表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第十六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

165/188

第三話 いらない


「おれ達は何故、出会ってしまったのか」


 もし蓮と出会っていなければ、心を乱されることはなかっただろう。誰か無難な相手と婚姻していたかもしれない。愛などなくとも身分を手に入れ、それなりに充実した生活を送っていただろう。


 ――そのようなもの、いらない。


 月龍にとって、蓮はすべてだ。結果がどれだけ辛いものになったとしても、蓮と過ごした日々はかけがえのないものだった。

 けれど蓮は? 考えるまでもなく、答えは否だ。


 もし月龍と出会っていなければ、亮の正宮になっていただろう。もしかしたら今頃はもう、亮の子供を抱いていたかもしれない。

 夢のような幸せが待っていたはずだ。


 それを月龍が壊した。

 蓮のためには、二人は出会ってはいけなかったのだ。


「せめて君と亮が正式に結婚した後だったら――そうしたら、おれ達はこのようなことにはならなかったのに」

「――後悔なさっているの」

「ああ」


 掠れた蓮からの問いかけに、迷わず首肯する。


 自分が幸せになれるのではないかと錯覚したせいで、蓮の心身を傷つけた。

 愛されたいなどと願ったばかりに、蓮を不幸にした。


 わかっているというのに、それでもなお、傍に居たいと願ってしまうことの愚かしさを噛みしめる。


「それよりも、疲れただろう?」


 軽く嘆息して、気分を落ち着ける。


「長々と付き合わせてすまない。体に障るだろうから、もう休んだ方がいい」


 本当は手を添え、臥牀に横たわらせるつもりだった。けれどこれ以上、笑顔の仮面をかぶり続けられる自信がない。

 泣き崩れてしまう前に、立ち去らなければならなかった。

 背中に感じる視線が痛い。鋭く睨み据えてくる蓮の目が、容易に想像できた。


 この詭弁の士、偽善者の皮をかぶった獣が。

 罵倒する声さえ聞こえるようだった。足を速めたのは、逃げたい一心の表れに他ならない。



 だから現実の姿――悲しげな表情で瞳を揺らしている蓮の姿など、想像だにできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ