7-5消えた夢
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
フルーツ牛乳って美味しいよね?(ルラ談)
秘密結社ジュメルの七大使徒アンダリヤの野望は消えた。
そして私たち胸に悩みを持った女性たちの夢も消え去った。
「っぷはぁーっ! やってられないわよ!! 二回目の施術で一体いくら私が注ぎ込んだと思うの!?」
腰に手を当てフルーツ牛乳を一気飲みしたメリーサさんはそう言って空になった牛乳瓶を回収用の木箱に入れる。
結局豊胸の夢が潰えて皆さん地道にここ銭湯の「育乳の女神様式マッサージ」を受けに戻って来ていた。
まあ、確実に大きくはなるのだろうけどそれは受ける人による。
「なんでみんなおっぱい大きくしたがるんだろうね~?」
「ルラ、一応はあなたも女の子なんだからそう言う事言わないの。小さい胸は赤ちゃんにおっぱいあげるの足らなくなるって言ったでしょ?」
フルーツ牛乳を飲み終わってルラも回収の木箱へ牛乳瓶を返す。
そして私にそう言われまじまじと私の胸を見る。
「なるほど……」
「何がなるほどよ!?」
思わずルラの胸元を掴みたくなる私。
この娘、何がなるほどなのよ!?
「はぁ、でもそうするとまたここへ通い詰めだね? リルちゃんたちもしばらくはここへ来るの?」
「そうですねぇ、まだ手持ちに余裕もあるし確かにほんのわずかですが大きく成ったのは実感しますから」
とは言え、マッサージを止めて受けなくなるとどんな影響が出るかが心配だ。
手持ちの余裕は「鉄板亭」に泊まるのならばまだまだ数年は泊まれるくらいの余裕はある。
とは言え流石にそんなに長々といるわけにもいかないしなぁ……
「そう言えばリルちゃんが作ったあの鶏の香味野菜スープってさ、あっさりとしているけどとても美味しかったよね?」
「そうですか? まあ病人食ではあるのですけどね」
メリーサさんにそう言われて私は答えながら飲み終わった牛乳瓶を木の箱に戻す。
するとメリーサさんは少し考えて私に話始める。
「ねえ、もしよかったらうちでエルフのお料理教えてもらって出してみない? 正直うちも経営困難ではあるのよ。ドドスは職人が多いからどのお店も味が濃いものが多いけど、やっぱり女性客はそこまで味の濃いものは好まないのよね」
「エルフのお料理ですか?」
メリーサさんに言われ私の頭の中にはエルフ豆の塩茹でやキノコだけのスープ、さなぎの油揚げとかがよぎる。
あんなモノ出したら余計にお店が傾いてしまうのでは?
「だって後からお母さんに聞いたけどもう少しこってりした鶏の香味野菜スープもあるんでしょ? それならここの人の口にも合いそうだし!」
ああ、本当のエルフのお料理で無くて私が生前覚えていた方のお料理ね……
「ええと、暇ですからそれは別に構いませんけど皆さんのお口に合うかどうか……」
「大丈夫だって! あんなに美味しかったんだもん!!」
にっこり顔でそう言うメリーサさん。
まあ、本当に此処で「育乳の女神様式マッサージ」を受ける以外滞在する理由もないし、暇だから良いかな?
「お姉ちゃん、お姉ちゃん! やっぱりここに残って悪の組織の生き残りの幹部を探すんだね!?」
私がメリーサさんに承諾をしようとしたらルラが私を引っ張ってコソコソと話して来る。
この娘、そっちの事しか頭にないのか?
「流石にアジトを壊滅させたのだからもうここにはいないんじゃない? それよりもうしばらくここいても良いかな?」
「そうなの? あたしはお姉ちゃんと一緒なら別に何処にいてもいいけどね」
なんかうれしい事言ってくれるルラ。
と、メリーサさんが心配そうに聞いてくる。
「駄目、かな?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。私もしばらくはここのマッサージ受けたいし、ルラも大丈夫らしいので!」
すぐにメリーサさんにそう答えるとメリーサさんは嬉しそうに言う。
「ありがとう! そうだお礼にもう一本フルーツ牛乳奢っちゃうね!」
それを聞いて大喜びするルラだったのだ。
* * * * *
「という訳で、リルちゃんたちがうちでエルフのお料理を出しててくれることとなりました!!」
にこやかにそう言うメリーサさんにおかみさんも亭主さんも喜んでいる。
「よし、ドドスで珍しいエルフ料理の店として大々的に宣伝しよう!」
「珍しいモノね、これでお客さんが増えるよ、あんた!」
なんかものすごく期待されている。
どうしよう、本当のエルフ料理じゃないと知られたら……
「あのぉ~私が作るのは完全なエルフ料理ではなくてですねぇ……」
保険でそう言おうとすると全く人の話を聞かずに三人で盛り上がり始めている。
「エルフ料理ってさっぱりしてるのよね!」
「ここドドスでは珍しいからな! 楽しみだ!!」
「しっかりとレシピも覚えなきゃだね、あんた!」
「あ、あのぉ~」
完全に私の声が聞こえていない。
「まあ、お姉ちゃんの作るご飯は全部美味しいから良いんじゃない?」
あっけらかんとそう言うルラを見て大きなため息をつく私だったのだ。
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