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近ごろの魔法使い  作者: 風待月
戦争と《魔法使い》
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090_1340 常人以上超人未満たちの見事で無様な生き様ⅩⅤ ~進捗どうですか!~


 高所から撃ち下ろされる狙撃を避けて、《使い魔(ファミリア)》と連携する和真(いちがや)をいなしていると、南十星(なとせ)は自然と人工島南東に追い詰められた。

 一般人が口にする通称ではないが、管理上はポートアイランドコンテナターミナル第一五から第一七号岸壁と名づけられている場所だ。その名の通り巨大なガントリークレーンが複数設置されて、コンテナが積み上げられている。


 熱力学推進のジャンプで、積み上げられたコンテナに上った際、幅四〇〇メートルほどの海を挟んだ向かいの埠頭でも、交戦の様子が見て取れた。目を凝らすと埠頭設備の隙間から、オルグと刀を交わしながら下がる、ナージャの姿が目に入った。


『ナージャ姉。調子どーよ?』

『結構なピンチですね』


 無線を飛ばすと、全然ピンチそうではない、普段どおりのソプラノボイスが脳内に返ってくる。


『まだ(しの)げてますけど、なにか間違えば()()(ぶつ)の連続ですし』

『加速して一気に蹴散らせんじゃねーの?』

『それをしようとすると、師匠(ペタゴーグ)と後ろから撃ってくる人たちとで、出鼻を(くじ)かれるんです。しかも師匠(ペタゴーグ)がわたしの戦い方をよーくご存じですからね。不用意なことはできません』


 左手で《黒の剣リョールヌィ・メェーチ》を振るいながら、部分的な《(ダスペーヒ)》を展開した右腕を掲げると、火花が散る。さすがに南十星の部分的微速度撮影でも、暗さと距離で銃弾まで視認できないが、ナージャの余裕がないのまでは理解できる。


『そういうナトセさんは?』

『こっちも割とピンチってる。和っちセンパイと戦おうとすれば、遠くから撃ってきて足止めされるし。周り先に倒そうとすれば、和っちセンパイとバイクが割り込んでくるし』

『わたしと同じ状況ですか』

『どーもそっちは狙撃だけみたいだけど、こっちは遠慮なしに爆発物も使ってくんのが違うかね。あと槍の間合いに飛び込めない』


 頭の中で言った途端、銃弾よりもはるかに遅い高速熱源の接近を感知した南十星は、推進力を下方向へ向けてまでコンテナから飛び降りる。

 直後に爆炎と共にコンテナが吹き飛ばされた。軍事に詳しくない南十星には詳しくはわからないが、携行型対戦車兵器が撃ち込まれた。


 同時に槍を引いた和真(いちがや)が、人外の跳躍力で襲い掛かってきた。《魔法》を光が灯る穂先を避けて柄を叩いて逸らし、高速での二の突き、三の突きをギリギリで避ける。


 南十星は飛び降り、和真(いちがや)は飛び上がってきた。なのに和真(いちがや)が先に着地し、一方的に攻め立ててくる。


『なんで俺たち、戦ってんだろ?』

『そんなんイチイチ考えながら戦ってんの?』


 脳内無線の内容は、高遠和真の時と変わらない。

 しかし行動は市ヶ谷のままで、南十星を殺さんと(かい)()している。


『夏に戦った時も思ったけどさぁ? 和っちセンパイって難しく考えすぎじゃね?』

『俺、なんか言ったっけ?』

『自分が《魔法使い(ソーサラー)》なの、けっこー悩んでるっぽかったし』

『いや、それ、ナトセちゃんがじゃない?』


 熱力学推進で、アニメの巨大ロボットのように足を動かさずホバー移動しながら、南十星は拳を繰り出し指向性衝撃波を発射する。


――《progress 92 percent(進捗状況92パーセント)》


 このところ《魔法使いの杖(アビスツール)》と接続するとずっと表示される、脳内で『視る』ユーザー・インターフェース画面に記された謎のプログレス・メーターが進んでいることを、気にする余裕もない。


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