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評判最悪男、魔女になる  作者: 出雲大吉
さらにおまけ!

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210/217

柊アカネは成長し、神条ルミナは成長しない(2/4)


 アカネちゃんを指導することに決めた俺は翌日、アカネちゃんと共に川崎支部に行くため、近所にあるアカネちゃん家に迎えに行った。

 俺はアカネちゃん家に着くと、チャイムを鳴らす。


「はーい」


 俺がチャイムを鳴らすと、聞き覚えのある声が聞こえ、ドアが開いた。


「こんにちはー」


 俺は出てきた人に挨拶をする。


「あら、ルミナ君じゃない。久しぶりねー」


 出てきた人はアカネちゃんのお母さんだ。

 近所だし、昔からアカネちゃんとは交流もあるので、アカネちゃんのお母さんもお父さんも当然、知り合いだ。


「久しぶりー」

「川崎から帰ってきたの?」

「そうそう。ゴールデンウィークだしねー。アカネちゃんは? まだ寝てる?」


 アカネちゃんはねぼすけさんなのだ。


「起きてるわよー。珍しく、早起きして、おめかししてたけど、そういうこと…………」


 おばさんは勘違いをしているようで、ふむふむと頷いている。


「そうなんだよー。今日はアカネちゃんとデートなんだー」


 おもしろいから乗っておこう。


「あらー」

「あははー」

「やめて! お願いだからやめて! そういうのじゃないから」


 俺とおばさんがニコニコと笑っていると、嫌そうな顔をしたアカネちゃんがやってきた。


「アカネちゃん、やっほー」

「やっほー。お母さん、デートじゃないから。ちょっと出かけるだけだから」


 アカネちゃんはそう言うが、スカートは短いし、気合マックスな格好をしている。

 というか、ダンジョンに行く格好ではないな。


「まあまあ」


 アカネちゃんにデートを否定されたが、おばさんはニコニコと笑ったままだ。


「ぐっ…………お兄さん、行きましょう」


 アカネちゃんは靴を履くと、俺の手を取り、玄関を出る。


「夜には帰ってくるのよー」

「はーい」

「なんでお兄さんが返事をするの!?」


 まあまあ。


 俺とアカネちゃんは家を出ると、駅に向かう。


「アカネちゃんさー。かわいいと思うけど、その格好でダンジョンに行くの?」

「え? ダメ?」


 防具を着ろとは言わないけど、せめて動きやすいジャージかなんかの方がいいと思うけどなー。

 まあ、どうせ低階層のゴブリンだし、いっか。

 アカネちゃんもそういうお年頃なんだろう。


「いや、その格好でいいや」


 いいんだけど、マジでデートっぽいなー。

 アカネちゃん、俺の手を握ったままだし…………


 俺は嬉しいような、でも、アカネちゃんだしなーという複雑な心境を思いながら駅に向かった。


 駅に着くと、電車に乗り、川崎を目指す。

 電車に乗ると、さすがのアカネちゃんも手を離した。


「川崎って、治安が悪いって聞いたんだけど、本当?」


 電車のシートに座っていると、アカネちゃんが声をかけてきた。


「悪いねー。マジでロクなのがいないよ。でも、今はゴールデンウィークだし、人はほとんどいないから大丈夫。まあ、来ても返り討ちにするけどね」


 この前のクーフーリンとやらみたいに一撃で沈めてやるぜ。


「ちょっと怖いな…………」


 うーん、アカネちゃんはかわいいから絡まれるかもだけど、ガキだからなー。

 大丈夫だとは思うけど。


「俺がついてるから大丈夫だって」

「逆にお兄さんがいることが心配なんだよね」


 アカネちゃんって、昔からさりげに俺をディスってくるんだよな。


「いや、アカネちゃんがいるのに暴れるわけないじゃん。通行料も取らないよ」

「通行料って何!? いや、言わなくてもいいや」


 ダンジョンの通路でたむろってお金を徴収することだよー。


「まあまあ。冗談だよー」

「絶対に嘘だ…………お兄さん、大丈夫? 学校で嫌われてない?」

「同級生にはそんなに嫌われてないな。まあ、3年にはめっちゃ嫌われてるね。あと、1年からはめっちゃ避けられてる」


 3年生はしゃーない。

 ちょっとボコにしすぎたわ。

 めっちゃウケる。


「それは避けるよ。私なら近づきもしないと思う」


 さっきまで手を繋いでたくせにー。


「うーん、後輩に何かをするつもりはないんだけどなー。後輩に何かしたらマジで悪人じゃん」

「通行料云々で確信してるけど、悪人じゃん」


 アカネちゃんは辛辣だなー。

 しかし、後輩に避けられるのは嫌だなー。

 頼りにされたいよー。

 先輩って呼んでほしいよー。


 いや、待て。

 ここにちょうどいいのがいるじゃん。


「アカネちゃんさー、俺のことを先輩って呼んでみて」

「……何で?」


 アカネちゃんが嫌そうな顔をしている。


「いや、俺、先輩じゃん。小学校はいいけど、中学になれば、そういう上下関係も大事じゃん」

「そう思うならまず、自分を治せば?」


 正論はポイー。


「まあまあ。呼んでみてよー」

「押しがひどい…………えーっと、センパイ……?」


 おー!

 アカネちゃんにセンパイと呼ばれるのが新鮮だ!


「なーに?」

「うっぜ…………センパイがそう呼べって言ったんじゃん」

「アカネちゃん、敬語も使おうか? 俺、先輩だよ?」

「うっぜ…………センパイのそういうところが昔から嫌いでした」


 またまたー。


「アカネちゃんは敬語が似合うねー」

「あのー、敬語が似合うって何です? 敬語に似合うも何もないと思うんですけど……」


 何だろう?

 こっちのほうがしっくりくる。

 小動物っぽいからかな?


「アカネちゃん、同級生だろうが何だろうが敬語キャラでいこうか。絶対に人気出るよ。男子にモテモテだよ」

「そうですかね? とてもそうは思えませんけど」

「語尾も伸ばそうか。もっと、あざとくいこう」

「えー……こ、こんな感じですかー」


 うんうん。

 すごくいい。


「うん。バッチシ」

「あのー、センパイの好みを押し通してませんか? 私、これでいくんですか?」

「アカネちゃんは腹黒だし、小悪魔キャラの方がいいって。中学デビューしよう」

「私、黒くありませんけど! ってか、もう5月なのに今からデビューするんですか!?」


 よくいるじゃん。

 夏休みとかにデビューする子。


「アカネちゃんはこのゴールデンウィークで変わったんだよ。今日からそのキャラで行け」

「この人、絶対に彼女を束縛して、服とかも自分が好きな服を着させるタイプだな…………」


 アカネちゃんが小声でつぶやいているが、全部、聞こえている。


「アカネちゃん、俺と付き合おうか」

「絶対に嫌です」

「うん。俺も嫌。もうちょっと大きくなってよ」


 アカネちゃんは色々と小さいからなー。

 まあ、この前までランドセルを背負ってた中一だし、しゃーないけど。


「死ね」

「敬語、敬語」

「死んでください…………いや、これを直す意味あります?」


 あるよー。




 ◆◇◆




 俺とアカネちゃんが他愛のない会話を楽しみながら電車に乗っていると、川崎の駅に到着した。

 俺達は駅から出ると、歩いて協会に向かう。

 川崎の協会は駅からも近く、結構、便利である。


 俺とアカネちゃんは手は繋がなかったが、アカネちゃんは俺の服を掴み、キョロキョロと周囲を見渡しながら歩いている。


 めっちゃビビってるし……

 治安が悪いって言っても、そこまでなんだけどなー。

 

 俺はまあ、かわいいからいいかと思い、特に何も言わずにそのまま協会に向かった。

 協会に着くと、扉を開け、中に入る。


「ここが川崎ですかー。本当にあまり人がいませんね」


 アカネちゃんは両腕で俺の腕を掴み、俺にぴったりとくっついている。

 とても仲が良さそうに見えるかもしれないが、こいつは俺を盾にしてるだけだ。


「ゴールデンウィークは皆、実家に帰るしね。プロの連中も休むよ」


 ここに残っているのはよほどの暇人だろうね。


「アカネちゃん、行くよ」

「…………はい」


 俺はアカネちゃんに声をかけると、受付に向かう。


「マイちん、やっほーでーす」

「あ、ホントに来たし」


 俺が専属の受付嬢であるマイちんに声をかけると、マイちんが顔を上げた。


「いや来るって言ったじゃん」


 昨日、マイちんに電話し、明日、行くと伝えた。

 というか、マイちんが出勤してくるかの確認をしたのだ。

 マイちんがいなかったら行かねーし。


「昨日、実家に帰ったのに翌日に来るとは思わなかったから…………その子は?」


 マイちんが俺の背中に隠れているアカネちゃんを見つけた。


「彼女」

「マジでやめてください!」


 冗談なのにー。


「えーっと、この子は…………あれ? お前、俺のなんだっけ?」


 友達?

 違うなー。


 後輩?

 いや、学校ちげーしな。


 うーん、妹の友達以外、何者でもない。


「幼なじみでーす」


 違くね?


「うーん、昔から知ってる近所にいる子。妹の友達」

「そう言うと、すごく距離を感じますねー」

「実際、そんなもんだしなー。昔からかわいがってあげてたアカネちゃん」

「かわいがる? イジメって言うんですよ」


 嘘ばっか。

 アカネちゃんだって、笑って喜んでたじゃん。

 まあ、たまに泣いてたけど……


「えーっと、よくわからないけど、仲が良いのはわかったわ。それで、その子をダンジョンに連れていく気? 大丈夫なの?」


 マイちんは複雑な顔をしていたが、アカネちゃんを見て、不安そうに聞いてくる。


「東京本部の中等部の生徒だよ。まだ一年なんだけど、自信がないんだってさ。そこでちょっと見てあげようと思って」

「え!? ルミナ君がそんな新人指導みたいなことを!?」


 マイちん、めっちゃ驚いてるし……


「いや、俺って、後輩には優しいから。残念ながら後輩はそのことを知らないけどね」


 目が合ったらすぐに逸らして、どこかに消えてしまう。

 さすがに傷つくよね。


「ものすごく意外ねー。貴方は誰彼構わず、殴る人かと……」

「何それ? 野蛮人じゃん」

「鏡を御覧なさい」


 いいよ。

 どうせ頼りがいにあふれるイケメンが映ってるだけだもん。


「まあいいや。というわけで、ちょっくら行ってくるよ」

「えーっと、その格好で行くの?」


 マイちんはダンジョンに行くとは思えないアカネちゃんの服を見る。


「どうせ、1、2階層だから大丈夫だよ。万が一にも俺がいるから余裕、余裕」

「まあ、貴方がそう言うなら止めはしないけど…………」

「任せといてよー。じゃあ、行ってきまーす」


 俺はそう言って、マイちんに手を上げると、アカネちゃんの手を取り、ダンジョンに向かった。


「…………変な2人」


 聞こえてるよー。





攻略のヒント


シズル「マイさん、若かったのかなー」

ルミナ「いや、ほんの2、3年前だぞ」

シズル「あ」


マイ「…………シズルをとっちめないといけない気がする」


『とある会話と独り言』より

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