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壁に穴が開いている部屋で隣人の美少女VTuberが今日も配信をしています  作者: にぃ


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第15話 配信コラボⅡー⑤ 声優VTuber (みどり×ささやきささえ)

「VTuberで……声優を?」


 翠斗は知っている。

 VTuber業界と声優業界は似て非なるものであり、相まみえることが出来ていない業界同士であると。

 どちらも『声』という武器を使って成り立っている業界であるが歩み寄れてはいない。


 稀にVTuberがアニメの声や主題歌を歌っていたりするが、そんなことが可能なのは超大手のVのみだ。

 その超大手VTuberですら一般層から好意的に見られているわけではないのだ。



 『VTuberが声優やるなよ』

 『うわ。このゲームの主題歌VTuberが歌っているのか。作風ぶち壊しだわ』



 そんな否定的な意見が必ず飛び交ってしまうことも翠斗は知っている。


 逆もまた然り。

 声優がVTuberをやることもあまり良しとされていない。

 事務所によってはV活動を完全に禁止している所もあるらしい。

 素性を隠してこっそりVTuberやっている人もいるっちゃいるが。


 声優は声優として、VTuberはVTuberとしてしか声を使えない。

 悲しいがこの二つの業種はまだ完全には歩み寄れてはいないのだ。


 だからこそささえの言葉は不可思議であり——


 とても興味を惹かれた。


「クリエイターVTuber専門事務所『Vクリエイト』」


「えっ?」


「作家、作曲、歌手、絵師、芸能。クリエイト能力に秀でたVTuberを募集している会社があるんだ」


 VTuberには大きく二つの分類に分けられる。

 『個人勢』か『企業勢』だ。

 企業勢と呼ばれるVTuberは、契約会社が配信活動のバックアップをしてくれる代わりに収益の何割かをロイヤリティとして会社に支払う提携を結ぶ人たちのことを指す。


「その会社はね、『声優』を目指すVTuberも募集してるんだ」


「あっ……」


 ここで初めて合点がいく。

 その会社に勤めることが出来れば、翠斗やささえはやがて声の仕事にたどり着くことができるかもしれない。



 『Vクリエイト? 聞いたことないけど』

 『俺は聞いたことある 「ヨムカク」の広告に載ってたわ』

 『「vixip』にも広告出ていた気がする」

 『あまり大きくないV事務所の印象だが』



「私はその事務所のオーディションを受ける」



 『ま?』

 『ささえたん企業勢になるの?』



「みんなにも言ってなくてごめんね。もちろんオーディションに受かることなんて簡単なことじゃないとは思うけど、それでも私は挑戦したいんだ」



 『俺らのささえが世界に見つかってしまうのか』

 『まー、企業勢でも個人勢でもささえを応援することはかわらんよ』

 『がんばえー ささえたーん』



「えへへ。ありがと。もしオーディションに落ちたら皆慰めてね」



 ささえは強い意志を持ってオーディションに臨もうとしている。

 とても前向きで、その姿は煌めいてみえた。

 自分もかつてはこんな風に目を輝かせていたのだろうか。


「みどりさん。私と一緒にオーディション受けてください」


「……お、おれは」


「VTuberとして声優デビューするのなら中の人の過去のことなんて関係ない。VTuberみどりという声優として見てくれる」


「……!!」


「過去を捨てることは逃げじゃないよ。きっとまた応援してくれる人ができる。それにここにいるみんなだって、きっと応援してくれる」



 『全身全霊で応援致しますわ!!!!!』



 超速タイピングで真っ先にコメントを流したのはレインだった。

 そのレスの速さや勢いから彼女の真摯な気持ちが伝わってくるみたいだった。


「貴方の才能を腐らせておくなんてもったいないです。貴方は声優として——VTuber声優として先頭に立つべき人物だよ!」


 ささえが認めてくれている。

 レインが認めてくれている。

 ささメン達が認めてくれている。

 翠斗の『声優』としての実力を疑問視する者などこの場には誰一人いなかった。


 ささえはその場に立ち上がり、翠斗に向けて優しく微笑みながら手を伸ばす。


「もう一度言うね。みどりさん、私と一緒にVTuberで声優を目指してみませんか?」


 気が付けば夕日が差し込む時間。

 天からの伸びるオレンジの光が少し薄暗い部屋に明かりを灯してくれる。

 夕日のオレンジを浴びて、ささえの愛らしい顔が煌びやかに輝いていた。


 真っすぐで、眩しくて、美しいその瞳を見て——


 翠斗は魅了されたようにささえの右手を握り返していた。


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