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第1話 召喚

週1の更新を目指します。

魔法の国、ミッドランド王国

格調高い神殿で、今まさに召喚の儀式が執り行われている。

儀式を執り行う大神官と神官、魔術士達が魔方陣に魔力を注ぐ。

すると、眩ゆい光の中から微粒子が集まり、人の姿を形作っていく。

やがて光は収束し1人の青年となった。


「おおっ、成功だ!」

と感嘆を含んだ声がする。

また別のところからは

「なんと美しい!」

との声が漏れ聞こえる。


全裸で具象化した青年は、端正な顔立ちに長い銀の髪、ほっそりとした肢体が艶かしい。

まぶたを閉じており、意識は無いようだ。

”ふっ”と魔力が抜け、重力により倒れる寸前、王子の1人が彼を受け止めた。

間に合った事に安堵したのか、その王子は優しい笑みを浮かべた。

王子が彼の頬を優しく撫でる。・・・自分のものだと言わんばかりに。


「兄上、独り占めはいけませんよ。」

少し離れたところから、王子の行為を咎める言葉が飛ぶ。

”ふん”

第一王子、王位継承権第一位であるジークフリードは、鼻で笑うと第二王子の言葉を全く意に解することも無く青年を抱きかかえた。

居並ぶ王侯貴族、神官、魔術士達を尻目に、ジークフリードは宣言した。

「降臨された天子さまは、古の理により我が婚約者となる。」

ジークフリードの声が大きかったためか、青年がビクッと反応すると、慌てて従者がやって来て少年をシーツで包んだ。

そして、それが青年の目を覚まさせることになった。

ゆっくりと開かれたダークブラウンの瞳は、どこか朧げでそれでいて美しく、その場の者達全員を魅了するには充分であった。

「 えっ! 」

気が付いた青年が放った第一声は、いささかその場にそぐわない素っ頓狂な声であった。


■■■


気がつくと俺の目前には、金髪イケメン青年の顔があった。

「 えっ! 」

と思わず変な声を出してしまった。

状況把握が全くできない。

声もおかしいし、頭も割れるように痛い。極度の乗り物酔いの感じだ。

体が宙に浮いている?

いや、その青年に抱き抱えられているのだ。

落ちるかもしれない・・・、思わずしがみ付いてしまった。

すると、イケメン青年が優しく微笑みかけてくれた。何だか少し救われる。


キョロキョロと周りを見渡すと、見たことも無い聖堂?の中だろうか・・・。

知らない人達、、、と言うか、そう言うレベルでは無い。見慣れない異国の人ばかりだ。

出勤途中であった俺は、事故にでも遭ったのだろうか・・・エスカレーターに乗った後、記憶は曖昧だ。

身体も酷く怠く、手足の感覚も鈍い、徐々に息苦しくなってきた。

”ああっ、”

自然と苦痛の声が漏れ出てしまった。 


「助 け、て、、、、、、。」


金髪青年が何か言っている。

が、遠くの方で響いているみたいで聞き取れない。

だんだん意識も保っていられ、な…い。


■■■時は遡る


俺は、黒崎眞、29歳、しがないサラリーマンだ。

自分で言うのも何だが、そこそこのイケメンだと思う。

ただし、生涯を誓い合うような女性にはまだ出会っていない。

今朝もルーティン通りの通勤途中だった。

・・・・・。

やや混雑した駅。

俺は、エスカレーターに乗り、プラットホームへ向かう。

”ん?”

前方にキラキラと光った輪の様なものがある。

光の輪? エスカレーターの出口に? 何で?

だが、誰も気にする様子は無い。この光の輪は潜れるみたい。

次々に皆通り過ぎて行く。

特に何か起こっている感じも無い。

新しいサービスか?

光のシャワーで消毒とか?

俺の前を進む人も、泰然と通り過ぎた。

・・・・何の変哲もない。

俺の番だ、後が滞っており、もう進むしか無い。

嫌な予感がしながらも、俺は光の輪に吸い込まれた。


ジジ、ジジジ、ジジ

(そんな馬鹿な!)

全身が焼きつき、溶かされる感覚がする。

(おかしい! おかしい! 絶対におかしい!)


”プツン”と通信が切れたような感覚の中、俺は意識を失った。 


■■■sideジーク


ジークフリードは、青年からの救いを求める言葉に胸を押し潰されそうになっていた。

異世界から無理矢理召喚されたのだ。

心身ともにかなりの負担があったと想像がつく。

体調は勿論心配だが、それにも増して心配なのはこの俗物達だ。

ジークフリードは、周りの王侯貴族達を睨みつけた。

一刻も早くこの俗物達から遠ざけたい。

天子さまから見れば、己もこいつ等と同等なのかも知れないが。

自分は真にこの国を憂いている。私利私欲では決して無い。

何れ来る選択の日までは・・・。


「ラインハルト、回復術士と医師を連れて来い!」

側近のラインハルトに指示を出し、この場を立ち去ろうとする。

ざわつく俗物達の中から、もの凄い形相で第二王子が呼び止めた。

「兄上! お待ちください!」

「何だミハエル! 今の天子さまの声が聞こえなかったのか?」

”ぐぬぬ。”

ジークフリードの表情には、”この俗物め!”との思いが顔に出ていた。

事実、このミハエルは王位継承権第二位であり、王位簒奪を目論む俗物である。

「ちっ!」

ミハエルもミハエルで、王太子への苛立ちを隠す様子も無い。


ジークフリードは、もう一度胸元の青年に視線を落とす。

苦痛に歪んだ顔を見て、一時の猶予も無いと悟ると足早に去って行った。


■■■■


パチくり

目が覚めた俺は、ベッドの上で上半身を起こし周囲を見渡した。

そして、自分が全く知らない部屋に居ることに気が付いた。

病院か? それにしては違和感だらけだ。

中世風の調度品、メイドらしき女の子、侍従らしき男の子、護衛らしき兵士、

そして、直ぐ近くで微笑む美青年。


「ここは?」

不思議と体の怠さも無く、頭も回転する。

むしろ、力が湧いてきて以前より調子が良いようにすら思える。

そうなると気になるのは、わが身に何が起こったか?だ。

おどおどしていると、近くに控えていた眉目秀麗な青年が身を乗り出して来た。

先ほど助けてくれた青年も相当な美男子だったが、この青年は柔らかな雰囲気で幾分女性っぽい。

肩までかかる美しい金髪がさらに女性らしさを醸し出す。

「ご気分は如何ですか? 天子さま。」

明らかに俺に話しかけているのだが、”テンシサマ”というのは呼称なのだろうか?

取り敢えず無視して、聞きたいことを聞くことにした。

「すみません。ここは何処ですか?」

「ここは、ミッドランド国の宮廷、その奥にある王太子殿下の宮の貴賓室です。」

とニコリと笑った。

続けて、「ご気分は如何ですか? 天子さま。」と青年は笑う。

「あ、ありがとうございます。特に問題は無いようです。」

「それは良かった。私は、ラインハルト・フォン・グランデと申します。ラインハルトとお呼びください。天子さま、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


やはり、天子って俺のことなんだよな。

「あ、はい。黒崎眞です。」

「クロサキシン?」

イントネーションが違うとちょっと恥ずかしい。

「・・・シンで良いです。」

「では、シン様、御手を取ってもよろしいでしょうか?」

「は、はい。」

何だろうと思いつつ手を差し出す。

ラインハルトは、俺の前で片膝をつき俺の手を取った。

「もし、御側に使えることをお許しくださるなら、私の命の限り貴方をお守りすることをお誓います。」

” え! ”

「あの~、どういう事でしょうか?」

全く意味が分からない。

こんな美しい青年が俺にかしずくというのだろうか?

手を引っ込めたいのに、全然離そうとしない。

これって、絶対わざとだよね。


ラインハルトは、落ち着いた様子で静かに語りだす。

 この世界は、”天子”と呼ばれる異世界人に守られて来た。

 しかし、天子の力は永遠では無く、今、正にその力が尽きようとしている。

 そして、この国で召喚の儀式が行われ、それに答えてくれたのが俺だと言う。

 天子は、おおよそ100~200年の周期で召喚され、皆、この国で生涯を全うした。

 天子は召喚された際に、膨大な魔力を蓄えるとされ、俺にもその魔力がある。

 残念ながらこの国は一枚岩とは言い難く、天子の力を利用して世界を牛耳ろうとする輩もいるかもしれない。

だから、俺に使え、俺を守るのだと言う。


俺は、途中から目を泳がせながら聞いていた。

だって、にわかに信じ難い話だろ?

しかし、誓いの意味は分かった。

美青年は、大真面目に話しており、一方的に拉致と言うか”召喚”した責任を感じているということだ。

まぁ、それなら直ぐに元の世界に帰してほしい。

俺に世界を救う力があるとは思えないからね。

自分が、この部屋にいる人達とは”異質”であることは分かるのだけれど、”天子”かどうかは分からないだろう。

まぁ、しばらく彼等の言うことを聞くしかないか。

「ふぅ、分りました。よろしくお願いします。」

「ありがとうございます。光栄に存じます。」

ここ一番の笑顔で答えるラインハルト。


男にしておくには勿体ないくらい美人だ。

俺は、ちょっと照れて顔を逸らしてしまった。

すると、「ふふふっ」と楽しそうにするラインハルト。

おもむろに俺の髪を一掴みしたと思ったら、瞳を閉じて深く深呼吸した。

そして、「良い匂いです」と言い、そのまま軽く口を寄せる。

”な、な、何をしているの?”

しかも、さらさらと流れる銀色のその髪は・・・あれ?

これは、俺の髪なのか?

俺は、身をよじりラインハルトから距離を取り、

「すみません、鏡か何か身を写すものはありませんか?」

と聞いた。

「姿見までお連れしましょう。」

とラインハルトは優しく微笑み、俺を抱きかかえた。

”ひゃっ”

俺は、咄嗟にラインハルトに抱き着いた。

この格好は苦手だ。若者に姫抱っこされるおっさんってどうなんだ?

俺は、恥ずかしさのあまり顔が赤くなるのを自覚した。

部屋の中央に一際大きな鏡が見える。

そこに写っているのは、移動しているラインハルト。

そして、抱えられている長い銀髪の女性らしき美しい人だけだ。

鏡の前に座らせてもらった俺は、その銀髪美女が自分であると認知した。

「これが・・・・俺?」

俺は、頬に手を当て、ただ鏡を凝視するしかなかった。


「・・・シン様、・・・シン様」

”はっ”

数秒は経ったのだろうか、俺はラインハルトに名前を連呼されていることに気が付いた。

「はい!」

「どうしましたシン様? 」

俺は、異世界に転移することがどれほどの負担であったか身をもって感じていた。

頭髪をはじめ、全ての毛髪の色素は失われ、ほぼ標準であった体型もかなり瘦せ細っている。と言うか縮んでいる。

女性だと思っていたが、辛うじて男子としてのシンボルは残っていた。

しかし、まるで加工アプリで作った”カコ女”の様だ。

肌は真っ白で、お目目パッチリ。髪は異常に長い。

俺が変異していることは、この人達には分からないのだろうね。

「いや、何でもないです。」

「何でも無いようには見えませんが、辛いのなら私には何でも言ってほしいです。必ず力になります。」

俺は、その発言は少し無責任だなと思いながらも、

「俺の髪は、”黒”だったのです・・・、それに・・・。」

言ったところでどうにもならないと思い、直ぐに口をつぐんだ。

「そうなのですね。この世界には黒髪の人間は居ないのです。

 ですから、召喚された時に変化したのではないでしょうか。

 申し訳ありません。この世界を代表して謝罪いたします。」

なぜか、ラインハルトは悲壮感すらある謝罪を口にした。

「いいよ。髪の色は・・・元々そんなに気にもしていなかったし。

 それより、なんだか自分では無いみたい、痩せ細って女性みたいだ。」

 苦笑いする俺に対し、ラインハルトのみならず、侍従の男の子、侍女の女の子や騎士も驚いた表情を浮かべている。

あれ?何かおかしい事でも言ったかな?

すると、侍従の男の子が意を決して話出す。

「天子さまは美しいです。」 

ちょっと、間の悪い空気を感じながらも、「あ、ありがとう。」と反射的に返してしまった。

”でも、俺、男なんだよね。ふふっ、美しいって”と照れながら言うと、

侍女の女の子まで

「私も、天子さまは美しいと思います。」

とちょっと怒ったように言い、侍従のオスカーを睨みつけた。

そして、「天子さまは、男性のままでも女性になられても美しいと思います。」と続けた。

”ん?”

俺は、ニコニコと侍女の女の子の方を向きながらも首を傾げた。


”オホン。”

ラインハルトが咳払いして話出す。

「髪の色は確かに重要な要素ですが、それが貴方の美しさを損ねるものではありません。」

(そこじゃ無い。今俺が聞きたいのは。)

「私どもは、男性のままでも女性となられても貴方と共に歩む事を望みます。」

「女性になる?」

思わず声に出てしまっていた。

「ああ、そうです。そうなのです。この世界では、人間などの高等生物は成長とともに性別を変化させることがあるのです。」

ラインハルトの説明は続く。

 貴族の場合は、ほとんどが家門の都合で性別は決められてしまう。

 平民の場合は、よほどでない限り生まれたままの性別で一生を過ごす。

 稀に、愛する伴侶のために変化する者もいるが、同性婚も認められているため、子を生す為に性転換するくらいだと言う。

いや、問題あり過ぎだろ!どっから突っ込んだら良いんだ?と思いながらも

「そう、なんですね。」

と苦笑いで返す。


しばし沈黙が流れる中、俺は新しい自分の姿をただ見つめていた。

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