られても……
それに見守る暇があるならとっとと私たちをエルフの村に連れ戻してもらいたいくらいだ。
あれだけ大騒ぎしてもう一年半くらい放置されっぱなしで音沙汰無いのだから。
そう言えば、ジルの村とかに慌てて飛んで行ったけどその後どうしたのだろうか?
確か「覚醒した」とか聞いてそれが原因であんなに慌てていたし。
分体だったコクさんの所にいたエルハイミさんもだいぶ時間が過ぎても慌てていたようだったし……
そんな事を思いながら私たちは協会を後にするのだった。
◇ ◇ ◇
「それではよろしく頼む!」
「は、はぁ・・・・・・」
港で冒険者ギルドが準備した船に私たちは乗せられている。
船着き場では冒険者ギルドマスターのハウザーさんがにこやかに手を振っている。
まったく、いい気なもんだ。
もっとも、この航路が復活してもらわないと私たちもサージム大陸に渡る事が出来ない。
私は大きなため息を吐いてからこの中型船を見渡す。
スピードを重視した船らしく、細長いこの船は定期船のような大きさは無い。
それでも先端には補強らしく鉄で出来た飾りがついていて、火薬で飛び出す大砲とかも装備されている。
人力でも動けるようにたくさんのオールが付いていて水夫の皆さんも結構いる。
そんな船は私たちを載せて静かに港を出発するのだった。
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