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冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第十七章

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第七話 正義漢


「――邵、殿――?」


 蒼龍には予想通りだったけれど、目前の男にとってはそうではあるまい。笑みを浮かべて寄ってくる月龍を、目を丸くして見つめていた。

 いたずらな視線で目配せをしたあと、月龍は蒼龍の横に立って肩を抱く。


(ヘン)閣下、ご紹介致します。こちらは薛侯のご令息で、朱公(シュコウ)殿と申される。本日は、私と公主のために来てくださった」


 扁閣下、と月龍は言った。

 名は蒼龍でも知っている。禁軍の将だ。そして、月龍の直属の上官である。

 決して体は大きくない。柔和な表情も武人らしくはなく、文官かと思っていた。

 だが言われてみれば、たしかに身のこなしに無駄がない。名を馳せた将軍と聞けば、納得もできる。


「薛侯の?」


 訝しげな問い返しは、もっともなものだ。薛は決して、朝廷に従順ではない。領地が遠いのを言い訳に、年に一度、挨拶に顔を出すくらいだった。

 税や王への貢物を欠かすことはなかったが、反乱を起こした天乙寄りの態度も知られている。その子息である蒼龍が、朝廷の武官が催す華燭の典に列席するのは、不思議だろう。

 また、蒼龍の悪評はここまで届いているらしい。これが噂に聞くあの放蕩者か、扁将軍の目がそう語っているように見えたのは、後ろ暗さのせいだろうか。


「しかし、それにしても――なんというか、邵殿に似ておられる」


 扁が口にしたのは、多くあるはずの疑問の内でもっとも目につきやすく、訊ねやすいものだった。


「似ていて当然です。彼は私の、双子の兄弟ですから」


 蒼龍が答えるよりも早く、月龍が躊躇いもなく答えた。ふと目を向けると、月龍がやはりあの取り繕ったような穏やかさで笑っている。


「双子? では貴官も薛侯のご令息ということではないか!」


 驚きのために上げられた扁の声には、怒気が含まれている。


「何故今まで黙っていた。それを公にしてさえいれば、貴官が謂れのない中傷や屈辱に耐える必要はなかっただろうに」


 それは月龍を気遣うあまりに出た憤りだった。

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