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第5話 騎士団長 

ダイナ・ゴールドウィン

それが、この国の騎士団長の名前だ。 

俺より一回りも大きく、頭髪も真っ赤で逆毛だっている。

精悍な顔立ちで威圧感が凄い。

俺の中の”男”が燻っている。

”男”として負けたくないと思う一方、力では絶対に勝てないなとも思う。

対抗心と”憧れ”とも言うのかもしれない。

そいつが、何故、今、俺の目の前にいるかって?

しかも、不機嫌そうに。 


「市井を見たいんだって?」 

「ええ。」 

愛想笑い付きで答えたが・・・それは全く通用しないようだ。。


「無理だな。」

と吐き捨てる様に返された。

俺を守る役目の面々がいる中、この人には余裕がある。

自分が最強だとでも言いたそうだ。

護衛のマクシミリアとミカエルは緊張した面持ちで黙って立っている。


「理由をお聞きしても、、、。」

「あんた、自分の容姿に自覚はないのか?」

繊細さのカケラも無いような男が、それでも照れ臭そうに言った。


「容姿?・・・」

確かに若返り、美人になったとは思うが、この王宮で見かける人達は概ね見目麗しい人ばかりだ。

強いて言えば、この銀髪意外特に目立つことも無いと思うがどうなのだろう。

「容姿に問題があるなら、フードを被りますがどうですか?」


「ふうん、まぁ良い。それで、何しに行くんだ?お忍びで見られるものなど限られるぞ。」

”オレは忙しいんだ、お偉いさまの娯楽には付き合い切れない”とでも思っているのだろうね。


「それで良いんです。私は・・・。」

と、言い淀んでしまった。

(どうしても見ておきたい。この力は何のために与えられたのか・・・。)


「・・・貴方が駄目なら、他の誰かでもよろしいかと。」

意に反して口に出たのは全く違う言葉だった。 

おそらく、俺はこの男が苦手だ。


「そう言う訳にもいかないな。」

ちょっと不貞腐れた様に返すダイナ。

それはそっちの都合だろうと思ったが言わなかった。

この人の前では、妙に胸がざわつく。

そもそも、勝手に召喚しておいて天子だなんだと祭り上げ、この国を救えと言う理不尽極まりない話なのだ。

悪気の無い人達と接していると本質を見失う。

だから、俺は町を、この国の人達を見ておきたい。

俺には覚悟が必要だ。

煽てられて有頂天になっている場合ではない。

俺に残された唯一のもの・・・、この命をかけるのだから。

俺は、無意識にぐっと手を握っていた。


その俺の仕草をジロリト見て、何を思ったのか意外な言葉が発せられた。

「ふむ。分かったよ。連れて行ってやるよ。」

「え!」

俺は、驚いてダイナ団長の顔を凝視する。

「そんな顔されたらら誰も断れねーよ。」

(そ、そんな顔していたのかな?)

思わず両頬を押さえ、ラインハルトを見る。


「このダイナ団長は、城下町出身で腕も確かです。彼以上の適任者はいないでしょう。」ラインハルトは満足げに答えた。


「まぁ、そう言う事だ。俺に任せておけ。」

「よ、よろしくお願いします、ダイナ団長。」 

なんだか会話が噛み合っていない気がするが、ラインハルトがわざと外したのだろう。

「俺のことは、ダイナで良い。」

「はい。ありがとうございます。では、私のこともシンとお呼びください。」

「分かったシン殿。」

とダイナは健やかに笑った。 

意外と良い人なのかもしれない。


〜〜〜〜〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


会見後、ダイナ団長を見送るマクシミリア。


ダイナはご機嫌だった。

「あれは、只者じゃねーな。」

マクシミリアは苛立ちを隠すこともなく言い返す。

「当たり前でしょう。天子さまですよ。

 それより、先ほどの態度は如何なものか。

 天子さまに対して失礼ではないですか。」

「ふふっ、そうかもな。失礼だった。

 あの感じは俺たちと同じだ。命をかけている男の目だ。

 軽く見るのは失礼だったな。」

 ダイナはマクシミリアに目配せしながら続ける。

「只、まだ迷いがある。それがかえって儚げに見せるのだがな。

 だかんらな、あんなもん迂闊に町中には出せないぞ。」

「そうです。だから万全を期すのです。」

「それで? 事の後はどうなるんだ? 

 シン殿が、無事に天子さまの役目を終えれば、だ。」

「遠からずジークフリード殿下と結婚なされる。

 お役目はその後も続く、この国にとって欠くべからず人となるでしょう。」

「ふん、素直に王妃に納まる人かよ。女になるかも疑わしいぜ。」


確かに、そんな方では無い。

しかし、収まってもらわねばこの国が立ち行かぬ。

このまま女性化しなければ、あるいは・・・・

いや、これ以上の思案は無用だ。自分ごときが考えることではない。

マクシミリアは、思考を無理やりシャットダウンさせた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~数日後 城下町~


騎士団長のダイナ、専属護衛騎士のマクシミリア、侍女のアンネローゼと連れだってお忍びで来ている。

俺も含め、皆それなりに平民の服装をしているが、やはりと言うか何というか目立つ。目立っている。

特に、戦闘系の二人は、ガタイが良いだけではなく美丈夫なので、行き交う女性達が振り返るほどだ。

これって、アンネローゼと二人できた方が良かったんじゃないだろうか?


眼前に広がるのは中世の街並み、石畳の道路、行き交う人々とたまに通る馬車。

このどこかで見た感じ・・・なんだろうか。

都市計画とまでは言わないが何者かに設計された感じ。

そう、そうだ、RPGの中の街並みに似ているのだ。

しかし、人々は生き生きと活動し、その息使いは一つとして同じものはなく、計算されたものでもない。

男も女も、子供も大人も躍動感に溢れており、見捨てて良い命など一つも無い。


「楽しそうだな。」

とダイナ団長自身も楽しそうに言う。

「あゝ、楽しいよ! ありがとう、連れてきてくれて。」

「っ。」

ん?照れているのか。初対面の時からは考えられないくらい柔らかい雰囲気だな。

これなら俺も付き合えるかもしれない。


そこへ、アンネローズが二人の間に割って入って来る。

「シン様!お疲れでは?少し休憩しましょう!」

としたり顔。

「ふふっ。そうだね。」

アンネローゼはいつも気が利く。今日の服装も良く似合っていて可愛い。


一行は、下町中心部の噴水公園へ向かい、噴水前のベンチに陣取った。

ダイナ団長は、当然の様に俺の真横に座る。


「はい、どうぞ!」

とアンネローゼが揚げパンと飲み物を差し出してくれる。

揚げパンは、砂糖をまぶしてあるスティック状のもので、外はカリッと中はふわっとしたドーナツ感のものだ。

「わぁ、美味しそう。ありがとうねアンナ。」

「これ美味いんだよな!」とダイナ団長も同調する。

三人は和やかに揚げパンを頬張った。

「うん、美味しいね!」

「美味いな!」

「へへっ、良かったゎ。」

しかし、一人憮然として辺りを警戒している男がいる。そう、マクシミリアだ。

少し心配になって声を掛ける。

「マクシミリア? 食べないの?」


「自分は結構です。任務中ですので。」

なぜか頑ななマクシミリア。

ふふっ、可愛い。

こういう子には意地悪したくなってしまう。

俺はまだ護るに値する人間かどうかも分からないのにね。

よし、それに値する人になってやろうじゃないかと密かに思ったりする。


俺は、「はい!」と言いながら、揚げパンを千切ってマクシミリアの口に突っ込んだ。

驚くマクシミリアを尻目に、俺はローブを脱ぎ捨てベンチに立ち上がる。

驚きの目で俺を見るダイナ団長とアンネローズ。


俺は目をつむり全身の力を集中させる。

そして両手をかかげ”祈る”。

「この街に光を!」

すると、両掌から淡い光が放たれ、街中に降り注ぐ。


待ち行く人々が立ち止まり、降り注ぐ光を目で追っていく。


「これは何だ!光?」

「光だ。希望の光だ。」

「暖かい、懐かしい。」


ざわざわと感嘆の言葉が飛び交う。

やがて、シンを見つけた人々はぞろぞろと近寄って来る。


「天子さま?」

「天子さまがいるぞ!」

「あそこだ! 天子さまが祈って下さった。」


いち早く動いたのはダイナだった。

「ちっ!」

ダイナはシンを抱え、一目散に走り出した。

「もう少しで食べ終わったのによ。」


「御免ね~。」と悪びれず答えた。

だって、後悔はしていないもの。


へへ、もう逃げも隠れもしない。俺は、自分のやるべきことをやるよ。


~~~~~~~~~~


裏町スラム街

一人の少年が道端にうずくまっていた。

「・・・ひ、光、光だ。」

その少年は、零れて来た淡い光を掌で掬い取り、ただ見つめていた。

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