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元最強、まともな兵達に出会う

「この度は、自分達の監督不行き届きにより貴方方に多大なご迷惑をおかけしました。心より伏してお詫び申し上げます。真に申し訳ありませんでした」


 新たに現れた兵達は、街の入り口へと辿り着くと、まずはそう言って頭を下げてきた。


 確かにまともな兵達が来るのを望んではいたが……さすがに予想外の出来事に、ソーマ達は困惑交じりの顔を見合わせる。


「うーむ……さすがにこの状況は予想外なのであるが?」

「こんなの予想出来る方がおかしいわよ。っていうか、あの人達さっきの男達とちょっと違うように見えるんだけど?」

「……ん、鎧とかが豪華」

「……そうでありますね。おそらくあの方々は、騎士団に所属している方々だと思うのであります」

「ほぅ……騎士団であるか」


 言われ、改めて眺めてみれば、確かに先ほどの男達よりも遥かに出来そうであった。

 五人ほどしかいないものの、あの男達相手であれば倍の十人いたところで圧倒出来るに違いない。

 だがそれはつまり、下手をすればそんな者達が好き勝手に暴れていた可能性があるというわけで……まともそうな者達のようでよかった、といったところだろうか。


 ちなみに、街の入り口にはソーマ達の他にも街の住人と思しき人達も来ているが、その数は少ない。

 まともな兵達が来るよりも、あの男達のような者達が来る可能性の方が高いと判断した者達の方が多いということだろう。


 ただ、希望を抱いてこの場にやってきた者達にとっても今の態度はやはり予想外だったようで、皆その顔へと一様に驚きの表情を浮かべていた。


「さて……出来れば代表者の方と話したいのだが……」


 そう言ってその場を見渡したのは、先頭に立っていた壮年の男であった。

 雰囲気から考えてもその集団のリーダーであるようだ。


 とはいえ、ソーマも軽くその場を見渡してみるが、町長らしい姿はない。

 引き篭もっているのか……あるいは。


 こういう状況になった場合、真っ先に狙われやすいのは、やはり権力者だ。

 ソーマ達もここに来たばかりなので被害状況などは詳しく知らないが、既に纏め役などをこなせる人物が存在しないという可能性は、残念ながら十分に有り得る。


 その場合はどうするのだろうか、などと半ば他人事のように状況を眺めていると……ふと、目が合った。

 そして壮年の男はアイナやシーラのことまで確認すると、そのままこちらへと歩いてくる。


「ふむ……アイナ、実は知り合いだったりしないであるか?」

「んなわけないでしょ」

「……一番堂々としてるから代表者に間違われた?」

「まあ少なくとも、他にそれらしい方がいないのは事実ではありますな」


 確かに、この場に集まっている者達は、期待していながらもその顔にはどこか怯えがある。

 街の代表者であればこの状況で怯えないとは言わないが、少なくともそれを外には出さないだろう。

 そう考えれば、ソーマ達が最もそれらしいと言えばらしいのかもしれない。


 無論本当にそんな話を振られたところで困るだけだが……と、そんなことを考えると、壮年の男がすぐそこにまでやってきた。

 理由はともかく、こちらに用があるのは間違いないようだ。


 さてどんな用事なのやらと思っていると、壮年の男が口を開いた。


「失礼、聞きたい事があるのだが、少しよろしいか?」

「別に構わないであるが、我輩達もこの街には来たばかりであるため、代表者のことなどは分からんであるぞ?」

「ふむ、そうなのか。知っていてくれたら最も手っ取り早かったんだが……いやなに、問題はない。君達に聞きたいのは、ここで暴れていた者達のことだからな」

「ここで暴れてたやつら? あいつらの何が知りたいっていうのよ?」

「あいつらが今どこにいるのかを聞きたかったのだが……なるほど、やはり君達があいつらのことを止めてくれたのか」

「……やはり? ……暴れていたということと、もう暴れていないということを知ってた?」

「後半に関しては、知っていた、という言い方は正しくはないな。ここに来て、集まった者達の目を見て、分かったというのが正確なところだ。彼らの目には怯えはあったが、緊急性の高い恐怖は感じられなかった。そのことから、おそらくはもう誰かに止められたのだろう、と判断したに過ぎない」

「ほぅ……」


 どうやら中々の観察眼の持ち主のようだ。

 目を細めて眺めていると、向こうも同じような目をして眺めてくる。


「そして君達の目にだけは怯えや恐れがなく、何よりも確かな実力を感じた。私達が総がかりでも敵うかは分からないほどの、な。ならばあいつらが勝てる道理はあるまい」

「勝てるからといって、どうにかするとは限らないと思うであるが?」

「私はこれでも、元々騎士団の第二分隊の分隊長を務めていた。それなりに人を見る目はあるつもりだ」

「なるほどね……あたし達に声をかけてきたのも、それが理由ってわけ?」

「その通りだ。それで、私が君達のお眼鏡に適ったのであれば、是非ともあいつらのところに案内してもらいたいのだが? おそらく、適当な場所に捕らえておいてあるのだろう?」


 そこまで推測出来ていることを考えると、目が合う以前からおおよそのところは推測できていた、といったところか。


 こちらが様子を伺い探っていることも承知の上であることも含め、年齢相応に中々のやり手のようだ。


「……代表者の方との話は?」

「そちらはここで我が軍の兵達が暴れたお詫びをするために話をしたいというだけだからな。私達が用があるのは、元からその者達だけだ」

「ふむ……案内するのはいいであるが、会ってどうするのである?」

「そうだな……出来れば引き渡してもらいたいと思っている。生きているならば、だがな」

「……引き渡されてどうするつもりなのよ?」


 アイナが警戒しながらもそう尋ねたのは、ないとは思いつつも、庇うのではないだろうかと思ったからだろう。


 だが壮年の男は、心配いらぬとばかりに首を横に振った。


「無論、処罰する。内容はあいつらのやらかしたこと次第ではあるが……この様子では相当のことをやったのだろう。おそらくは、極刑となるはずだ。心配ならば、私がその場で裁いても構わない。私達はそのためにここに来たのだからな」

「……そのため? ……処罰のため?」

「ああ。好きなことをしていいというお触れがあったのは承知だろう? ならばこそ、そういう者がいたところで文句はないはずだ」


 真っ直ぐに向けられた視線に、少なくともソーマは嘘を感じることはなかった。

 アイナ達へと視線を向けると、どうやら彼女達も同感のようである。

 ならば引き渡すことに問題はあるまい。


 元々情報を引き出した後はどうしたものか迷っていたのだ。

 処罰してくれるというのならば、それに越したことはない。


「ふむ……ところで、あれらが暴れているということはどうやって知ったのである?」

「そういえば、そっちは聞いてなかったわね」

「ああ……そういえば、言っていなかったか。なに、狼藉を働いている者達がいるということを、ここから逃げ出した者から聞いただけのことだ」

「ここから逃げ出して、且つ無事だった者がいたのであるか……」

「話を聞けたのは偶然ではあるがな。それに……来た意味があったと言えるかは、何とも言えないところだ。君達のおかげで、この街の平穏は既に取り戻されていたようだからな」

「……そんなことは、ないと思うであります。貴方達が来た意味は、きっとあるであります」

「……それは、何故でしょう?」

「この街の人達は、本来自分達のことを守ってくれるはずの兵達が暴れるのを見ているであります。ですが、そんな者達ばかりではないのだと、自分達のことを守ってくれる兵達も確かにいるのだと、貴方達が来てくれたおかげで街の人達はそう思う事が出来るようになったと思うのであります。それは、間違いなく意味のあることであります」

「……そうですか。ありがとうございます」

「……ふむ」


 セシルの言ったことは、多分に楽観的なものも含まれてはいる。

 実際にはそう上手くはいかないだろう。


 しかし、来た意味があるというのは、ソーマも同感であった。

 そう上手くはいかずとも、多少の希望を与えることぐらいは出来るはずだからだ。


「ま、とりあえず問題なさそうであるし、案内するのである」

「感謝する」

「もっとも、案内するとは言っても、適当なところに縛って放り投げてあるだけであるから、適当に探せばすぐに見つかったでしょうけどね」

「……ん、それも、結構すぐ近く」

「案内してくれるということは、ある程度信頼してくれた、ということだからな。ならばその事実こそが重要なのだ」

「別に我輩達から信頼を得たところでそれほど意味があるとは思えんであるがな。ああ、ちなみに、折角なので一つ聞きたいのであるが、第二王子が勝ったことのことであるが、本当なのであるか?」

「……正直なところ、分からん。私達は元々第一王子派だったからな。だがお触れは事実であり、第一王子とは連絡が取れない状況だ。敗れてしまったというのは、おそらく本当なのだろう。……あの方があんなお触れを出すとは、未だに信じられないがな」

「そうであるか……」


 やはり、明らかに怪しくはあるようだ。

 まあそれでも結局は、王都にでも行ってみなければ、何があったのかなどは分からないのだろう。


 さて、本当に何があったのやらと思いつつも、一先ず壮年の男達を案内するために、先ほど男達を転がしておいた場所へと向かうのであった。

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