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有料老人ホームについて (1)

 父が死亡した後、

母は、

実家で一人暮らしをしていた。


 二日に一度、

私が食料を届けて。


 ある日、

母から電話が有って。


 「とうとう、

ガス料金を、

六十万円請求された」

と、

自暴自棄な笑い声で、

言い出した。


 ガス代六十万円?


 母は、

ボケている。

夢と現実の区別が、

つかない。


 事実だか?

どうか?

理解不能だ。


 でも、

もし、

本当だとすると。


 私の実家は、

二世帯住宅だ。

広さが、

255平米も有り、

ファミリー向けマンションの約四倍の

広さ。


 父が、

二軒目に建てた家だが、

建造されて四十五年間、

一度も、

二世帯が、

入った事は無い。


 父は、

十二人兄弟の十一番目で、

母は、

五人姉妹の四番目。

二人とも、

親の面倒を看なくても良い立場だったので、

先を見ようとは、

しなかった。


 私が、

この文章を書いているのも、

これが、

動機となっている。

苦労して建てた家も、

計画立案能力が無かったため、

全てが、

お荷物になってしまった。


 その二世帯住宅の二階だけに、

母は住んでいた。

ガスの施設は、

一階に有る。

もし、

一階中に、

ガスが充満していたら?


 私は、

慌てて、

実家へ、

向かった。


 実家に着いてみると、

本当に、

ガス代六十万円の明細が、

届いていた。


 その明細と、

ガスのメーターを見比べてみると、

今までの総使用量が、

一ヶ月分の使用量として、

請求されていた。


 結局、

ガス会社の社長が、

謝罪に来たが、

その社長は、

父の葬式に、

来てくれた人だった。


 父が死ぬと、

世の中は、

こんなものなのか?

と、

思った。


 また、

こんな事も、

有った。


 母から電話が有って、

「風邪を引いたんだって?」

と、

言われて。


 この時に、

私は、

気付くべきだった。

私は、

今まで、

一度も、

「風邪を引いた」

と、

母に、

言った事は無い。


 心配されるのが、

嫌だし。


 それに、

私は、

滅多に、

風邪を引かない。


 私は、

透析患者で、

本来なら、

すでに死んでいるはずなのだが。

当然、

免疫力とか、

落ちているのだが、

風邪も引かないし、

頭が痛くなるとか、

体調が悪くなる事も無い。


 性格的にも、

私は、

今まで、

愚痴や弱音を、

人に吐いた事は、

一度も無い。


 この「風邪を引いたんだって?」を、

スルーした次の日、

透析から帰ったら、

携帯の着歴に、

警察からの電話が、

幾つも、

残っていた。


 慌てて、

警察に電話すると。


 「○高ですか?」

と、

聞かれた。


 警察の説明に拠ると。


 県内のオレオレ詐欺の

被害額の六割が、

○高出身者の母親なのだそうだ。


 私の母も、

三百万円騙し取られそうになり、

自力では、

銀行に行けないので、

母の妹の五女に、

頼んだ。

その五女が、

警察に通報してくれた御陰で。


 運が、

良かった。


 もし、

母が、

その前年に、

大腿骨を、

骨折していなかったら?


 銀行が近くに無い

田舎に、

二軒目の家を建てなかったら?


 その時になって、

初めて、

オレオレ詐欺の犯人が、

私との声の違いをゴマカすために、

風邪を引いている設定にしていた事に、

気付いた。



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