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壁に穴が開いている部屋で隣人の美少女VTuberが今日も配信をしています  作者: にぃ


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第50話 配信回Ⅱー② 幻のトイレ休憩

 七色みどりから語られる過去はリスナーが思い描いていたものよりも遥かに重かった。

 隣室にいるレインはショックで口元を抑え、壁穴の向こうにいるささえの表情は見えないがその身体が小さく震えていた。



 『衝撃的過ぎて言葉がでない』

 『みどりニキがとにかく可哀想』

 『ていうかみどりニキが春夏秋冬の「夏」だってことがまず驚きなんだが』



 翠斗はリスナーに自分が春夏秋冬のメンバーだったということを今日初めて告白した。

 たぶんレインリスナーの中には翠斗の正体に感づいている人は居たと思う。

 レインの小説に声を付けた時に夏樹翠の名前を出してはいたから。

 でもみどりもレインも何も言わないものだから触れてはいけないことだと思い、リスナー達は空気を読んで黙っていた。

 それがまさか今日いきなり本人の口から正体を語られるものだから内心で仰天していることだろう。



 『羽嶋春子達もちょっと酷いよな。そんな声優だと思わなかった』

 『私、如月冬康好きだったんだけど。ショック』

 『俺の千秋たんがみどりニキを追放していたなんて……』



「あー、春夏秋冬のメンバーを責めるのはやめてほしい。彼女達は俺の未来の為に追放を選んでくれたんだ。それにメンバーに対して酷いことを思ってしまっていたのは俺も一緒なんだ」



 『あれ? じゃあなんでみどりニキは今も声優をやっていないんだ?』

 『確かに……羽嶋春子達が追放を選んだのならみどりニキは事務所から追い出されることはなかったんだろ?』

 『ていうか春夏秋冬ってさ……たしかちょっと前に……』



「ああ。みんなも知っての通り、春夏秋冬は数ヶ月前に解散している(・・・・・・)。各々がソロの道を歩んでいるんだ」



 そう。春夏秋冬はもう無い。

 ライブツアーも、グッズ拡販イベントも、トークショーも一切行っていない。

 急にパタッと活動を止め、ファンの間で解散説が流れ始めたタイミングでユニットの活動停止告知が行われていた。



 『春夏秋冬ってある日突然終わったよな』

 『みどりニキを追放したことの罪悪感で解散になった感じ?』



「そうだな。次はその辺りの経緯を話そうか。あっ、でも一旦休憩入れる? おしっこ行きたい人いない?」



 『は よ は な せ』

 『変な所で気を回すなw』

 『ペットボトルあるからおしっこ行きたくなっても平気だよ』



「じゃあ大丈夫だな。どうして俺が声優を辞めているのか、それと春夏秋冬はどうして活動を辞めたのか、その辺りを話していきたいと思う。春夏秋冬の話は俺も人伝に聞いただけなんだけども——」


 翠斗の過去話は基本的には悲劇だ。

 結果として声優を辞めることになってしまったのだからハッピーエンドには成り得ない。

 だけどタダでは終わらない。

 ここからはほんの少しだけスカッとする話へとなっていく。

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