表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/441

【028】『来訪者』



 以前にルーシュ様に言付かった専用ゲストルームの主が、今日来訪されるというのだ。私も挨拶をするように言われていた。侍女が挨拶に出るということは、お客様が来訪中は私が侍女として付くからなのだろうか? そうこうしている内にお客様はお越しになったのだが、様子が普通でない。私の事を下から上まで何度も何度も見るというか確認するというか、兎にも角にもその長さが尋常ではない。


「エース家のお仕着せは秀逸なデザインをしているから、きっと君に似合うと思っていた。とても可愛らしい。良く似合っている。今、心のシャッターを切っているから待っていてくれたまえ」


 シャッター……。防寒用の外扉の事だろうか? しかし文脈が理解しにくい。お客様はルーシュ様と同じお年頃の方で、名をシリル・エースと言われた。エース家の親類なのだそうだ。面立ちはあまり似ていなかったが。しかし、とても整ったお顔立ちをしていた。ただお顔の三分の一は黒縁の眼鏡を掛けていて、その奥は琥珀色の瞳をしている。


 あまりお客様を詮索するのははしたない事なのだが、あれは明らかに魔道具の眼鏡である。普通の眼鏡は視力を微調整する為に使うのだが、それは屈折の問題なので、魔道具である必要がない。違う目的の為に使われている眼鏡なのだろうと思う。手に取って魔力を流せば一発なのだが、恐らく瞳の色を隠しているのではないかと思う。隠すとは知られたくないからする事だ。つまり人に瞳の色を知られたくない。姓がエースなわけだから、紅色なら隠す必要はない。つまり姓はエースだが紅ではないという事になる。


 あまりにも長く見つめられたので、はしたなくも状況分析継続中。エースと名乗ったからには、母方ではなく父方の親類になるのだが、紅の魔導師ではない魔導師という事になる。色々顕現するのは確かだが、髪が光のような金色をしている。金髪というのは自然な色ともいうが、私の目には少し自然発生する金色とは違うように見えた。もっと閃く強い色というか……。髪の色はそのままにしているのならば、黄金色の魔導師になってしまう。黄金色といえば……そこまで考えて頭を振った。


「僕はルーシュと商会を立ち上げようと思っていてね。今日はその相談に来たのだよ。度々来る事になると思うから宜しくね」

「宜しくお願い致します」


 ロレッタも丁寧に挨拶をする。エース家の親類の方が、エース家の次期当主を呼び捨てにするだろうか? ちょっと上からなしゃべり方だった気がする。

 ロレッタは金色の髪を凝視した。僅かに燐光が見える気がする。暗闇に入れば一発で分かるだろう。ロレッタは応接室にお客様を案内し、二人分のお茶を用意する。出て行こうとしたらルーシュ様に呼び止められた。


「今日は魔道具を見せようと思ってね。君が作ったものだから、このシリルにプレゼンをしてごらん。上手くいけば販路に乗せて貰えるかも知れないよ?」


 ルーシュ様がそのように言われると、紅茶を飲んでいた客人が盛大に紅茶を吹いた。ああ、ルーシュ様とエース家の絨毯に紅茶のシミが付いてしまう。

 私は水魔法を展開し、紅茶を包むように受け止めてポットに回収する。このポットの中身は替えに行かなくては。そう思って立ち上がった時、由緒正しきエース家のティーカップが割れた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック】『紅の魔術師に全てを注ぎます。好き。@COMIC 第1巻 ~聖女の力を軽く見積もられ婚約破棄されました。後悔しても知りません~』
2025年10月1日発売! 予約受付中!
描き下ろしマンガ付きシーモア限定版もあります!

TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。コミック1宣伝用表紙
第3巻 発売中!!
TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。2宣伝用表紙
第2巻 発売中!!
TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。2宣伝用表紙
第1巻 発売中!! TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。1宣伝用表紙
― 新着の感想 ―
エース家の食器はよく割れる……
[気になる点] 第一王子は他の変装時もこんな態度なんでしょうか? 王子とはバレてなくても、良いとこの坊っちゃんだとは周りにバレてそうですね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ