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冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第十六章

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第十話 予測


 何故、このような事態になってしまったのか。あの日から蒼龍はずっと、同じことばかり繰り返し考えていた。


 あの日――月龍をこの部屋に招き入れた日のことを。


 市場で月龍と蓮を見かけたのは、あの日の数日前のことだ。

 まったくの偶然だった。

 それまで蒼龍は、無気力な日々を送っていた。蓮を奪おうと躍起になっていたのがウソのように、気力がわいてこない。

 無邪気な笑顔は消え、輝きの失せた瞳の蓮は痛々しいだけだった。あのような姿など、もう見たくはなかった。


 違う。違うはずだ。

 月龍は蓮を殴っていたという。目前で蓮を抱いてみろなどと言うのは、関心を抱いていないからだ。月龍が蓮に興味を失ったのならば、奪ったところで意味はない。


 否、意味はあるのか。「公主」を娶れば、たとえ(セツ)の嫡男であっても地位は確約される。

 朝廷に留まるのではなく、商へ赴くにしても「公主」は人質になる。


 だが蓮は、決して蒼龍を選ばない。


 体を奪うことはできるだろう。力ずくで連れ去ることも、容易だ。

 それでも、心は手に入らない。二人の判別がつかなくなるほど絶望を味わわされていてもなお、月龍を求めて泣いていた。

 もし腕力にものを言わせて従わせたとしたら、蓮はきっと怯えるだろう。そうして、月龍だと思いこんでやったように、蒼龍の前で膝を折る。


 ――あのときの光景が、ずっと続くことになる。


 嫌だと思った。蒼龍に対し、怯え、震える蓮の姿など、堪えられる気がしない。

 ならば心ごと手に入れるしかない。だがそれが、難しい。

 完全に手詰まりになっていた。いい案を思いつかぬまま無為に過ごしていたあの日、市場で偶然に二人を見つけたのだ。


 月龍と蓮の間にあった、冷え切った空気感が消えていた。どこか和んだような雰囲気と、互いを見つめる笑みを含んだ眼差しとが、やけに癇に障る。

 なにか、劇的な変化があったとしか思えない。


 その変化とは?

 二人の様子や、足を止める店を見れば、答えは自ずと導き出された。


 子供だ。蓮が月龍の子を身籠ったのだ。


 まだ想像の域は出ていない。即座に調査に入った。

 もし蓮が本当に妊娠したならば、立場を考えれば醜聞を恐れ、すぐにも結婚するだろう。いくら内密に進めていたとしても、完全に隠しきることは難しい。

 そして、宦官である(ショウ)の家はわからないが、趙家には確実に動きがあるのが見えた。


 まず間違いない。だからこそ直接、月龍に揺さぶりをかけたのだ。

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