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今日も絵に描いた餅が美味い  作者: もちもち物質
第五章:浮島が浮く湖がある大陸より愛をこめて
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13話:嵐を呼ぶコンクール*7

「それにしても変な天国ね……やっぱり地獄なのかしら……?だとしたら生温い地獄よね……?なら天国?それともどっちでも無い場所に来ちゃったのかしら……?」

 僕らが森に戻ると、鳥が馬小屋の真ん中で自慢げな顔をしていた。

 そしてそのお腹の下で、ライラが温められながらぼやいていた。

 ……地獄じゃないよ。天国でもないよ。ここ、ただの森だよ。




「ライラを連れてきてくれたんだね。ありがとう」

 僕が鳥を撫でると、鳥は胸を反らして、キョキョン、と鳴いた。

 ……そして、ライラを温めていた鳥は、ちょっと体をずらして、ライラをお腹の下から出す。

「……ええと、おはよう」

 僕が挨拶すると、ライラは目をぱちり、と瞬かせて……それから、へにゃ、とした笑い方をした。

「もしかしてあんた、天使様か何かだったの?道理で変なやつだと思ったわ」

 ライラは冗談なのか、本気で言っているのか、そういうことを開口一番に言ってきた。いや、まあ、びっくりしたよね。ごめん……。

 そんなライラの周り(つまり鳥の周りってことになるけれど)には、馬達が寄ってきて、『大丈夫?大丈夫?』と言うかのようにライラを覗いている。どうやら、ライラは馬に人気らしい。よかった。

「それで、ここは天国?地獄?どっちでもない場所?」

「ええと……僕の家の隣」

「……つまり天国?」

「いや、違うってば……」

 ライラは鳥の下から這い出てきて、鳥の前に座り直した。そうすると、サイズ感がなんとなく、鳥の雛だ。

「私、死んだのよね?」

「生きてるよ。ほら」

 とんでもない事を言うライラの頬をつついてみたら、彼女は何とも言えない顔をした。うーん……さて、困った。


「ええと……なんでライラを連れてきたの?」

 僕は鳥に聞いてみた。だって、ライラを連れてきたのは鳥だ。僕としては願ったり叶ったりだけれど、鳥と相談していたわけでもないし、鳥の前でそういう話をしたわけでもないから、ライラがここに居る理由を説明できるのは、この鳥だけなのだけれど……。

 けれど鳥は、なんとなく嬉しそうな顔で、キュン、と鳴くだけだ。

 ……こいつ、やっぱり小憎たらしいぞ。




「……ってことで、ここはレッドガルド領の森の中。トウゴの家のお隣さん。そんでもって、この鳥はただの鳥。説明は以上だな」

 それから僕は、リアンとアンジェにただいまを言って、2人も連れてきて、僕の家でお茶を飲みつつライラに諸説明を行った。

 説明は大体、フェイがやってくれた。いや、なんでって、この中で一番ライラが信用しているらしいのがフェイだから。ライラからしてみればフェイは敬うべき貴族らしくて、フェイの話を大人しく聞いている。

 ついでに、ライラからしてみると、僕は『あの世の住人でも納得がいくわ』っていうことらしいんだけれど、フェイはそうじゃないらしい。うん。どういうことだろう……。

 ま、まあ、それはいいや。とりあえず、ライラが『どうやら自分は死んだわけでもなく、ただレッドガルド領の森に謎の鳥によって連れてこられてしまったらしい』っていうことだけ分かってくれれば……。


「……そうですか。分かりました。つまり私、このまま判決通り、住み込みで働く、っていうことですよね?」

 そしてライラは、さっきまでとは打って変わって、しっかりした様子でそう、言うのだけれど……。

「あー……まあ、そうなんだけどよ」

 フェイはちょっと困ったように頭をがしがし掻いた。

「お前に用事があるのは、多分、俺じゃなくてトウゴなんだよな」

「うん」

 フェイに話を譲られたので、僕からライラに話すことにした。

「あの、レッドガルド家のお屋敷じゃなくて、ここに住まない?」


「……ここに?別にいいけれど。藁があってふわふわしているし、そこまで寒くはないし」

「いや、違うよ。ここっていうのは森のことだよ。馬小屋に住めってことじゃないよ。君の家はまた別に建てるよ!それで、この森に住んでもらって……」

 ……そこで僕、困ってしまった。

 僕はライラと話したいし、彼女が描く絵をもっと見たい。それから、彼女を描きたい。けれどこれ、どういう風に仕事ってことにしたらいいんだろう?

 悩んだ。とても悩んだ。仕事。仕事。仕事……彼女が金貨1000枚分の働きをしたって納得できるような、そういう……。

「……とりあえず、モデル?」

「な、なによ、とりあえず、って。というか、モデルって、なんで私が?」

「後は……僕の、相談役……っていうのも違う気がするし、ええと……?」

 とりあえず言葉にしてみるけれど、今一つ、上手くいかない。なので僕は、正直に聞いてしまうことにした。

「ええと……僕、君と話したいし、君の絵を見たい。あと、君を描きたい。けれどそれを仕事ってことにする方法が思いつかないんだけれど、何かいい案、無い?」




「……それが仕事?」

 ライラが呆れたような顔をしているのだけれど、僕としては頷くしかない。はい。それが仕事です。

「来るにしても、もっと別のが来ると思ってたわ」

 そっか。別の。……別の仕事って、なんだ?

「そもそも君、何ができるんだろうか」

「農作業はある程度できるわ。男よりは力が無いけれど。小さい畑くらいなら、1人でできる。あとは糸紡ぎとか機織りとかなら、ある程度は。刺繍とかお針子の真似事もある程度はできるわよ。レース編みとかも。あとは、そうね、家事は一通りできる。メイドとして雇われてたこともあったから」

 すごい!つまり、手工芸の類ができるってことか!

 機織りっていうと、テキスタイルデザインとか、そういう分類になるのかな。すごいな。僕、そっちの方は全然やったことがない。一度やってみたい気もする。

「後は……そうね、絵の下準備の手伝いとかは、できるわ。魔石を粉にしたりとか。スライム液を調整したりとか」

「君、魔法画をやるの?」

「え、ええ。貴族の家では大抵、魔法画を描かされてたから……」

 なら彼女の仕事は決まりだ!

「じゃあ、僕に魔法画を教えてほしい!それから、機織りとかも!刺繍も見てみたい!僕の先生になって!」


 ……ということで、ライラの仕事が決まった。

 彼女の仕事は、小さい畑の整備。なんか、新鮮な野菜が欲しいんだって、クロアさんが言ってた。レッドガルドの街まで買いに行くのは大変だから、近くにあるといいな、ってことらしい。これは、リアンも一緒に手伝うって言ってた。

 それから、家事のお手伝い。今はクロアさんが僕らの分全部やってくれてるから、もう1人、家事をやる人が居てもいいよね、っていうことになった。

 そして……僕の先生だ!

 僕に絵や手工芸の類を教えてくれる先生。特に、魔法画については僕、全くの素人だから、是非、教えてもらいたい!

「……いいのかしら、こんなので」

 ライラはなんとなく釈然としない顔をしているのだけれど、すごくいいと思うよ!




 それから、ライラはクロアさんに連れられて、一緒にレッドガルドの街へ行くことになった。ついでに、リアンとアンジェも一緒に。あと、帰宅するフェイも一緒に。

 要は、生活用品の買い出しだそうだ。彼女、着のみ着のまま鳥に攫われてきてしまったから、着替えも何も持ってないんだ。

 だから、お給料から先払いっていうことで、彼女の生活用品を揃えに行った。ついでに、リアンとアンジェの服とか、食材とかも買いに行ったらしい。

「……馬がいっぱい飛んでった」

「クロアは案外、ペガサスに好かれているからな。ライラも馬とは気が合うらしい」

 フェイはレッドドラゴンで、セレス兄妹は鸞で飛んでいくのだけれど、クロアさんとライラは適当なペガサスを1匹ずつ捕まえて、それに乗って飛んで行った。もしかしたら、クロアさんやライラのお買い物用に丁度いいサイズの飛ぶ生き物、必要だろうか。後で聞いてみよう。

「……今回、一角獣の食いつきがいいよね」

「まあ……こいつらは女好きらしいからな」

 ちなみに、一角獣達はライラを気に入ったらしい。クロアさんの時よりも、アンジェの時よりも、ライラが一番食いつきがいいかんじ。とりあえず馬は全員、すごく好意的だ。最初から。……角が生えてるやつらは、僕にはあっさりした対応のくせに。

 ……ちょっとやきもち。


 そして、皆が買い物に行っている間に、僕らはライラの家の整備をすることにした。

 ライラの家は、今までに用意してあったお客さん用の家とは別に、もう一軒建てることにした。なんとなく、彼女を見ていたら、イメージが湧いてきてしまったから。

 まず、外観は藍色の屋根に、落ち着いたブラウンの壁。ちょっと都会風な建物にしてしまったけれど、これが案外、森の中にも馴染む。

 窓枠とか玄関の外灯とかの金属部分は、燻した金属の色。艶の少ない黒にした。シックなかんじ。

 そして内装は、やっぱりシックなかんじに仕上げてしまった。ダークブラウンの、装飾が少なくて実用的なかんじの家具を一揃い。金具は黒っぽく落ち着いた色で。絨毯は深い藍色で、白と金の模様が入っているもの。カーテンは白のレースカーテンと薄手のアイボリーのカーテン、そして遮光できるような厚い藍色のカーテンだ。

 ……一番大事なのは、寝室でも客間でも居間でもない部屋。

 ほとんどものを置いていない部屋だけれど、椅子とイーゼルと小さな机を置いてある。あと、イーゼルにはとりあえず、キャンバス。棚には一通り、水彩と油絵の道具を用意しておいた。他の道具は分からないから、彼女に聞いてから買い揃えるなり描き揃えるなりしようと思う。

 そして何より大切な……ライト。ほら、静物画を描くなら、途中で光の具合が変わったら駄目だから。だから、遮光できるカーテンが必要だし、位置が動かないライトが必要なんだ。今回は天井にいくつか、作り付けのライトをつけてしまった。勿論、火を点けるやつじゃなくて、魔法で動くやつ。安定して光が出るから、絵を描くならやっぱりこっちだ。

「大分揃ったな」

「うん」

 絵を描く人の部屋、造りたかったんだ。だから満足した。

「帰ってきたら驚くかな」

「だろうな……」

 ……もうちょっとゆっくり準備した方がよかっただろうか。まあ、いいか。




「ということで、ここが君の家です」

 レッドガルド領の町から帰ってきたライラに彼女の家を見せたら、驚きのあまり、荷物を落とされてしまった。

「……え?こんな所に、家、あった?」

「あった」

 あったよ。あったことにさせて。

「中はこういうかんじなんだけれど……」

 それから内装を見せたら、また、ライラに愕然とされた。

「い、いつ用意したの?」

「も、元々あったよ……?」

 元々あったっていうことにさせてもらって、内装を見てもらう。リビングダイニングキッチンは小さめ。寝室はほどよく狭く。客室を一応用意してみた。あと、物置にするなり、書斎にするなりできる部屋が1つと、絵を描くための広めの部屋。あと2階。

 ……こういう家なのだけれど、ライラは、黙って部屋を見て回って、そして一通り見た後で……すごく心配そうな顔で、僕に言った。

「あの、これ、本当に私が住んでいいの?」

「うん」

「1人で?」

「うん……あ、別に、同居したい人が居ればしていいと思うし、猫とか……は居ないけれど、兎だったら森に居るから、飼おうと思えば、飼えるかもしれない。勿論、気の合う兎が居ればだけれど……」

 答えても黙ったままのライラを見て、僕は、ちょっと焦る。

「あの、何か足りないものがあったら言ってほしい。すぐに用意するから。ええと、増築もある程度はできるし、家具とか道具とかなら、それも用意できるから……」

「え、ええと、そうじゃなくて」

 僕が焦って説明し始めたら、ライラも焦って割り込んできた。

「あの……この家の賃料って、金貨1000枚に、上乗せ、よね?……いくら?」

 ……えっ。

「あ、あの……えっと、それは……」

 どうしよう、という思いを込めてフェイを見上げると、フェイは重々しく頷いて……ライラの前に、指を1本立てた。

「毎月金貨1枚。給料から天引き。で、給料は……えーと、トウゴの世話係でトウゴの先生だろ?じゃあ、月々金貨50枚ぐらいか?」




 それからライラは、すっかり縮こまってしまった。「ここ、どうなってんのよぉ……」とか、「2年かからずに完済できるなんておかしいわ。何か裏があるんじゃ……」とか、「どうしよう、どうしよう……」とか、ぶつぶつ言っている。どうしよう、困らせてしまった。どうしよう。どうしよう……。

「……あまり気にするな。あいつはああいう奴だ。仕方がない」

「そうよ。トウゴ君はもう、しょうがないの。諦めて楽しく暮らしましょ?突然、何の脈絡もなく幸運が降ってきたようなものだと思えばいいわ。事故みたいなものよ」

「えーと、ねーちゃんもびっくりしただろ?俺もびっくりしたよ。けど、なんかさ、もう、しょうがねえから。だからさっさと諦めた方がいいぜ?」

「おねえちゃん、元気だして……?」

 ……そして、困っているライラを囲んで、森のみんなが励ましている。励まして……励ましてる?本当に?

「フェイ、僕、何か間違ったことをしてしまっただろうか」

 不安になってフェイに聞いてみたら、フェイは優しく僕の背中を叩いた。

「気にすんな。どっちかっつうと、ライラの方が今まで間違ったことされてたんだ。ちょっと恵まれねえ環境に居たから、こういうのに慣れてねえんだよ。お前だって、ここに来て絵を描いていいぞって言われて、戸惑ったんだろ?」

「うん……」

「なら、それと一緒だ。すぐに慣れるって。な?そういうことにしとこうぜ?」

 そうか。うん。そういうことなら……いいか。うん。




 ……結論から言うと、ライラは、ちょっとずつ、森に慣れてきた。

 最初の1週間くらいは、ものすごく働いてしまっていて、それこそ、家事全部やって手工芸を内職代わりにやって、編んだレースや刺繍のハンカチなんかを町で売ってお金の足しにしたり、色々やっていたのだけれど……。

 そんな生活で体に良いはずはないから、ちょっと、これはもうどうしようもないな、と思って、ラオクレスに相談した。そうしたらラオクレスが『なら、お前もライラと同じように生活してみろ』とアドバイスしてくれたから、僕もライラにくっついて、彼女と同じように生活することにした。

 ライラが働いている時は僕も内職を教えてもらってやることにした。ライラが家事をやる時は僕も家事をやる。

 ……それで、僕が絵を描きたくなったら、彼女にも描いて貰って、それで僕も絵を描く時間にした。教えてもらう時は教えてもらうし、そうじゃない時も、僕とは無関係に絵を描いて貰うことにした。じゃないと、僕が絵を描けないから。

 ……そうすると、僕を寝かすためにライラは早めに寝るようにしたし、ライラが寝るならしょうがないから僕も寝ることにした。

 ライラは毎食ご飯を食べるので、僕もしょうがないからご飯を食べることにした。

 そうしてその内、僕がライラの生活を真似ているのか、ライラが僕の生活を真似ているのかあいまいになってきて……結局、ライラは、森に慣れた。

 あと、僕はちょっとだけ早く寝るようになったし、ご飯を食べる頻度が増えた。うん。多分、良いことだ。ちゃんと寝て食べた方がいいものが作れるって、先生も言ってたし……。いや、僕らは時々、それらを飛ばしてしまう生き物でもあるのだけれど……。




 ……そして今夜も、ライラと2人で絵について話す。

「……君の竹の描き方、すごくいい」

「そ、そう?」

「うん。……デザインの勉強もしたの?」

「でざいん?ええと……ほら、抽象画の類って、下手でも『こういうもんだ』って言い張ればいい、みたいなところあるじゃない。それで抽象画ばっかりやってた貴族が居て、そいつの代わりに描くことになったことがあって……それでちょっと試行錯誤したのよ」

 ライラが描いた竹は、なんというか……抽象画、というか、デザイン、っていうかんじだ。写実的ではなくて、それがすごくかっこいい。

 真っ白なキャンバスに色濃く、藍色と黄色とで描かれた竹。いくつもいくつも重なる竹と、それの光と影の表現がすごく素敵だ。

「僕、不透明水彩でこういう風に綺麗に色が塗れないんだけれど。ムラになるっていうか……」

「何度も重ね塗りするのよ。縦横を変えて。私はこういう、不透明なかんじの方が得意だわ。それにしても……あんたの色の使い方って、こう、独特よね。ふわふわしてるっていうか」

 次に、僕の絵を見たライラがそう言う。

 ……僕、ライラにまでふわふわって言われてしまうのか。最近は少ししっかりしてきたと、自分では思っていたのだけれど……。

「それで、この色だけれど、すごいわね。こういう風に滲みって、中々出せないけれど」

「絵の具の濃さを変えてるんだ。薄い方に濃い方が強く滲むから……あと、紙は『しっとり』ぐらいの方がこういう滲み方になりやすいよ。あんまりびしゃびしゃだと、絵の具が水に浮いちゃって上手く滲みにならないから」

「へえ。今度やってみようかしら。あんたが用意してくれた絵の具、結構面白いのよね。透明なかんじで。……ええと、じゃあ、こっちは……」

 ……話していた僕らだけれど、そこで、バン、と、部屋のドアが開いた。

 そして、そこに立っていたラオクレスは……静かに、言った。

「寝ろ」


 ……ラオクレスに寝ろって言われちゃったら、僕もライラも寝るしかない。

 ライラはライラの家へ帰っていくし、僕は僕で、ベッドの中へ潜っていく。そんな僕らを見届けて、ラオクレスは深々とため息を吐いた。

「……おやすみ」

 うん。おやすみ。あと、なんか、ごめん。僕をもう1人増やしてしまった……。




 それから、更に数日。

 僕は依頼の絵を描き進めながら、ライラにアドバイスをもらう。

 ライラは僕にアドバイスをするのを『恐れ多いっていうか、その、私なんかの助言でいいの?』って躊躇っていたのだけれど、いざ絵を前にしたら、結構色々言ってくれた。なんだ。やっぱりこの子、絵が好きなんだ!森に連れてきてもらえてよかった!

 ……そして、ライラは僕に絵のアドバイスをする傍ら、彼女自身もちょっとは絵を描いたし、あとは、もうすぐ春になるからって、森の片隅を耕し始めたり、手工業をやったり、家事をやったりして生活していて……。

 そんな、ある日。

「あの……王都に行く用事って、ある?」

 突然、ライラがそう、聞いてきた。

「特に無いけれど、どうして?」

 僕が尋ね返すと、ライラはちょっと躊躇ったように口を噤んで……それから、言った。

「母さんの遺品を取りに行きたいの」


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― 新着の感想 ―
[一言] カップルにしかみえねえ 馬たちは自分の心を偽らない自分の心に正直に生きてる奴が好きなのかね?
[一言] もう嫁でいいだろ!もげろ!
[良い点] ラオクレスタイマーがお役御免になってしまうかと思っていたけどそんなことはなかった。 [一言] このまま森で生活すればライラちゃんはツンデレ属性からツンふわ属性に変化しそうですね。ふわツンも…
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