天誅執行!
なんだ、この女。自分の処女をくれてやるだって!? そんな話、信じられるわけないじゃないか! いや、これは罠だ、俺がこの学校の女どもを食い散らかしていることを自白させるための罠だ。この女、なんてこと考えやがる!
だが、もし、ここで俺がこの提案に乗れば、生徒会長を俺のものに出来る。そうすれば、この女も俺の言いなりだ。俺のモノで服従させてやれば、そんな約束反古にして、いや、むしろ、この女の力で他の女どもをかき集めれば、俺のハーレムの完成だ!
「……その話、本当だろうな?」
俺がそう言うと、生徒会長は妖艶な笑みを浮かべてから、俺に顔をググッと近づけて、吐息混じりに俺の耳元でこう言った。
「ああ。私は一度約束したことは死んでも守る、私はそういう女だ。なんだったら、ここで直筆の血判状でもしたためてやろうか?」
この口ぶり、恐らくは本気だ。でも、俺の警戒心が、この提案には乗るなと言っている。しかし、この女の甘ったるい声が、俺の本能に直接語り掛けてくる。
「貴様は、処女の悲鳴を聞くのが大層好きだという話じゃないか。どうだ? この私も貴様の自慢のモノで泣かせてみたくはないか? そうだ、貴様が望めば、学校でも、プライベートでも、私のことを使い倒してくれて構わんぞ。どうだ? いい話だろ?」
駄目だ、乗るな、乗るなっ! でも、そんな俺の警戒心は、次のこの女から耳元で放たれた言葉で瓦解する。
「私だって、本当は解っているのだ。もし私を虜に出来れば、学校中の女は、来栖も含めて貴様のものだ。貴様が、私を、虜に出来れば、全て、貴様のもの。簡単な話だろ?」
ああ、そうだ。俺がこの女を服従させれば、この学校の女は全員俺のもの、俺のもの、俺のものだっ! 俺はなにをひよってるんだ。この女の言う通り、俺のテクニックが勝つか、この女の精神力が勝つかじゃないか!
いや、そんなもの、俺の百戦錬磨のテクニックと圧倒的な質量のモノが勝つに決まっている! 俺はこの女の提案に飛び付いた。そして、俺はズボンのベルトに手を掛ける。しかし、興奮する俺を生徒会長がなだめる。チクショウッ! さっさと犯させろよっ! この売女がっ!
「おっと、赤星、ここでは時間的にも空間的にもマズイ。私がおあつらえ向きの場所を用意してやるから、今は我慢しろ。なに、時間は取らせん。今日の午後九時に、音楽室に来い。そこなら絶対に音も漏れんからな。どうだ? 私を犯すにはいい場所だろ?」
ああ、危ない危ない、冷静になれ。今ここでこの女を犯したら、助けを呼ばれて一発でアウトだ。ここはこの女の提案に乗って、それまで待ってやろうじゃないか。準備だってあることだしな。
「ああ、解ったよ。だが、もし俺を騙すような真似をしたら、この学校中の女どもの写真や動画を、全国にばらまくからな、いいな!」
「構わんよ。今回の件は私が全て預かる。だから、貴様は安心して私を犯しに来い。貴様こそ、怖じ気づいて逃げるなよ」
クソッ! なんだ、この女のこの余裕は。まぁいいさ。俺だって万全の態勢でこの女を屈服させるだけさ。葵のときのこともあるし、用心に越したことはない。
そして、時間は過ぎ、約束の時間がやってきた。俺は誰もいない学校に忍び込み、あの女が待つ音楽室へと向かった。音楽室までの道のりは、あの女の手引きか、鍵もかかっていなかった。さあ、やっとあの女を犯すことが出来る。準備も万端、あとはあの女を蹂躙してやるだけだ。
…………
その日の夜、俺が音楽室に入ると、だだっ広い絨毯張りの床に、生徒会長が立っていた。生徒会長は、学生服を着て、裸足という変わったスタイルで俺を待ち構えていた。まぁ、どうせ脱がすんだから、関係ないけどな。
「待たせたな、生徒会長。それじゃあ、早速ヤるとしようぜ? 今日はあんたを犯すために、特別強力なクスリを飲んできたんだ。約束は守ってくれるんだったよな?」
そんな俺を、生徒会長は腕を組んでただジッと見据えるばかりで、服を脱いだりする素振りは全く見せなかった。なにかがおかしい。そう思った直後、生徒会長はこう言った。
「確かに、私の処女を貴様にくれてやるとは言ったが、誰も、『タダで』とは言っていないぞ? 私の処女はそんなに安くないんだ、悪いな、赤星」
「あん? なんだ? つまり、お前も金が目的なのか? ハハッ! 生徒会長が聞いて呆れるぜ! まさか本当に売女だったとはな!」
俺が生徒会長のことを罵倒すると、生徒会長は嘲笑を浮かべ、俺のことを大声で罵倒し返してきた。
「ハハッ! 誰にものを言ってるんだ? 貴様は私がどんな女なのかを知らんようだな。まぁいいさ、金なら腐るほどあるから要らんよ。その代わり、どんな手を使っても構わんから、この私を組み伏せてみせろっ! 勿論、武器も遠慮なく使うといいっ!」
この女、どういうつもりだ? もしかして、佐伯の弔い合戦っやつか。馬鹿が! そんなことしてなんの得があるんだ。しかも、そんな細い体でどうしようってんだ! 女にしては身長はあるが、たかがそれだけ。いいだろう、やってやるさ!
「今の言葉、犯されながら後悔するんだなっ!」
俺は生徒会長を組み伏せるために、余裕綽々な生徒会長の方へと突進する。すると、生徒会長は腰だめに構えて、俺に向けて鋭い突きを放った。
「ハッ!」
ふん、挑発してからのカウンターか、俺も馬鹿にされたもんだ。確かに女にしては鋭い突きだが、それでもこの程度なら捌くのはわけない。
俺は生徒会長の突きを躱して、その右手を両手で掴んで、腰を捻って生徒会長を引き倒そうとする。グラウンドに持ち込めば後はこっちのもんだ。しかし、生徒会長の右腕はピクリとも動かない。
「どうした? 貴様の力はそんなものか? まったく、大の男がそんな貧弱でどうするというのだ。ほら、頑張れ頑張れ!」
生徒会長はそう言いながら、その身を引き倒そうとしている俺を涼しい顔で見ている。なんだ、この感触は。まるで木に結ばれたロープを引くような手応えと重量感。そして、生徒会長は、残った左手で俺の右腕を握った。
「ふん、こうも解りやすく差し出された餌に無防備で飛び付くとは。やはり、貴様の脳みそは猿以下だな」
「ぐあっ!?」
生徒会長の吐き捨てるような声と同時に、俺の右腕に電流のような痛みが走る。俺は反射的に両手を離して、その握られた右腕から両手で生徒会長の左手を外そうとする。
「ほらほら、早く外さんと、貴様の右腕がオシャカになるぞ。それにしても、そんなガタイをしておいて、こんなに貧弱では話にならんぞ」
駄目だ、生徒会長の左手が右腕に食い込んで全く外れない。そして、その左手に掛かる力が徐々に増していき、やがて、俺の右腕の骨は軋みをあげて、ボキリと折れた。
「ぐあああっ!」
「ああ、もう折れたか。この程度で折れてしまうとは、貴様、カルシウムが足りてないんじゃないのか?」
なんだ、この女! あの細い手のどこにこんな力があるっていうんだ! チクショウッ! これじゃあマイクも握れないじゃないか!
「さあ、まだまだこれからだぞ? そうだな、次はどこを壊されたい? 左腕か? 脚か? それとも、顔面か?」
この女、笑っていやがる。いや、この女が言うように、ガタイは俺が圧倒的にデカイんだ。ここは重量差で叩き潰してやる!
「うおおおっ!」
俺は生徒会長に体当たりして、そのまま押し潰そうとした。しかし、押し潰すどころか、俺の体はただ突っ立っている生徒会長に跳ね返されてしまった。どういうことだ? そんなことがある筈ないじゃないか。
そんな困惑する俺を見下ろしながら、生徒会長がクスクスと笑っている。そして、生徒会長は俺にこう言った。
「赤星よ、貴様、体重は何キロだ? いや、今の感じからして、だいたい八十キロといったところだろう。残念だが、私の体重は百キロ近くあるからな。今の結果も致し方あるまい」
百キロ!? その体でそんな体重あり得るわけないじゃないか。そんな俺の疑問を見透かしたように、生徒会長が笑いながら俺に言った。
「私の筋肉は常人とは密度が違うのだ。『ミオスタチン』という物質が、体内に極端に少ないことが原因らしいのだが、そのお陰で常人の何倍もカロリーを取らんといかんし、不便なことも多いのだ。だか、貴様のような、人を人と思わん輩を叩き潰すのにはもってこいだ!」
そう言いながら、生徒会長は俺の方にゆっくりと歩いてくる。俺はその場から立ち上がって、左ポケットからスタンガンを取り出した。もう出し惜しみはしていられない! 俺はなりふり構わずスタンガンを持って突進する。
「チクショウッ! このバケモノがっ!!」
バチッ!
「おっと! やはり武器を持ち込んでいたか。さて、これは少し困ったな。ナイフや包丁ならともかく、さすがに私も電気はどうにもできんからな」
よし、これならいけるぞ! 俺は遮二無二スタンガンを振り回しながら何度も生徒会長に向かっていく。しかし、生徒会長はそれをヒラリ、ヒラリと避けながら、俺を嘲笑っている。チクショウッ! 一発食らわせさえすればっ!
そんな俺を、憐れみの目で見ながら、生徒会長は俺から距離を取る。そして、疲労している俺を笑いながら、生徒会長は意味不明の行動に出た。
「ふむ、これじゃあ、らちが明かんな。そうだ! 少しは貴様がやる気になるように、私も大サービスをしてやろうじゃないか!」
そう言って、生徒会長は、スカートをまくりあげ、その下に隠れたコバルトブルーの下着を少しずつ、少しずつ下へとずり下げ始めた。そして、その下着を足元まで下ろし終え、そのままその下着を床に放り投げた。
「さあ、これで貴様が大好きな処女は目の前だぞ? ほれ、ちょっと足を引っ掛けて転ばせてやれば、もう貴様の勝ちだ。ここまでされても、貴様はそんな無様なオモチャを振り回すことしか出来んのか?」
この女! 俺を完全に舐めてやがる! だが、挑発に乗るな。生徒会長だって、下着がない以上、無理な動きは出来ない筈だ。冷静に、角に追い詰めて、その白い肌にスタンガンを食らわせてやる!
俺は生徒会長目掛けて、スタンガンを突き出す。あくまでも冷静に、少しずつ、角に追い込むんだ。生徒会長の足の動きも、スカートがめくれないようにぎこちなくなっている。この調子なら、もうすぐ捕まえられるぞ!
そう思った瞬間、俺の下半身に血が集まる。もうすぐ、もうすぐ、この女に俺のモノをブチ込めるんだ。そして、ようやく生徒会長を角に追い詰める。よし、これで俺の勝ちだっ!
俺は勝利を確信しながらスタンガンを槍のように突き出す。しかし、その瞬間、衝撃と共に手からスタンガンが消えてなくなった。呆気にとられる俺の目の前には、バッチリと生徒会長のスカートの中身が見えてしまっていた。つまり、この状況はっ……!
「ふん! この私の動きが下着を脱いだくらいで鈍るわけなかろうがっ! そして、これでお前の負けだっ! この馬鹿者がっ!!」
生徒会長の声と共に、俺の脳天に生徒会長のかかとが直撃する。そうだ、スタンガンが消えたのは、手元へのフライングハイキック。そして、今のが振り下ろしのかかと落とし。
俺は、生徒会長の強烈なバネから放たれたかかと落としを食らって、床に崩れ落ちた。そして、生徒会長は床に大の字で倒れた俺を見下ろしながら、瓦割りの要領で、拳を俺の股間に向ける。
「よし、ちょうど頃合いだな。私の計画通りに、存分に盛ってくれてありがとう、赤星。これで、貴様の自慢のイチモツをへし折ることができるよ」
「お、おい、なんのつもりだ、生徒会長。まさか、おい、止めろっ、止めてくれっ!」
そこで俺は気付いた。生徒会長が俺を誘惑したのも、わざわざ下着を脱いだのも、俺を興奮させて、下半身に血を集めるためだったんだ。俺はまんまと生徒会長の策略に嵌まってしまっていたんだ。
実際、俺の下半身は、生徒会長から振り撒かれる色香でギンギンになっている。そして、軽い脳震盪で立てなくなった俺の股間に、生徒会長の叫びと共に、その豪腕による渾身の拳が振り下ろされた。
「これは、今まで貴様に辱しめられてきた女達全員の、恨みと怒りの一撃だっ!! これで少しは反省しろっ!! この下衆がっ!!」
パキッ……!
「ぐあああああっ!!」
そして、生徒会長の拳が俺のモノに突き刺さり、激痛と共に、俺のモノがくの字に曲がってしまった。そして、生徒会長は痛みに悶える俺の髪を掴み上げて、人を殺しかねない形相で、俺に言った。
「今日のところはこんなもので許してやる。これが私からの最後の慈悲だ。だが、今後また聖泉高校の生徒に手を出してみろ? そのときは、私の全力を駆使して、何年掛かろうが、貴様の一族郎党、皆殺しにするからな。解ったら、これまで貴様が集めた写真と動画のデータを破棄して、この学校から出ていくことだな」
そう言って、生徒会長は下着を履いて、悠々と音楽室から出ていった。そして、音楽室に残された俺は、これからのことを考えていた。チクショウッ! このまま引き下がれるかよっ! こうなったら、俺の兵隊を全員集めて、あの女をグチャグチャにしてやるっ!
俺は、なんとか立ち上がって、ズキズキと痛む股間を押さえながら、ありったけの人脈を使って、兵隊をかき集める。俺が兵隊全員に声をかければ、あんな女一人のくらい一捻りさ!
さあ、これであの女は終わりだ。この俺にこんな仕打ちをしたことを後悔するがいいっ! 俺はそのまま俺の息が掛かった病院に連絡し、無惨に折れ曲がった俺のモノの治療へと向かった。





