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第243話:メンバー会議。



 で、だ。問題は今回のシュマル行きに誰を連れていくか。


 リリアの自宅にてメンバー会議を開いたところ、レナはイリスの件を気にしているのか、「今回はお留守番してるよ」と控えめなお言葉。


「お前のせいじゃない。あまり気に病むなよ? イリスは俺が弱かったせいであんな事になったんだ。必ず連れ戻すから、帰ってきたらまた仲良くしてやってくれ」


「……うん、ありがとう。でもミナトもあまり自分だけで背負い込まないでね?」


 レナはそう言って一度俺をぎゅっと抱きしめてから、恥ずかしそうにとてとてとリビングを出て行った。


 今更あれくらいで恥ずかしがるとは思わなかったのでなんだか新鮮だった。


「ミナト、私は絶対ついて行くから。必ず君を守ってみせるゾ☆彡」


「お、おぉ……頼もしいな。俺もティアがきてくれるなら心強いよ」


 何せ初代勇者だからなこいつ。

 エクス相手に手加減できるほどの使い手なのだからこれ以上の戦力は無い。


「ごしゅじん、今回はシュマルなんですよね?」


「ん……? あぁ、俺達が一時期住んでたあのシュマルだよ。お前も来るか?」


 どうしてそんな言葉が出たのか分からないけれど、シュマルに行くのならネコも一緒だろう、なんて意識があったのか、自然とその言葉が口から出ていた。


「うにゃ……いいんですか?」


「いいさ。それに今のお前はアルマの力も使えるんだぞ? 足手まといなんかじゃないだろ」


「え、えへへ♪」


 ネコが喜びのあまりその場でぴょんぴょん飛び跳ねる。意外と可愛い所もあるもんだ。


「じゃーあとは俺様だな!」


 今までこっちの話なんかまったく興味なさそうに野菜を齧っていたゲオルが突然挙手。


「ダメです。貴方が来ると一気に話がややこしくなります。今回は特に国同士の関係を悪化させる訳にはいかないんですよ? この前みたいに勢いで竜化されても迷惑です。貴方はその辺の事情をきちんと考えて行動する事が出来ますか? 自信を持って約束できるというのですか?」


 突然ネコがアルマに入れ替わり、怒涛のダメ出しをゲオルに浴びせた。


 ゲオルはその言葉を聞き、最初は額に血管を浮かべ怒りの表情だったものの、後半はなんだかしおれてしまい、縁側にいるおじいさんみたいになってた。


「……やめとくわ。俺はどうせ畑を耕してるのがお似合いのドラゴンさ……」


「ゲオル、今回はいろいろ事情が複雑だからごめんな。でもいざ力を貸してもらうって時には大暴れしてもらうからその時は頼んだぜ? 秘密兵器は取っとかないと勿体ないだろ?」


「お、おう任せときな! 何せ俺は秘密兵器だからなギャハハハ!」


 ゲオルはご機嫌な様子でガニ股で歩きながらリビングを出て行った。多分畑仕事に戻ったんだろう。


 その様子を見ていたアルマが眉間に皺を寄せながら唇を尖らせる。


「貴女もゲオルを乗せるのが上手くなりましたね」


「いやいや、実際あいつにも期待してるのさ」


「……まぁいいでしょう。馬鹿となんとかは使いようと言いますしね。私はしばらく見守るとしましょう」


 それだけ言ってサッと帰っていった。

 ネコとも随分馴染んだようで、ネコはネコで俺みたいに脳内会話をして笑っていた。


 はたから見ると脳内会話中はあんな感じなのか……軽くヤバい奴だな……気をつけよう。


「もう一人くらい誰か連れて行こうと思うんだが……我こそはっての居ないのか?」


 いつもならガンガン連れていけと騒ぐ奴等も何故か大人しい。


「ジオタリスはどうだ?」


「いや、シュマルに行くってのもいろいろ面倒そうだけどそれ以上に勇者と六竜二人に混ざる気にはなれねぇよ」


 あぁ、そういう事か。

 ポコナですらロリナと二人で隅っこであやとりして遊んでるくらいだもんなぁ。

 連れて行くわけないが、普段なら騒いでいてもおかしくないのに。


 アリアでも居れば真っ先に名乗りを上げそうなものだが、今はダリル城に行ってライルの手伝いをしているらしい。

 王になりたてだから何かと大変なんだろう。


 あとは……イリスがさらわれたっていう事実がみんなに警戒心を持たせてしまったのかもしれない。


 イリスほどの強さがあってもこんな事になる。

 俺が付いていたとしても安全とは限らない。

 だからこそ不安要素がある奴はしり込みしてしまう。


『どちらかと言うと君に迷惑をかけたくないんだと思うわよ』


 なるほどね、何かあったらまた俺がふさぎ込むとでも思ってるのかね……。

 まぁ、実際そうなるかもしれないが。


 ……って、おぉ!?


『何よ騒がしいわね……』

 おま、随分さらっと復活したな……。


『今回は以前と比べたらそこまでの無茶してないもの。ただ表に出てくる力を割けなくなっただけ。イリスの事だってちゃんと見てたわ』


 そうか……すまん。


『いいわよ。私だって怒ってるし辛いし悲しいけれど、それはミナト君だって同じだもの。きっと……あの時の選択は間違って無かったって思える日が来るわ』


 ……お前もネコみたいな事言うんだな。


『当たり前じゃない。もう私は君なんだから。君も私。イリスは私達の娘よ。必ず取り返しましょうね』


 おう。絶対にだ。


「おー、ミナトじゃーっ♪ 儂が生きてるのはミナトのおかげじゃよーっ♪ ありがとなのじゃーっ!」


 奥の部屋から元気な声と共にリビングに現れたのは、ラムだった。


 シルヴァが用意してくれていた車椅子に乗り、ヨーキスが後ろで押している。


「ラムちゃん……その、なんていうか……」


「なぁにをしょぼくれた顔しとるんじゃ? さっきも言ったが儂の命があるのはミナトのおかげじゃ♪ 感謝こそすれど怨みなど出て来るはずもあるまいよ」


「……君は、強いな」


 こんな状態で俺に感謝の言葉しか出てこないのは凄いと思う。しかもそれが一切嘘に見えない。事実本音なんだろう。


「儂はいつだってさいきょーなのじゃ♪ ……それはそうといったい何を迷っておるんじゃ?」


「あ、あぁ……次の仕事に行く面子をな」


「ふむふむ、なるほどのう。それなら儂がついて行ってやるのじゃ♪」


 ……えっ?



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