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運命の錬金術師  作者: 夜行
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第弐拾伍話 ツバメ


 問題。

 金属と金属が衝突したらどうなるのか。



 勢いもつけずに大剣は振り下ろされた。一切の迷いなく、あるべき場所に帰るかのようにクラウに吸い込まれていく。一ミリ動いた瞬間からトップスピードでこれを止められる者など存在しないだろう。それはクラウにとっても例外ではない。


 ならどうするのか。


 答えは簡単だ。避ければいい。


 わざわざ無理だとわかっているものを受け止める必要性はどこにもない。


 クラウはリアから見て右側に身体を移動させた。自分の意思ではなく、まるで木の葉が空気におされるように、自然に身体が動く。


 当然、大剣はクラウには当たらずにそのまま地面へと向かっていく。このままでは訓練したときとまるで変わらない。大剣は地面へとめり込んでおしまい。その重さから二撃目はない。


 訓練の時と何も変わっちゃいない。


 クラウはそう思った。


 だが―――。


 クラウの意識がそのめり込むはずだった地面へと向かう。そして流れるようにファルへと向かった。

 違う。まだ、終わってない―――。



「今だッ!」



 ファルは錬金術で大剣が当たるはずだった地面を変化させる。


 大剣は金属だ。そして地面は土や岩だ。硬度は当たり前だが、金属の方が硬い。故に金属である大剣が硬さで勝利し地面へとめり込む。


 だったら―――。


 その地面が金属と同等の固さを持っていたとしたらどうだろうか。


 金属と金属がぶつかり合った瞬間、何が起こるだろうか。


 答えは至って単純だ。


 引き分け。


 つまり、弾かれ合う。


 大剣は金属と化した地面に弾かれた。今まで下への力が働いていたが、それが反発して上への力へと変化したのだ。


 それが二人の作戦だった。リアの力では大剣の重さに耐えられないし止められない。本来ならばその技は、刀の持ち主が地面のギリギリのところで振り下ろした刀をピタリと止めて二撃目に繋げる。リアにはそれが出来なかったので弾く力を利用したのだ。


 クラウは意識の外側から攻撃が来るとわかったが、それを避ける事ができない。避けるという行動は一度しか意識していなかったからだ。


「秘剣! 燕返し!!」


 大きな燕は、見事にクラウを捕えたのだった。



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