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第四十五話 魅了のポーション

シリル視点に戻ります。



 さっさと王太子妃の宮を後にしたシリルは、早足になって第一王子宮に戻る。ああ気分が悪い。口の中が甘ったるい。溜息しか出ない。


「よう、お帰り」


 自室ではルーシュが待っていた。普通に呼び出しておいた訳だが、勝手な事にふつふつと怒りが湧く。


「君は……まったく暢気なものだね。僕が第一聖女に魅了のポーションを盛られている間、第二聖女のロレッタとアハハウフフと仲良く楽しい時間を過ごして。僕は今決めた。少なくとも週に一回はエース家の離れで過ごす。多ければ四日だ。ああ気分が悪い。あの魅了のポーションは頭の芯が痺れるほど甘いんだ。その上中和させるポーションも極甘。脳天が突き抜ける甘さだ。そもそも再三王太子に魅了のポーションを盛るとか、とっくに不敬罪だ」

「証拠は取ってあるだろうな?」

「取ってあるよ。そりゃ取ってあるだろうよ? 取り引きしている裏業者まで押さえてあるよ。ついでに髪も染めているし、聖魔法は全てポーションだ。こちらも目撃者を確保してある。教会の中で隔離されているならともかく、魔導師の前でポーション魔法とかそんな偽りが通じるかって訳だ。通じる訳ないだろ? どういう頭してるんだ」

「そんなものだろ。魔導師ではないなら、魔法の展開がどうなっているのかなんて分からない」

「はー。そうですか……」


 シリルは怒りながら紅茶をガブ飲みする。ちなみに人払い済みだ。済んでなかったらおかしいわという内容の会話をしている訳だし。


 ルーシュには第一聖女の人となりを事前に洗いざらい全部ぶちまけた。聞いたルーシュは凄く迷惑そうな顔をしていたが。陛下にも言えない王妃陛下にも言えない、言えないがむかむかしていた。同腹の兄弟には言えるが、そうは言っても、今、二人の王子は非常に忙しい。留年とそれにまつわる色々と。


「大分綺麗な人だけどな」

「まあ、容姿は綺麗かも知れないね? 興味ないけど」

「なんでお前はそんなに興味が無いんだ」

「……別に女性に興味がない訳じゃない」

「そんなことは知ってる」


 そりゃ、ルーシュだって側近だって同腹の兄弟だって僕が第二聖女推しなことは知っている。


「今日、第一聖女に言われたよ? 僕とルーシュがあまりに仲が良いから恋人なのではないかって」


 ちょっと盛った。自分だけ言われっぱなしは微妙に悔しいので、巻き込んでみた。案の定嫌な顔をしている。ルーシュは次期当主のくせに今現在婚約者がいない。なんでも次期エース侯爵夫人は炎ではない魔導師を探しているらしい。何代か続いて炎の魔導師と炎の魔導師が婚姻してきた系譜だから、ちょっと別魔法を入れたいのだろう。王家だって何代も続いて聖魔導師同士の婚姻が続いているが。これもどうなのだろう? 


「……迷惑な噂だな? もう泊まりに来るな」

「迷惑ついでに毎日行くよ。明日辺り……」

「用がないなら来るな」

「用がない日は行くんだよ。分からない奴だな」

「それが泊まりに行く家の主人に言う台詞か!?」

「良いんだよ。ルーシュ相手に失礼とか失礼とか失礼とか。今更だ」


 ルーシュは机の上に置かれた媚薬中和のポーションの瓶を弄んでいたが、ふいに指で残りを掬って嘗めた。そして吐きそうな顔をした。甘いと教えていたのに何故味見をする?


「甘っ。頭が腐りそうだ」

「そう言っておいただろうが?」

「何で盛られているのに気が付いたんだ」

「それは初日の話だ。結婚した当日。まあ、当然妃の部屋に行く」

「初夜だな?」

「そうそう初夜。そこで飲まされた紅茶に魔法の残滓を感じた訳だ」

「ほう?」

「当然何か盛られたと思うだろ?」

「そうだな」

「顔には出さなかったが戦慄した。早々に部屋を辞して弟王子の部屋に駆け込んだら魅了のポーションではないかと……」

「……へー」

「それ以来、妃の部屋で出てくる飲み物は飲み込んでいない」

「……ほー。それで初夜初日は弟の部屋でずっとポーションの残滓の研究をしていたと」

「そういう事だ。初夜二日目も三日目も体調が優れないと言って、弟の部屋で過ごした」

「……知りたくない事実だな。…………考えようによっては私を見てという好意が行き過ぎたとも捉えられるが……」

「冗談じゃない。ポーションは欺きだ。好意だからといって許されるものではない」

「……お前の精神も複雑だね」

「第二聖女推しだ。シンプルだろう?」

「それはどこまで本気なんだ?」

「どこまでも本気だ。真実可愛い」

「……一般的に見て、第一聖女の方が容姿が優れているぞ?」

「そうは思わない。第二聖女の方が可愛い。ルーシュはどっちが可愛く見えるんだ。一般的にじゃないぞ」

「……うーん。第一聖女と第二聖女……」

「第五聖女も入れていいぞ」

「……その中だと、どのみち第二聖女しか知らないからな……」

「第二聖女推しは間に合ってるから、担当は別か箱で」

「はあ!?」


 真剣な話をするつもりだったのだが、夜中まで推し担で揉めた。





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― 新着の感想 ―
[一言] ルーシュもいい迷惑だな(笑)
[良い点] 王太子殿下、同担拒否笑
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