第4話 王女登場
護衛騎士さん達と仲良くなっていくにつれ、俺の行動はより自由になっていった。
俺は、基本人見知りなので、遠慮と言うか、気を使い過ぎていたのかもしれないね。
護衛対象が自由に動き回るのは、護衛さんにとって迷惑なんじゃないかと思ってしまって。
そんな時、唐突に王女様からお茶会の誘いがあって、今、まさに王女の宮へ行くところだ。
ラインハルトが言うには、ジーク殿下の同母妹なので心配は要らないそうだ。
王女様か、ジーク殿下の妹なら相当綺麗なんだろうな?
うふふ。なんか期待しちゃう。
指定されたテラスへ着くと、待っていたとばかりにスレンダーな美人が小走りで近寄って来る。
「初めまして天子様!
わたくしがクローディアですわ!
さあさあ、あちらの方へお座りになって!」
凄い元気な女性だ。
現代日本人の俺には好ましい人だけれど、この国の王族としては少し残念な感じなのではないだろうか?。
「わたくし、天子様にお会いできるのを楽しみにしてましたの。」
とお日様の様に微笑む。
健全な男子ならこの笑顔で一コロだろう。
何せ兄譲りのプラチナブロンドに、透き通るような肌、そして均整の取れた肢体。ひょっとすると俺より背が高いかも。いや、背だけではなく、しっかりとした体形・・・かな?
さて、席について、和やかに・・・と言うより賑やかに話が続く。
そして、美味しそうにお菓子を食べるクローディア。
なんて感じの良い人なんだろう。
「それで、お兄様とはどうなのですか? うふふぅ。」
ん? 前言撤回・・・ズバッと切り込んで来るのね。
「特に何もありませんが?
そもそも男同士ですから・・・ゴニョゴニョ。
私は、女性になる気もありませんし。」
すると、明らかにクローディアは上気し、
「そうよね。お兄様には後継ぎが必要だものね。
だったら、私はどう?
私達、良い感じだと思うの・・・。」
クローディアは俺の手を握りニコっと笑った。
俺は、現状を理解できずにいた。
だって、こんな事日本じゃあり得ないだろ?
お姫様が、どこの馬の骨とも知れない者に・・・初対面で告白するかな。
と考えている間にもクローディアは捲し立てている。
「わたくし、政略結婚は嫌なの。
跡目争いを避ける為女性になったのだけれど、会ったことも無いどこかの国の王子に嫁がされるのはまっぴら御免よ。」
「え? 今なんと?」
「え! ですから政略結婚は嫌?」
「その次です。」
「どこかの王子に?」
「行き過ぎましたね。」
「あゝ、跡目争いを…」
「うんうん。続けて。」
「避けるため…」
「続けて。」
「女性になった?」
「それです!」
俺は思わず親指を立てた。 ”グッ”と。
やれやれやっと伝わった。
「・・・・割と良くあることなのよ。」
「だ、男性だったのですか!」
「ええ、さすがに王子3人はね。争いの元になりますから、それに玉座に座りたいとも思いませんし。」
クローディアは、俺が何に引っかかっているのか分からず不思議そうに首を傾げて言葉を続けた。
「それに、お兄様は次期王に相応しい方ですのよ!妹のわたくしが言うのですから間違いありません。
ただね・・・、ラインハルトとの件は不憫でした。
ですから、お兄様には意地でも王位に就いてもらわないと!」
(色々と突っ込みたいのだけれど、どうしようか・・・。)
「取り敢えず、女性化の話をお聞かせ下さいませんか?」
「お兄様とラインハルトはとても仲が良くて、婚約までしていたのよ。
ただね、その頃からミハエル兄様が野心を持つようになって、
ジークお兄様には伴侶よりも信頼できる側近が必要になってしまったの。」
(えっと、俺のリクエストは無視ですかね。)
「それで、ラインハルトは男性になり、側近の道を選んだの。
今でも彼は美人なんだけれど、昔はとっても美少女だったのよ!うふふっ。」
「何となく分かります。」
うんうんと俺は頷いていた。
それでも、”はっ”と気付いて置いてけぼりの質問を投げかけた。
「ところで、どうやって男性になったり女性になるのでしょうか?
回数は無制限なのですか?」
「あゝ、そう言えばそういう質問でしたね。
うーんとね。必要が生じれば自然と変化していくものなんです。自分の自然な思いと言いますか。
中には特殊な薬をきっかけにすることもありますけど。
例えば、私やラインハルトの場合は、薬ですけど、この方法は体の負担が大きいので2度はありませんね。普通は、一生に一度あるか無いかですわ。」
「なるほど。」
「ですから、天子様が私を好いていただければ、自然と男性のままでいられると思いますの。」
とクローディアには珍しくねじねじと照れながら答えた。
こういうところは素直で可愛らしいと思う。
しかし、ここで流されてはいけない。
「あ、あの、非常にありがたいお話ですが、わたしはまだ何者でもありません。
王女様に相応しい者とは思えません。」
「あら、天子様は天子様というだけで誰も文句は言いませんゎ。むしろ、王族にとっても光栄に思うものなのですよ。」
「・・・・。」
「天子様の元の世界では、どうなんですの?」
「そうですね。性転換はほぼありませんね。医学的に手術ならあり得ますが、自然に変化することはありませんね。」
「もっと教えてください。世情なども詳しく!」
クローディアの食い付きは凄く、身を乗り出して来ていた。
(お姫様、めっちゃわくわくしてるよね。)
「そうですね。まだまだ社会的には男尊女卑で、仕事は男性が、家庭や育児は女性と言う感じですね。 後は、表向きの身分差はありません。」
「え!身分差が無い!そんな世界が!」
ジーク登場。
「おやおや、こんなところに美しい花が二輪、お邪魔してもよろしいでしょうか?」
ニコリと微笑みながらスマートに現れる。
「お兄様!女性同士のお茶会に、無粋ですわ!」
「いや、まだ私は男なんですけど・・・。」
「そうですわ! 天子様は男性のままです。
そして、わたくしを娶っていただきますの!」
うう、クローディア様、逞し過ぎて「俺を娶りたい」と聞こえます。
クローディア王女の姿がジーク殿下と重なって、従前の男性の姿を思い起こさせる。
二人は良く似ているので、錯覚を起こしているのだろうか?
単なる俺の想像の産物だよね?
「それは、例えディアでも聞き捨てならないね。」
と言葉とは逆にジークは楽しそうに話す。
(この二人は本当に仲が良いのだな。)
しばらく、3人の楽しい歓談は続いた。




