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止まった時計の針  作者: Tiroro
中学一年生編 その4 転校生の少年と幼馴染達の恋事情
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第57話 怪しい二人

 高山君は転校してきて早々、クラスの人気者になっていた。


「あ、高山君おはよう!」

「クッキー焼いてきたの! 食べてくれる?」

「むしろ、私を食べてくれる!?」


 今日も朝からキャーキャーと囲まれてる高山君。

 なんだか、悠太郎が転校してきた頃を思い出すね。


「朝から騒がしいな」

「あれ? 瑠璃、今日は早いじゃん」

「昨日は朝から腹が痛かったんだよ」

「ああ、そういう時ってあるよね」


 瑠璃と話しながら騒いでる女子達を見ていると、そこへ二宮さんが登校してきた。


「やあ、愛しの君。今日も綺麗だ」

「……」


 高山君を一瞥すると、無言で席に座る二宮さん。完全に嫌われちゃってるっぽいね。


「なぁに、あの態度。高山君がせっかく声を掛けてあげてるのに」

「あいつ、何様って感じだよね」


 ひそひそと話す女子達の声が聞こえたのか、二宮さんは黙って机に突っ伏した。

 それでも女子達は二宮さんの悪口を言い続ける。


「……あんた達」


 ちょっと言ってやろうと思った時だった。

 ガンっと大きな音が聞こえてきてそっちを見ると、宮下君が自分の机を前に大きく蹴り倒していた。


「ピーピーうるせえぞ、ゴルァ」


 宮下君が物凄い眼光で女子達を睨んでいた。


 それを見て、さっきまで騒いでいた女子達もさすがに身震いしている。

 そして、ちょうど登校して来て自分の席に着こうとしていた村沢君も身震いしている。


「暴力はよく無いな。言いたい事があるなら口で言えばいいだろう」

「るせえ、この似非外国人が」


 そう言うと、宮下君は教室から出て行った。


「なんなの、あいつ……」


 女子達は宮下君がいなくなったのを確認すると、ヒソヒソと話しだした。

 村沢君は小刻みに震えながら一生懸命席を戻していた。


 その後、宮下君はホームルームまでには戻ってきたけど、相変わらず不機嫌そうな顔をしていた。


***


 二時間目は英語の授業。

 そういえば、高山君ってイギリスの人とのハーフだったんだよね。

 中学校の英語なんて、彼にかかれば簡単なんじゃないだろうか?


「では、ミスタータカヤマ、続きはあなたに読んでもらおうかしら」

「え?」


 そんなことを考えていたら、ちょうど当てられた高山君。

 ハーフの彼に、クラス中の期待の目が注がれる。


「あ……あい はぶ びーん す、すたでぃーど……?」


 ……はい?

 クラス中に何とも言えない気まずい雰囲気が流れる。


「ミスタータカヤマ……?」

「す、すみません……英語、苦手で……」


 そう言うと、高山君は頭を掻きながら着席した。

 見た目は完全に外国人なのに英語喋れないんだ……これはちょっと意外だね。


「そんなところも萌えますわ……」


 女帝(笑)が何か言ってるけど無視しておこう。


***


 体育の時間。


 今日の体育は男女ともにバレーボール。

 悠太郎は毎日これをやってるんだね。

 トスとか、レシーブとか、思い通りに飛ばずに結構難しいかも。


「見て伊藤様の華麗なトスを!」


 今度は悠太郎を見て騒ぐ女帝達。

 あんたら、高山君がいいんじゃなかったのか。


 しばらく練習をした後は、試合形式で行われることになった。

 サーブは入るようになったけど、悠太郎みたいにストンと落ちるようなのは難しいね。

 何かコツがあるのかな? 今度聞いてみよう。


「玲美、悠太郎君が出てるよ」

「あ、ほんとだ」


 由美に言われて男子の方を見ると、ちょうど悠太郎がレシーブを上げたところだった。

 高く上がったボールを遠藤君だっけ?がトスして、悠太郎がスパイクを打つ。


 凄い、強烈なボールが小岩井を襲った。

 小岩井は何とか逃げずにレシーブしようとするけど、惜しくもボールは顔面に当たってしまった。


「小岩井、大丈夫か?」

「が……顔面セーフだ……」


 残念、バレーに顔面セーフは無いんだよ、小岩井。


「伊藤君、がんばってー!」

「伊藤様ー!」


 女子達は自分達の試合そっちのけで男子のバレーの試合を応援し始めてしまった。

 再びやってくる攻撃のチャンスに、悠太郎は高く飛び上がった。

 その時、同じく高く飛び上がったのは転校生の高山君。

 悠太郎のスパイクを見事にブロックし、さっきまで悠太郎を応援していた女子達の声援は、今度は高山君に向けられるようになっていた。


「キャー! 高山くーん!!」

「かっこいいー!」


 その声を聞いた高山君は、こちら側のコートの方に向かって大きく手を振った。

 沸き上がる歓声、響き渡る南先生の怒号。

 うん、授業中だもんね。ちゃんと先生の言う事聞こうね。


***


「ねえ、高山君私に手を振ってたよね!」

「違うよ、あたしだよ!」

「伊藤君も凄かったよね。あれから一点も取らせなかったし、やっぱり本物のバレー部員は凄いわ」


 お昼休み、女子達は体育の授業の事で盛り上がっていた。

 まったく……高山君にしても、悠太郎にしても芸能人ってわけでもないのに、よくそんなに騒げるよ。


「高山君大人気だねえ」

「あたしにはどうでもいいことだけどな」


 由美も瑠璃も、高山君にはそんなに興味なさげ。


「それより二人とも、今日放課後空いてる?」

「空いてるけど、どうしたの?」

「うちでクッキー焼こうかと思ってね。良かったら二人とも作ってみない?」


 クッキーかぁ……食べるのは好きだけど、作るのって難しそう。

 あ、でも由美が作ったのも食べられるんだし、それならいいかも。


 その後、恵利佳も誘って、今日は四人でクッキー作りをすることになった。

 クッキーを作るのは初めてだけど、上手くできるかなぁ。


***


 放課後、瑠璃と恵利佳と待ち合わせた私は、由美の家に向かっていた。

 そういえば、何気に二人とも由美の家に行くのは初めてだよね。


「由美の家ってどんなところなんだろうな」

「一階が食堂なんだよ。由美の部屋は二階にあるんだ」

「へー。今度姉ちゃんと食べに行こうかな」


 瑠璃の家は美紀さんと二人暮らしだから、夕飯をそこで済ませるのもいいかもね。


「ねえ、恵利佳はクッキーって作った事ある?」

「ドーナツなら揚げたことあるけど、クッキーは作った事無いわね……」

「そうなんだ。ドーナツを揚げたってだけでも凄いじゃん」

「小麦粉に砂糖と卵を混ぜて作るのよ」


 ドーナツか……ドーナツも美味しそうだなぁ。

 普通に料理はするけど、お菓子作りってやった事無いんだよね。

 クッキーの作り方覚えたら、家でも作ってみようかな。


「おい、玲美」

「どしたの?」

「あれって二宮と宮下じゃないか?」


 瑠璃が指を差す方を見ると、二宮さんと宮下君が歩いている姿が見えた。


「あの二人、もしかして付き合ってるのか?」

「私に聞かれても知ってるわけないじゃん」


 そうこうしているうちに、二人は足早に建物の間の通りに入って行った。


「ちょっとつけてみようぜ」


 瑠璃は二人の入って行った通りの方へ小走りで駆けて行った。


「仕方無い人ね、全く……」

「瑠璃、そんなのいいから由美の家に行くよ!」


 瑠璃はこっちに向かって手招きをしている。

 もー……そんな事して遅れて、由美に怒られても知らないよ?

お読みいただいて、ありがとうございました。

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