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冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第十三章

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第五話 容体


 王子の立場でありながら、亮は物事を客観的に見過ぎている。「王朝の滅亡危機」をまるで何事もないかのように語った。

 話し続けたせいで乾いたのだろう喉を、盃を煽ることで潤す。


「まあ悪い知らせと言っても、今までと大差はない。ただ敗色が濃厚になったと言うだけのことだ」


 言いながら、亮は再び盃に酒を注ぐ。さすがに首肯はしないものの、内心ではその通りだなと考えていた。


「で、二つ目だが――お前には存分に耳を痛がってもらわなければならない。紫玉と言ったか、あの女官のことだ」


 盃に唇を寄せながら、上目遣いで見上げてくる亮に、ほう、と嘆息する。


「なんだ、そのようなことか」

「なんだ、ではないだろう。人の苦労も知らずに」


 月龍の反応が気に入らなかったのか、亮は唇を尖らせる。

 紫玉に傷を負わせたのは、宮中でのことだった。実際、本来ならば「そのようなこと」で一蹴できる問題ではなかった。

 けれど宮廷からはなにも言ってこないので、どうにかなったのだろうと勝手に思っていた。月龍の心配事は蓮に関することだけだ。他のことに気を配る余裕などない。


「事件をもみ消すのに、おれがどれだけ苦労したと思っている。宮中、しかも白昼堂々の暴力沙汰とは正気とは思えんぞ」


 さもありなん。あのときの月龍は、正気ではなかった。


「目撃者もかなりの多数に及んでいたしな。幸いだったのは、陸が早めに知らせてくれたことだ」

「陸殿が?」


 そういえば、現場に陸宏がいたか。おぼろげな記憶を辿り、考える。


「そうか。ならば彼に礼を言わねばなるまいな」


 口からこぼれたのは、さして感謝の色も見えない声だった。

 月龍の反応は想像できていたのだろう。互い違いにした眉と、片方だけ細めた目に亮の呆れが表れていた。


「お前は傷を負わせた女の容体は気にならんのか」


 質問には、肩を竦めることでしか返せなかった。気になるどころか、言われるまで思い至りもしなかった。


「まあ、お前らしいと言えば言えるか」


 亮が、軽く嘆息する。


「ともかく伝えておくぞ。命に別状はない。ただし、潰された喉の回復は見込めないそうだ。まったく、お前も罪なことをする」


 面白くもなさそうに言う亮に、顔を顰める。怒っているわけではない。苦労を掛けたことを申し訳なく思ったのだ。

 罪悪感は亮に対してのみ、紫玉には露ほどにも向かわなかったのだけれど。


「そして最後の一つだが――見当はついているだろう。蓮のことだ」


 今までと変わらぬ、軽い口調だった。

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