21話:こうふく勧告*6
「蜘蛛の巣じゃなくて綿飴にしておけばよかった」
王様が温泉に入って宿の部屋で休んで一休みするまでの間、僕もお風呂に入って着替えることにした。
のだけれど……蜘蛛の糸が絡まって、とれない。服にも髪にもべったりついて、落とすのが大変だ。こんなことなら、蜘蛛の糸じゃなくて綿飴にしておけばよかった。
「……綿飴に包まって身動きが取れなくなってるトウゴ君って、どう考えても緊張感が無いわよ」
そ、そっか。じゃあ、蜘蛛の糸でよかった……。うう、でもこれ、中々落ちない。うーん……。
「もう諦めてあんたも国王陛下みたいに丸洗いしちゃいなさいよ。洗ったげましょうか?」
「け、結構です。……あのさあ、ライラ。丸洗いって……その、君、自分の性別、分かってる?」
丸洗いしてあげましょうか、って、その……その、そういうの、よくないと思う。ライラは女の子なんだし、その……。
「分かってるわよ。私は女だわ。それであんたは精霊でしょ」
……えっ。
「……っていうのは半分冗談にしても」
えっ、半分冗談、って、じゃあ、もう半分は……?
「そのふわふわ具合で男扱いしてもらえると思ったら大間違いよ」
……うん。
すごく、手厳しい……。
「あと……あんたが髪の毛に絡まった蜘蛛の巣をとろうとして頑張ってるの見てたら、なんか……」
ちょっと傷つきながらライラの方を見たら、ライラは、神妙な顔で、言った。
「……なんか、いいのよ」
何が!?
王様の身支度には結構時間がかかるらしいので、僕らは森の騎士団の兵舎をお借りして待つことになった。そこで僕はちょっとゆっくりお風呂に入って、蜘蛛の巣を落としてもらうことにした。
……いや、ライラに、じゃなくて、チャコールグレーのふわふわに!
お願いしたら、快く引き受けてくれた。(と思う。何せこの靄、ふわふわしているだけだから、表情とかは無いんだ。けれどぴょこぴょこ動いていたから、多分、ご機嫌だったんじゃないかと思う。)
ついでに僕もチャコールグレーのふわふわをお風呂に入れて丸洗いして、一緒に温まってから出た。……そうしたらチャコールグレーのふわふわは、ダークグレーのふわふわ、ぐらいになった。どんどん白くなっていくなあ。よしよし。いい子だ。
そうしてすっかりリフレッシュして、着替えて、昼寝なんかもして待っていたら……夕方になってようやく、お呼びがかかった。
「国王陛下がお待ちだ」
王家の兵士の人も鎧についたマシュマロとか飴とかチョコレートとかを綺麗にしたらしくて、ちゃんとした格好になっていた。ただ、ほのかに甘い香りがする。おいしそう。
「ついてこい」
「はい」
ということで、僕らは王様が待つ宿まで向かうことになった。
……いや、宿って、別に、王様の家って訳でもないんだし、そこに出向く、っていうのもなんというか、ちょっと変な気が……いや、いいんだろうか?
僕らが到着すると、そこで僕らはある程度分けられた。
森の騎士達から事情を聴くのは王家の兵士達が担当するらしい。フェイは彼のお父さん達と一緒に、魔法使いらしい人達と一緒だ。
そして僕は……1人きりで、別の部屋に通される。
「入れ」
「お邪魔します」
兵士の人に促されつつ、挨拶して部屋の中に入ると、そこにはラージュ姫と……立派な髭を生やした、初老の男性が待っていた。成程。彼が王様か。
「お前が、トウゴ・ウエソラか」
王様はじろりと僕を見ると、怪しいものを見るみたいな顔をした。別に怪しくないよ、僕。
「はい。上空桐吾です。あなたが王様ですか」
「……如何にも、余が国王フリッサ・アウル・フェニオスだが」
成程。僕の予想は当たっていたらしい。まあ、確かに、部屋の真ん中の椅子にどっかり座っている一番偉そうな人が王様、だよね。うん。聞かなくてもよかったかもしれない……。
「まず前置いておくが、お前には我が娘、ラージュ誘拐の嫌疑が掛けられている」
「えっ……あ、はい」
「……落ち着いたものだな」
「いや、だってこうして面と向かって言われているっていうことは、もう、疑いは晴れているっていうことでしょうし……」
ちら、とラージュ姫を見てみると、ラージュ姫は王様の後ろでちょっと微笑んで、こくん、と頷いた。よかった。とりあえず、今の僕に『ラージュ姫誘拐容疑』を掛ける余裕は、今の王様達には無いらしい。
「……成程。肝は据わっているようだ」
あ、はい。それほどでも。
……王様はここで僕が驚いたり焦ったりしなかったのがちょっと想定外だったみたいで、黙ってしまった。アージェントさんだったらこんなに黙らないだろうな、と思ったら、ちょっと緊張がほぐれた。間接的にありがとうアージェントさん。
そうして、しばらく、沈黙が流れた。
その間、ちょっとオロオロしながら、ラージュ姫が話しかけてくる。
「あの……お怪我はありませんでしたか?」
「あ、はい。蜘蛛の糸でぐるぐるになっていただけだったので……」
「それはよかった」
ラージュ姫はほっとしたような顔をしている。多分、『繭を切り開くときにうっかり中身まで斬っちゃわなかっただろうか』って心配してたんだと思う。
「その、改めまして、身分を偽って町に住んでいたことをお詫び申し上げます」
「あ、いえ……おかげで僕も助かりましたし」
それから改めて、確認。そうだ。ラージュ姫は身分を隠して自らの意思で町に住んでいた。僕は彼女の身分を知らなかった。それでオーケー。
「ジュリアさんはお姫様だったんですね。それから勇者にもなった」
「はい。精霊様のおかげです」
ラージュ姫はそう言ってちょっと恥ずかしそうに笑う。僕もお礼を言われてちょっと照れる。
……そういう話をしていたら。
「トウゴ・ウエソラよ」
王様がやっと、喋り始めた。
僕とラージュ姫は会話を中断して、王様の方を見る。すると王様は、じっと僕を見て、言った。
「……単刀直入に問おう。もしや、お前は……精霊様の寵愛を受けた、巫のようなものか?」
「……かんなぎ?」
「精霊に仕え、森の町を取り仕切っているのか、と聞いている」
……あー、ええと、これ、いいのかな?でも、ここで否定しても話がややこしくなるだけだし、うう……。
「ま、まあ、そういうような、もの、です……」
……僕自身が精霊です、とは、やっぱり、言いにくいよ。精霊がこういうちょっと頼りない奴だって思われたら、この森がいじめられるかもしれないし……。
僕がそう返事をすると、王様はちょっと嬉しそうな顔をした。結構この人、顔に出るタイプなんだな。
「ほう。ではお前は、精霊様と対話することができるのだな?」
「ま、まあ……」
自分自身との対話は、よくやるよ。考え事は嫌いじゃないから。
なんか違う気もするけれどそう答えたら、王様はまた嬉しそうに頷いた。
「ならば、精霊様にそのお力を貸していただけるよう、お前から頼め」
「えっ」
人が嬉しそうなのは嬉しいけれど、でも、それはちょっと、嬉しくない。
「あの、精霊様の力を貸す、というのは、具体的にはどういう……?」
なんとなく何を言われるか分かるような分からないような状態ではあるのだけれど、念のため聞いてみる。すると。
「詳しくは言えんが、この国の危機なのだ。精霊様のお力があれば、ラージュなどではなく、第一王子オーレウスや余自身を勇者とすることもできるのだろう?」
あ、やっぱり王様、ラージュ姫じゃなくて自分や第一王子が勇者の方がいいのか。うーん……。
……『できるのだろう?』と聞かれると、まあ、はい、と言える、かもしれない。ラージュ姫を勇者だとするなら。うん。
けれど、王様の言うところの『勇者』は、精霊の力じゃ工面できないものだから……誤魔化すしかない。ラージュ姫のあれは、はりぼてみたいなものです。
「そう言われても……精霊様は、その、考えがあってラージュ姫を勇者に選んだんだと思いますよ。あなたや、ラージュ姫のお兄さんとかじゃなくて……」
なので僕がそう言うと、王様は明らかに機嫌を悪くしたような顔をした。
「余の命令が聞けんのか?」
「いや、そういうわけじゃあないんですけれど……」
聞けないというか、聞きたくないだけだから、違うんだけれど、でも、そういう話でもないんだよな、これ。うう……。
「とにかく、話すだけ話してみるように。精霊様への供物が必要ならば用意する」
王様は背もたれにふんぞり返って、堂々と僕を見下ろしてくる。うう、こういう人、苦手だ。アージェントさんとかも苦手だけれど、あの人はまだ、対話するっていう姿勢は見せてくれた。あの人、やっぱりああいうところ、良い人だったんだなあ……。レッドガルド領もいじめないでくれているし……。
「或いは、精霊様に直接引き合わせてもらいたい。その方が手間が無いだろう」
いや、手間とかそういう問題じゃないんだけれど、うーん。
……どうしようかな。
「どうした?精霊様には会わせられんと?」
「はい。ちょっと、ごめんなさい」
精霊に会わせろ、って言われてしまうと、僕が会う以外にはあの鳥に頑張ってもらうしかないのだけれど、僕ならともかく、鳥がいじめられるのは嫌なので、ここは断ることにした。
「な、なんだと」
当然、王様は気を悪くしたみたいだった。けれどしょうがない。何でもかんでも相手の希望通りにしていたら、大事なものを全部なくしてしまう。
「分かっておるのか?お前には、ラージュ誘拐の嫌疑が……」
「僕はやっていません。ラージュ姫も証言なさってるんじゃないですか?」
王様は僕に脅しを掛けるようにそう言ってくるのだけれど、ラージュ姫とはもう仲良くなったから、ここは大丈夫だ。王様の後ろで、ラージュ姫がちょっとにっこり笑っている。うん。ありがとう。
……しかし、もしかしてこれ、当初の予定だと僕に『お前のラージュ姫誘拐の罪をなかったことにする代わりに精霊様に会わせろ』ってやる予定だったんだろうか?やだなあ。
「……誘拐していないにしろ、本当に、王女に気付いていなかったと?第三王女とはいえ王女が町の中に潜んでいたというのに、それに気づかず報告も無かったとは、どういうことか」
「僕、ラージュ姫を知らなかったので……」
「だが、ラージュは森の町に住むにあたって、レッドガルド家には書類を提出したのだろう?それでも見過ごしたのか?これだからレッドガルド家は……」
うーん……それを言われてしまうとちょっと困る。
僕は『ラージュ姫なんて知りませんでした』って言っても、通ると思う。貴族でもなんでもないから。
でも、レッドガルド家についてはそうじゃないから……確かに、ラージュ姫を見逃したことについて言及されると、ちょっと弱い、かもしれない。
勿論、それがこちらの非だったとは思わないし、そこで何かを譲歩するっていうことも、するつもりは無いのだけれど……。
「……ラージュを故意に見逃し、更に精霊様の力を自分の領地の為にしか使わなかったのだ。レッドガルド家は処罰の対象になるぞ。その次はお前だ。それでもお前は王の命令に背くのか」
……うう、こう言われてしまうと、やっぱり、うーん……。僕、レッドガルド家のことまで決定できるわけじゃないんだよ。困ったなあ。
困って、困って、僕は……でも、解決策は分かってるんだ。
困った時は誰かに相談した方がいい、っていうことをこの世界に来てから学んだ。それから、僕の周りには、今、相談できる相手が沢山いるんだ。
「あの、それ、レッドガルド家と相談してから決めてもいいですか?」
なので僕は、そう申し出る。
……けれど。
「ならん。その必要も無い」
王様はそう言って、それから……とんでもないことを、言った。
「この森の町は王家直轄領とする。最早、レッドガルド家にはこの森と精霊様のお力をどうこうする権利は無いのだ」
「お、お父様!?何を仰るのですか!そのようなお話ではなかったはずです!」
僕が茫然としていたら、ラージュ姫が先に王様へ食って掛かっていた。それを見ながら僕は茫然と、『美人さんが怒ると怖いって本当だよなあ』とか考えてた。
「ラージュ。お前は口を出すな!……いいか、トウゴ・ウエソラ。余にはお前をこの町から追い出すこともできる。だが、お前が精霊様の寵愛を受けているというのならお前を森から無理に引き離すこともなかろうと思って申し出てやっているのだぞ」
王様はそう僕に言ってくるのだけれど、僕の頭の中は別のことでいっぱいだ。
……フェイ達に迷惑を掛けるかどうかっていうのは、もう、この際、置いておこう。
本当にこの町が王家直轄領にされてしまうっていうのなら、フェイ達にはもう関係無くなる。逆に、この町がまだレッドガルド領だっていうのなら、まだもがかなきゃいけない。
……僕は、この場所が好きだ。皆が居て、僕が僕でいられる、この場所に居たい。そのためにこの場所を、守らなきゃいけない。
「精霊様の力を余に授けるよう、精霊様に」
「あの」
王様の言葉に口を挟んで……僕は、席を立ちあがった。
「……その、精霊様は、ちょっと……いや、結構、かなり、すごく、お怒りでして」
……僕は、怒らなきゃいけない。
この森は僕だ。僕はこの人のものじゃない。一緒に居る人ぐらい、僕が選ぶ!
立ち上がったのは、『怒る時には上から見下ろして喋った方がいいぜ』って先生が前、言ってたから。
それから、自分なりになんとか、考えて、考えて……喋る!
「精霊様は、レッドガルドの子孫をいじめる奴らに力は貸したくないと仰っておられます」
「い、いじめるだと?何を。お前はまだ年若いからこそ分からぬのかもしれんが、貴族には王命に従う義務がある。それを放棄しているのはレッドガルド家だ。そして、お前までもが、レッドガルド家に倣って王命に背く必要は……」
「あと、うるせえばかハゲ、ぼけなす、うっかり大事な書類にお茶零せ、って言ってます!」
「は、はげ!?」
『口喧嘩はとにかく手数だ!黙るな!困ったら小学生並みの悪口で応戦しろ!案外しょーもない悪口でも、挟まると相手は混乱して中々いいぞ!あとなんとなくちょっと場が和む!』って先生が言ってた。僕は先生よりずっとずっと口が回らないけれど、でも、教えてもらった事は全部覚えてるよ。
「……余はこの世界の為、何としても精霊の力が」
「そうじゃないってことぐらい知ってるんですよ」
じっと王様を見下ろすと、王様はここでやっと、黙った。
……『相手が黙ったら、こっちも黙っていい。じゃなきゃ言葉が染み込まない。煮物だってそうだろ?煮込みっぱなしよりもちょっと火を止めて冷ました方が、より味が染み込む』って先生が言ってた。
だから僕も黙って、それから、もう一回席に座って、王様をじっと見て、話す。
「……そもそもこの森は、当時の王家が当時のレッドガルドに嫌がらせみたいに下げ渡したものだ。精霊が住んでいる森だ、なんて言っておきながら、あなた達は何もしなかったのに。……それを今更、何の罪もないレッドガルドの子らから奪い取ろうなんて、虫が良すぎる。そうは思いませんか?」
王様がちょっとだけ、たじろいだような、そんな気配があった。この人、顔に出やすいなあ。
「だから、僕らはあなたのものにならない。ここが王家の直轄領になったって、僕らは今まで通り、レッドガルドの子孫と共にあることを願っています。精霊の力だって、世界の為に使うとしても、あなたの為には使わない」
ちゃんと伝えたいことは伝えた、と思う。あとは、王様がどうするか、だけれど……。
「こ、子供が何を……」
「僕がただの子供だと思って舐めた口を利いてもらっちゃ、困る。あなた、自分で言ったんですよ。僕のこと、巫だって」
王様の呟きには答えなくてもよかったかもしれない。
多分王様は、『子供が何を』って呟いて、自分で自分に『こいつはただの子供だ』って言い聞かせようとしたんだろうから。
でも、そうしなきゃいけなくなった時点で、僕のことをもう『こいつはただの子供だ』とは思ってないんだろうから、わざわざ言わなくてもよかったかもしれない。……先生、煮物に味を染み込ませるのは難しいです。
「そのような口を利いて……許されると、思っているのか?いくら年若くとも、お前は……」
「じゃあ、僕は子供なので拗ねます。もう絶対に口利いてやらない」
……ということで、僕はあとはじっくり、待つことにした。
そして心の中で、フェイ達に助けを求めた。
だ、誰か助けて……。とりあえず色々な約束はさせられなかったし、お断りもちゃんとしたけれど、でもこの状況、どうしていいのか、もう自分でもわからない!
「……あの、お父様」
助けてくれたのはラージュ姫だった。ありがとう!
「ひとまず、先程のお話の内容ですが……」
「忘れてなどいない!」
ラージュ姫が何か言うと、王様はそう、苛々したように言って……そして、咳ばらいを一つすると、僕から微妙に目を逸らしながら、話し始めた。
「……ま、まあ、今日のところは無礼講ということで構わん。元よりこれは非公式の会だからな」
「よかった。ならここがレッドガルドのものじゃなくなるっていう話も非公式ですね!」
「う、うむ……」
とりあえずこれでお互い、無かったことにしましょう、っていうことだ。分かった。それに乗ろう。
「そして、褒美を……お前に、与えようと思う」
……えっ、でもそれはちょっと、よく分からない……。
「……ラージュに聞いたが、この町が先日魔物に襲われた際、まだ勇者としての力を授かっていなかったラージュを救ったのは、トウゴ・ウエソラ。お前だそうだな」
……え、あ、うん。そ、そっか。ええと……多分、ラージュ姫は、詳細を何も話してないんだろうな。『コウモリに風船をくっつけた』っていうのが『救った』ことになるなら、その、ちょっとおかしな話になってしまうし……。
「であるからして、先程までの内容とは全く無関係のこととなるが、褒美を何か、与えようと思う。うむ……勿論、先程までの内容とは関係の無いものを、ということになるが」
ラージュ姫が後ろでにこにこしている。多分これ、彼女の発案なんだろうな。
「何が良い。お前は絵を描くらしいな。魔法画の絵の具は高価だと聞くが、それを一揃い、どうだ」
うーん、絵の具はいらない。自分で幾らでも出せるから。
だから……。
「……あの、なんでもいいですか?」
「無論、内容によるが。だが、絵に関わるようなものなら大抵は叶えてやろう」
ちょっと尻込みするような気持ちで聞いてみたら、王様が明らかにほっとしたような顔をした。うん。口、利くよ。流石に子供じゃないし、関係無いところでは拗ねないよ……。
「絵の具ではなく、師が良いか?王都の高名な画家の下で学べるよう取り計らってやっても良い。他には……」
王様は色々と提案してくれたけれど、それら全部、惹かれない。
どうしようかな。折角言ってきてくれているんだし、突っぱねるのもどうかと思うし……。
何か無いかな、と思って、ちょっと部屋の中を見回して、でも当然だけれど、家具ぐらいしか無いし、この家具、僕が描いて出した奴だし、後は僕と、王様と、護衛の人達と、ラージュ姫……。
……あ。
ほしいご褒美、あった!
「あの」
「な、なんだ」
僕は嬉しくなって、王様に申し出た。
「王女様を描かせてください!」
やった!これで、王様公認で王女様をモデルにできる!やった!




