第3話 護衛騎士
■■■数日後
~自室~
うん、取り敢えずこの聖女っぽい服装はやめて貰おう。
俺は鏡の前で一回りしてみる。
この服装ではますます女性化してしまう。俺を見た人達も女性だと思うだろう。
そういう思念波の影響も受けるのかもしれないしね。
でも本当に綺麗だよな。自分とは思えない。
”ふにゃ”と鏡に向かって変顔してみた。
うん、やっぱり俺の顔でした。
自分の思う動作と鏡の中の動作は一致している。
基礎は俺の顔なんだけどなぁ~。慣れないな~。
そうこうしていると、侍女のアンネローゼに苦笑いされながら刻限を告げられる。
休み時間は終わり、次の講義の時間だ。
俺は、基本的に王太子の宮から出ることは許されていない。
まぁ、結構な広さなので充分なんだけれど・・・。
今は、この世界とこの国の事を学んでいて、知らない知識を得られるのは単純に楽しいと思っている。
講義部屋までは長い廊下を歩いて行く。
偶にすれ違う人達は、上級貴族か近衛騎士と呼ばれる人達くらいだ。
皆様、俺を見ては伏し目がちに去って行く。
元々社交的な性格でもないので、気にしない様にしているが、何とも言えないむず痒い思いだ。
毎日は、あっと言う間に過ぎて行く。
基本的には、侍従と侍女、護衛騎士が常に付いてくれており、何も不自由なことは無い。
それに、彼等を束ねるのがラインハルトである。
うん、完璧。
ラインハルトは、侯爵家の後継、殿下の側近で将来の宰相候補との事。
そんな偉い人が、講義の大半を受け持ってくれ、3度の食事にも付いてくれている。
そして、今からもラインハルトの講義が始まるのだが、距離が近いのだ・・・謎過ぎる。
いつもの書斎らしき講義部屋に入ると、ラインハルトは笑顔で迎え入れてくれた。
手を取り肩を抱き大切な壊れものを運ぶように俺を席に座らせてくれる。
”ううっ、そこまでしてくれなくても自分で座れます。”なんて言ってみたところで聞いてはくれない。
俺のまだ狭い見聞だが、この世界にそんな文化は無いと思う。
侍女のアンネローゼに聞いても苦笑いするだけで答えてくれない。
このままでは、女性化してしまうのではないだろうか。
30年近く生きて来て、今さら女性になる気は無いのだけれど・・・。
■■講義後
本日の講義が終わり、束の間の自由時間。
少し疲れたな。
侍従のオスカーに、庭園へ行きたいと頼んでみた。
待つこと10分程・・・わらわらと騎士達が現れた。
ま、まさか、庭に出るだけでこれだけの護衛?
侍従のオスカーもいるのに3人も護衛騎士が要るかな?
思わず赤面しながら、護衛の皆様に自分の我儘を詫びた。
さて、連れ出して貰った外は敷地内とは言え解放感があり気持ちが良い。
草花なんて興味無かったけれど、こうして手入れされた庭園を見ると気分爽快だ。
花壇に囲まれた噴水の前で休息すると、俺は大きく背伸びした。
「綺麗な所だね。」
護衛の人は誰も答えてくれない。
”はぁ~”とため息を付いて、顔なじみのマクシミリアをジト目で見る。
すると、ようやく「庭師に伝えておきます。」と答えてくれた。
しかし、隣でオスカーが咳払いして注意を促すと、改まって直立不動となる護衛の皆さま。
「大丈夫、心配しないで。俺は自分のやれることはやるつもりだよ。だから、堅苦しいのは止めにしない?
それにはみんなのことをもっと知りたいな。 駄目かな?」
と可愛く首を傾げて尋ねてみた。
すると、オスカーもマクシミリアも困った顔している。
しばらくの沈黙の後、オスカーが口を開く、
「駄目ではありません。 が、天子様には少しご自分の影響力を自覚して頂けると助かります。」
ん?まさかの苦言?
「ごめんなさい。どういう事か分からないよ。教えてくれないかな?」
「その、面と向かっては言い辛いのですが・・・。
我々は、天子様にお声をかけて頂くだけで、天にも舞い上がってしまう気持ちなのです。
もちろん、耐力のある者を選んで配置していますが、中には職務を忘れ、あるいは良からぬ思いを抱く者が現れるかもしれません。 ですから・・・、」
オスカーの顔は真っ赤だ。
確かに恥ずかしいよね。聞いてるこっちも恥ずかしいです。
だから、俺はオスカーの言葉が終わらぬうちに話始めた。
「いやいやいやいや、そんな大袈裟な!」
護衛の騎士たちが目を丸くして首を横に振る。
「本当に?」
護衛の騎士たちが”うんうんと”首を縦に振る。
ちょっと悪戯心が芽生えた俺は、小悪魔的に ”ふ~”と息を皆さんに吹きかけた、そう思いっきり色っぽく!
すると、三人さんは ”ぽー”と顔を赤らめ湯気が出ている。
さらに、最も若いだろう者が”ふらふらっ”としている。
(うそ!)
慌てて支えようと立ち上がるが、屈強な男を俺が支えられる訳も無く・・・。
はい、手を引っ張っただけでした。
結局、他の二人が若者を支えて事なきを得ました。
オスカーは手で顔を覆い、
「天子様、ご冗談はお止めになって下さい!」
「はい。すみません。」
と俺は反省をしつつも
「さあさあ、皆のことを教えて! オスカーもさ!」
と自己紹介を促した。
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オスカーは、16歳、伯爵家の次男で後継ぎの兄がいるため、宮廷に出仕することになったという。
そこで、ラインハルトに見込まれ天子付きになった。
将来は文官となるつもりであったが、俺に会って迷っているとの事だ。
何と何を迷っているのか聞いたが、頬を赤らめ教えてはくれなかった。
ふふっ、美形の高校生の感じだね。
いつも傍に居てくれてありがとう。
マキシミリアは、23歳、本当は近衛騎士で、ジークフリード殿下の命で天子専属となった。
近衛騎士の中でもエリート中のエリートみたい。
男爵家の長男だが、家を継ぐつもりは無いのだと言う。優秀な弟がおり、争いを避ける為にも騎士となったところ、思いがけずハマったと苦笑いしていた。
見た目通り優しい人だと思った。
若者は、ミカエルと言う名前で、この中では唯一平民出身の21歳だ。
10代かと思っていたが童顔で若く見られるのが悩みの種だそうだ。
可愛い顔立ちで女性化してもおかしくない。が、本人は否定的。
実家は商家、そこそこ裕福であり礼儀も嗜む。
剣技に非常に優れ、性格も明るく大抜擢された。
将来は、騎士団でトップを目指し、平民の星となりたいとのこと。
うん、素晴らしい! 誰からも好かれる人だと思う。
もちろん、俺も好き!
最後は、オズワルド、子爵家三男23歳、所謂ごつい骨太の騎士だ。
家を継ぐことはほぼ無いため、騎士となった。
寡黙であるが、繊細であることは皆周知の事実であるらしい。
元々女性であったが、外見にコンプレックスがあり男性化を選んだとのこと。
現在の見た目からは想像もできないが・・・、なんとなく俺には分かるような気もする。
天子と言う呼ばれ方にはまだまだ抵抗があるが、今日は楽しい日となった。




