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休日2

 僕たちが最初に寄ったのはゲームショップだった。

 そこで新作ゲームをチェックして体験プレイしたり、トレーディングカードゲームを眺めたりした。僕が集めているカードゲームは、義明くんたちがやっているゲームと違ったので、僕も同じのを買ってみた。まだまだルールを覚えるのに精いっぱいだけど、そのうち二人と対等に遊べるようになれればいいな。

 続いて古本屋に寄って、三人で並んで漫画の立ち読み。休日だし人がいっぱいいて、少し狭かった。立ち読みだけして、何も買わずに店を出てしまって、お店の人からするといい迷惑かもしれないけど、他にも同じ人がたくさんいるからいいよね? 今度買いたい本があるときはここで買うので許してほしい。

 次に向かったのは、お約束のゲームセンター。みんなが溜まり場にしているだけあって、レトロなゲームから最新の物まで、ゲームの種類は驚くほどいっぱいあった。

 僕たちはそこで、格ゲーに初根ミグ、和太鼓の達人や関越道バトルに、フリースローやエアホッケーなどなど、時間(と財布の中身)を忘れるほど、熱中してしまった。


「……ふぅ」

 そして今はさすがに疲れて、僕は一人、柱に寄りかかりながら休憩中である。

 なぜかモグラたたきに執念を燃やす義明くんをぼんやり眺めていたら、その奥に女の子の集団が目に入った。

 彼女たちはプリクラの前に並んでいた。

(そういえば、プリクラってしたことないんだよなぁ……)

 今更ながらに、プリクラとかクレーンゲームとか、女の子っぽい(?)ゲームに目もくれていなかったことに気づいた。

 もし夢月ちゃんと来ていたら、プリクラ初体験してたかな……。

 そう考えて、僕は苦笑した。

 いや夢月ちゃんのことだ。きっと、僕たちと同じゲームのチョイスに違いない。

「栗山。少し疲れたか?」

 柱に寄りかかるようにして立っていたら、稔くんに声をかけられた。

「うん。少し……」

「そうか。――おい。義明。そろそろ飯にしないか。だいぶ昼時過ぎてるぞ」

「うりゃうりゃうりゃりゃ――っ」

 返事はない。ただのモグラたたき人のようだ。

「ちょっくら、黙らせてくる」

「は、はは……」

 稔くんがすたすたと歩いて行って、義明くんを後ろから蹴り飛ばした。不意を突かれた義明くんは前のめりに倒れて、もぐらに頭突きをかました。

 まぁそんなことをすれば、当然、義明くんが稔くんに詰め寄って抗議するわけだけど……なんていうか本気で怒っているわけじゃなくて、男同士のじゃれ合いみたいな感じだった。

 そんな二人を見ていて、僕は少しだけ疎外感を受けた。そう感じたのは、単に二人との付き合いが短いからか、それとも僕が女の子だからだろうか。

 なんてことを考えていると、おでこに赤痣を付けた義明くんが「あ、悪い悪い。昼飯すっかり忘れてた」なんて言いながら、笑顔でやってきた。だから僕は女の子っぽくむくれて見せた。効果あったか分からないけどね。

 それにしても、意外と義明くんが熱中しやすかったり、稔くんが意外と大胆だったりと、二人の意外な一面が見れた気がした。


  ☆☆☆


 お昼は地下のフードコートにあるハンバーガーショップで摂ることになった。お昼時を過ぎたせいか、似たようなお店がたくさんあるからか、店内はそれほど混んでいない。

「栗山は先に座って、席を取っておいてくれ。俺たちが買ってくるから」

 店に入るなり、稔くんが僕に言った。

「え、でも……?」

 僕は店内を見渡した。すぐに席を確保しないといけないほど混んでいるようには見えないけど。

 そうしたら、今度は義明くんにも言われてしまった。

「いいから。そこに座っておけって」

「う、うん」

 こうして、僕は半ば強引に奥の席に座らせられてしまった。もしかして、遊びまわって疲れが見え始めていた僕を、二人して気遣ってくれたのだろうか。

 男の子からこういう風に女の子扱いされると妙にこそばゆいというか。よくよく考えたら、初めての経験なような気がする。

「で、栗山は何を食べる?」

 義明くんに言われ、僕は少し考えて答えた。

「えっとじゃあ、ビックワックのセットに、ナゲットとドリンクのLサイズ。飲み物はオレンジジュース――」

「…………」

 女の子との買い物はお金がかかると言われていたので、たくさんお小遣いを持ってきたけど、思ったより使わなくて余裕があったから、食べたい分を注文してみたら、返ってきたのは男子二人の冷たい目。……さすがに、女の子としては食べ過ぎかな。

「……というのは冗談で、ハンバーガーとポテトとウーロン茶のSサイズで」

「オッケー。いや、最初聞いたときはマジ焦ったよ。一人で全部食べるのかって」

「は、はは」

 男の子としてもかなりお腹いっぱいになっちゃう量だし。柚奈ちゃんに言われているけど、本当に食べすぎには気を付けよう……

 お金を預け、僕は奥の席に座りながら、ハンバーガーを買う二人をぼんやり眺めた。

 一緒に遊んで気づいたけれど、やっぱり二人とも大きい。身長は僕より十センチほど高いくらいだけど、背の高さだけじゃなくて、肩幅や手の大きさ・厚さが僕とは全然違う。それに体力も。僕は疲れて座っているのに、二人はけろりとしているし。

 小学生のころ、隆太と並んでいるときは単に僕の成長が遅いだけだと思っていたけど、やっぱり僕は女の子で、男の子とは違うんだなと、改めて実感した。

 女の子と遊ぶときは、ときどき自分が男の子だと思うことがあるのに、今日二人と遊んで、逆に自分は女の子なんだなと感じるってのは、なんか面白いと思った。


 なんて思ってたんだけど――

「栗山って、さ。なんか、女っぽくないんだよなー」

「――んぐぅっ?」

 義明くんの言葉に、僕は口いっぱいに頬張っていたハンバーガーを喉に詰まらせてしまった。慌ててウーロン茶で押し流す。

 そんな僕の様子を気にせず、稔くんまで続ける。

「そうだな。何気に格ゲとか好きだし、立ち読みも少女漫画じゃなくて普通に少年誌の漫画読んでいたしな」

 うっ。チェックが鋭いし。

「もしかして栗山って……」

「う、うん」

 やばい。疑われている? 男の子だったって、ばれた?

 動揺する僕に向け、義明くんがにやりと笑って言った。

「男兄弟が多かったりするだろ?」

 僕は、ほっと小さく息を吐いた。

「ううん。一人っ子だよ。いとこにお兄さんとお姉さんがいるけど」

 義明くんの説を肯定して誤魔化しちゃえば楽なんだけど、やっぱり嘘は言えないので、本当のことを告げる。

「くっ。違ったか。じゃあ、男の子が欲しかった両親に男っぽく育てられたとか」

「う、うーん。似たようなところ……かな?」

 男の子が欲しかったかは聞いていないけど、男として育てられたというのは、ある意味大正解だったりする。

 僕の答えに義明くんが満足そうにうなずく。

「あーやっぱりなー。俺の予想通り。なんていうか、同性の友達って感じなんだよなー。栗山って」

「あ、ありがとう」

 友達と言ってくれたのは素直にうれしいけど、同性(男)扱いされたのには、やっぱりちょっと戸惑いがあったりする。

「けど気を付けろよ。いくらそうだと言っても栗山は女なんだし。無防備な所があるからさ」

「へっ? 無防備」

 キョトンとする僕に向け、義明くんが少し真面目な顔をして告げた。

「例えば、知り合って間もない男二人組にのこのこ付いてくるとかさ」

「あっ――」

 言われてみれば、今の状況、僕としては普通だと思っていたけど、男子二人に女子一人なわけで。客観的に見れば、少し目立つ組み合わせかもしれない。

 今の僕にとっては、まだ男子の方が話しやすい相手だけれど、男と女として、これから気を付けないといけないのかな。

「まぁ確かに。お前が言うなよ、だけどな」

 稔くんが笑う。

「どういうこと?」

「ああ。さっきゲーセンでエアホッケーしただろ。こいつ、そのとき栗山の後ろに立って、スカートの中覗こうとしていた」

「……本当?」

 僕は思わずジト目で義明くんを見た。

 確かに、稔くんと勝負していたとき、義明くんは僕の後ろで見ていた。そして僕は小さいから、真ん中あたりに止まったお皿を打つために、腰を浮かせるようにして前のめりになっていたと思う。

「はは。そういうところが無防備って言うんだよ。安心しろ見えなかったし」

 義明くんが悪びれずに笑った。

 まぁ、別に覗かれるのは一向に構わないんだけど。

「いいのかなぁ。そんなことしてると、柚奈ちゃんに言っちゃうよ」

 そんな彼に向けて、僕は冗談めかして言った。

「なんで、そこで柚奈の名前が出てくるんだよ」

「だって、義明くんと柚奈ちゃんって、学校ではいがみ合っているようなフリをしているけど、実際はらぶらぶでいちゃいちゃしてるんでしょ。ちゃんと知ってるんだから」

「……どこの情報だよ。それ」

「彩歌ちゃんが言ってたよ。違うの?」

 僕がきょとんと、でも興味津々といった感じで聞くと、義明くんが呆れた様子で言った。

「……っていうか、そういう色恋沙汰とか、根拠のない噂が好きなところは、女だよな」

「えっ、そ、そうかなっ?」

 結局、義明くんに否定され真相は分からずじまいだったけど、女だよな、と言われて、内心思わずにっこりしてしまったのは秘密である。

 前はそうでもなかった気がするけど、女の子と一緒に混ざって話しているうちに、少しずつ性格も変わっていくものなのかなぁ。


  ☆☆☆


 食事を終えた僕たちは、地下のフードコートからエスカレーターを使って、四階にある靴屋に向うことにした。たまたま空いている時間帯なのか、エスカレーターに乗っているのは、僕たちだけだった。

(あ、そうだ)

 エスカレーターで上の階に向かっている最中、僕はふと思った。

「ん、どうかしたのか?」

 そんな僕の様子に、義明くんが気付いて声をかけてきたけれど、それを聞こえないふりして、僕は服を翻すようにしながら、二人を下に置いて、エスカレーターを一気に駆け上がった。

「お、おい」

 稔くんが声を上げるけど、構わず一気に登っていく。そして――

「あっ――!」

 義明くんの声が聞こえて、僕はほくそ笑んだ。

 あとから上がってきた、義明くんが怒った様子で言った。

「栗山それ……騙したなっ」

「へへ。別に、僕、スカートとは言ってないよー」

 スカートに見えて中は見えない、その名はキュロット。大正義っ。

 自慢じゃないけど、スカート経験値(レベル2)で、恥ずかしがり屋の僕がいきなりミニスカートなんて穿けるわけがないもんね。

「くそっ。男の純情をもてあそびやがってこの」

「勝手に勘違いした方が悪いもんねー」

「……見えようが見えなかろうが、そういうところが、無防備って言うんじゃないか……?」

 エスカレーター前で追いかけっこを始めた僕たちを少し離れたところで見ながら、稔くんが呆れたように言った。


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