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第7話 世界会議と聖女

魔物対策のため世界会議が開かれた。

このミッドランド王国に周辺各国の要人が集結したが、これは国力はもちろん天子召喚の成功が大きく、この世界を牽引するのがミッドランド王国である事を強く示していた。

各国の思惑はそれぞれ蠢いていたが、異世界人”天子”との謁見を盾にしたミッドランド王国に否を唱える国は無かった。

そう、世界会議は”天子の名”のもとにつつが無く終了したのである。


さて、俺はジークフリード殿下に手を引かれ、大ホールの扉の前に居る。

世界会議そのものには出席しなかったのだが、今から始まる晩餐会には主催としての出席を余儀なくされてしまったのだ。

ミッドランド王国の手練は、相当なものなのだろう。

うん、分かり易い。俺自身が彼の手駒の一つと言うことなのだろう。

あ~、だからと言って、こんなに着飾らなくてはならないのだろうか?

俺、男なんだけどな。この女神の衣装はどうだろうか?

背中とかめっちゃ開いているし。

これまでの聖女の衣装でも小っ恥ずかしいと言うのに・・・。

そして、今晩のエスコート役はジークフリード殿下だ。

世界会議でも事務方顔負けの奮闘ぶりだったそうで、当然と言えば当然の帰結らしい。


最初、俺を見つけたジーク殿下は、しばらく惚けた後、「シン様、本日は一段とお美しい。」などとひとしきりお世辞を言って来たので、ジークフリード様こそ素敵ですよと礼には礼で返しておいた。

すると、気を良くしたのかジーク殿下は、すっと腰に手を回して「私の事は”ジーク”と。」

と綺麗な瞳で見詰められた。

「近いです。いや、近くなって来てますよ。」と言う間もなく迫ってくるので。

このまま、キ、キスされるのでは?と背筋が”ぞぞぞっ”としてしまった。

俺は、仕方なく「はい」と答えながら顔を背けた。

いくらイケメンでも男にキスされるなんて・・・ん?そんなに嫌ではないかも。


”天子様の入場です! 本日の栄誉あるエスコート役はジークフリード第一王子です”

とアナウンスが流れ、タイミングよく入場の時間となった。(た、助かった)

豪奢な扉が開けられると大きな歓声に湧いた。(芸能人か!)

ジークフリード殿下にエスコートされ、静々と進む。

すると、先ほどの歓声は一気に消失し、逆に息を飲むかの様な静けさとなった。

(それほど?)

自覚は無かったが、100年振りの異世界人は珍しいのだろう。

しかし、珍獣扱いは御免だ。役目通り、ちょっとは愛嬌を振りまいてやろう。

各国の王族、要人、それにこのミッドランド国の王侯貴族達へ今日一番の愛想笑いを振りまいて俺は進む。

素直に好意を返してくれる者もいるし、中には悪意が感じられる者もある。

ちなみに、これは感受性の問題で、天子とかいうものの特別の能力じゃない。人なら誰でも感じるセンサーだ。

気を張り詰めていると、ふと、今にも消え入りそうな命の灯が感じられた。

”どこだ!”

俺と同種のエネルギーを持つ者。

嬉しさ半分、焦り半分。とにかく急いで探さなければいけない。

ジークには悪いが一人で行かせてもらう。

俺がなりふり構わずが進んで行くと、人だかりは自然に割れて行き、その先には青ざめた一人の少女が立っていた。

ふらふらと今にも倒れそうな少女を思わず抱きかかえる。


「大丈夫ですか?」

すると、弱々しい瞳に少しだけ光を灯し、「天子様、やっとお会いできました。」と涙を零す。

中学生くらいだろうか。やつれている彼女はそれでも俺を見てニコリと微笑んだ。

医者では無い俺は、当然彼女の病状が分かる訳も無く・・・分かるわけも・・・分かったわ。

これは、魔力切れだ。

しかも重度の魔力切れで、命の危険すら感じる。

そこに、隣のでっぷりした王族らしいおっさんが口を挟む。

「これ、聖女さま、いくら聖女さまでも天子様に失礼です。離れなさい!」

なんだこいつ。俺から近寄ったのに・・・。

「ごめんなさい天子様。私、大丈夫です。」

と健気に立ち上がろうとする。

「いやいや、無理しないで。貴女はかなり疲弊していますよ。無理せずに何処かで休んだ方が・・・。」

いや、彼女は俺に会うために無理をしてここに来ているのか?

うーん。それも聖女さまと言われている様だし。何か俺(天子)と因果関係があるのかもしれない。


そうだ、この前の”祈り”のように手からエネルギーを放出できないだろうか・・・。

「ちょっと、失礼しますね。嫌なら言って下さい。」

俺は、彼女を片手で支えつつ、もう片方の手で彼女の手を握りしめた。

そして、その手を引き寄せ祈りの要領で念じた。


ピンポーン:レベルが上がりました。

どこかでまたあの機械音が鳴った。今回は効果音付きだ。

そして、時間とともに鳴り続いいた。

ピンポーン:レベルが上がりました。

ピンポーン:レベルが上がりました。

ピンポーン:レベルが上がりました。

ピンポーン:レベルが上がりました。

ピンポーン:レベルが上がりました。

聖女:レベル13

すると、見る見る聖女さまの顔色が良くなり、頬は淡いピンク色に、瞳からは力が蘇って来た。

もう大丈夫だ。彼女の魔力は満タンになった様だ。

上手く行って良かった。ほっと胸を撫でおろす。

すると、聖女様はすっと立ち上がり、ここ一番の笑顔を向けられた。

「天子様。魔力を分けていただきありがとうございます。」

”ふふっ”と思わずに顔がにやけてしまう。

何となく彼女も頬を染めて照れている様に見えるが気のせいかもしれない。

さあ、聖女様も回復したことだし、これでお暇かなと思っていたところ、あれ、何だか彼女の目線が高くなっている?

おかしい、なぜか彼女が成長した様に見える。

外見も高校生・大学生くらい?

もうこれは素敵なレディと言っても良い年頃だ。先ほどまでの中学生ぽさはどこへ言ったのか?

驚いていると、となりのおっさんもえらい感心している。

「こ、これは、聖女様が以前の美しい姿に戻った。天子様の奇跡の力か。」

すると、会場から一気に歓声が湧いた。

意図したわけではないが、結構なパフォーマンスになってしまった。

ま、俺は魔法は使えないけど、魔力だけはあるからね。


「それでは、ジーク殿下を待たしているのでっ」と、その場を離れようとしたが・・・。

ん? 手 ? 俺の手に絡み着く女性の手。

「あの、お供させていただきます。天子様」

はにかみながら言う聖女さまに、断れる者などいない。

これは許される事なのだろうか?

俺は、少し戸惑いながらも手を振りほどけず、ジーク殿下の待つ席に向かった。


▲▲▲

待ってくれていたジーク殿下に聖女さまは淑女の礼をとった。

「ウエストニアのエリアスと申します。」


「あゝ、ご活躍は聞いております。」

殿下は、聖女様のことを知っていたようだが、なぜか素っ気ない。


「私は、クローディアですわ!」

となぜか刺々しい王女さまが割り込んできた。

どうしたのか? クローディア様にしてはらしくない行動だ。


「あらこの方怖い。」

と俺の後に隠れる仕草をするエリアス。

二人で睨み合い、火花が散り出した。

美女どうしで何を張り合っているのだろうか?

ジーク殿下を見ると、これまた何とも言えないどんよりした表情だった。

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