第捌話 土の人形
ケラケラと笑う二人を冷たい眼で見る二人。この状況はどういう状況なのかわからなくなっていた。なぜ自分はここにいるのだろうかと自問自答が始まる。この時間はいつまで続くのだろうかと不安でしかたがない。
「クラウクラウ、もう一回言ってもろうてい?」
狗飼が悪魔のような催促をする。断ればいいだけの話だ。だがクラウは弱々しくもそれに従う。
「揉んで、あげましょうか……?」
「出たっ!へんたい! もしかしてアルさんの事好きなんちゃいますの?」
「えー! そうだったの! 初対面なのに一目惚れってやつー? いや、でもごめんねー。さすがにちょっと早いかなって」
告白もしていないのに勝手に振られる。どうやらこれは精神攻撃をされているらしい。そしてそれがクラウの心にクリティカルヒットしていた。まさかこんな戦闘があるとは思いもしなかった。
「そういや、気をつけろって言ってたのはこーゆー事だったのか……」
「誰に言われたん?」
クラウの独り言を狗飼のその獣の耳は聞き逃さなかった。
「魔王ギリ」
「「魔王!?」」
ファルとリアが思わず聞き返す。
「なんや、あいつまだ生きとったんか」
どうやら狗飼とは面識があるようだった。そして、いまクラウがここにいるのもギリの指示によるものだという事が判明した。
「あのトンチキが」
それがわかって狗飼はご立腹だ。
「これはギリ様が悪い。何に気を付けるかをしっかりと説明しなかったギリ様が悪い」
こんな状況になっているのはすべて自分の主の所為だという事にしておこうとクラウは決めた。
「あいつ、説明ヘタやからな」
で? と狗飼は自然な流れで続ける。
「何しに来るように言われたん?」
「あー、そろそろ青の心臓が覚醒するかもしれんから見てこいってさ。自分でやりゃいいのにさー」
「そかそか、それはこき使われて大変やね。じゃ、もう見たことやし帰ったら? 家でのんびりゲームでもしい」
「そうっすねー。もうめんどくさいし帰るかー……」
ここまで言わされて我に返る。
「ってあほかー!」
「ちっ、もうちょっとやったのに」
あやうく狗飼の悪意にのまれるところだったとクラウは自分の頭を振った。
「でも、ま、時間稼ぎはできたやろ。アルさん!」
狗飼の掛け声と共にファルの方を見るとなにやら地面に色んな物が置かれて、その中心に右手をかざしていた。
「まさか、全部演技で時間稼ぎを!」
クラウはしてやられたと頭をかかえる。ギリの気をつけろの言葉の真意はこっちだったのかと思考が加速する。
「ま、まぁね……」
よくぞ見破ったとばかりにファルがドヤ顔をするが、その後ろでリアは真相に気が付いていて、クラウ以上に頭を抱えていた。
「結果よければすべてよし! 来い――」
ファルの言葉と共に地面は盛り上がり錬成され、それは召喚される。
「ゴーレム!」




