090_1280 常人以上超人未満たちの見事で無様な生き様Ⅸ ~邪魔しないで Here We Go !~
跳躍すれば建物より高く。一秒後には路上に落下。その直後に重力を無視して壁面に移動する。普通の人間はもとより、どんな兵器でも再現不可能な三次元機動と共に、破壊が行われる。
南十星が加速するたびに、路面が、建物が、砕かれて穴が開く。
和真がいなせば、看板ポールが、電柱が、斬断される。
突進と共に突き出される拳は、コンクリートを粉砕し、瓦礫を吹き飛ばす。
槍を振り回すと、豆腐のように金属が斬られ、裁断される。
彼ら、彼女らの通称からはかけ離れた、拳と槍による原始的な戦闘。ただし常識を超え、一挙一動で風景が変化する激突が繰り広げられる。
「チッ――!」
南十星が唐突に間合いを開く。飛び退いた一瞬後、たっていた空間を銃弾とレーザー光線が奔る。
敵は和真ひとりではない。彼が白兵戦で南十星の動きを止めさせて、上陸部隊が正確無比な狙撃をしてくる。そちらを対処しようとしたら、今度は和真が攻撃を繰り出し、動きを止めにかかる。
(邪魔くさいなぁ……!)
ただでさえ和真は強い。七月に戦った時と同じく、いまだ一撃も入れられない。動きは南十星が速いはずなのに、変幻自在に槍が繰り出されるため、懐に飛びこめない。それどころか反撃を避け、いなすのが精一杯。肌や学生服に、いくつもの傷と解れが作られている。
加えて、個人の性能では多少劣るとはいえ、現代戦を訓練した《魔法使い》と連携するとなると。
一致団結し、意思疎通した群れの恐ろしさを、目の当たりにしている。
『ちょっとは変わったか』
『まだ試験のつもりなん?』
和真から飛んできた無線に、瓦礫の群れを三次元的に移動しながら、南十星も返す。
七月に彼と戦った理由がそれだった。二重国籍のため外交的な問題になりかねない《魔法使い》を、日本が手に入れる価値があるか見定めるために、彼は南十星に挑んできた。
潜水艦まで参戦してきたとはいえ、一対一で戦ったその時とは、当然戦い方が違う。一対多数で足を止めたら、あっという間に取り囲まれてしまうため、常に移動する機動戦を行っている。
『やっぱあたしは、弱い?』
『いや? 前より強くなってる』
わざと高々と跳び、遮蔽物のない空中に躍り出る。途端にベクトル解析による予測攻撃戦が集中する。
そのうちの一本に向けて、熱力学推進で一気に加速し、腕で頭を庇いながら遷音速で急降下する。
連射の半分以上が命中したが構わない。完全武装の兵士へ、防弾板を破壊する勢いで足から強襲する。
『普通の《魔法使い》よりも間違いなく強い』
『それじゃあ強くない。弱い』
防弾装備越しだから遠慮なく蹴り飛ばした直後、攻撃が集中する。防弾繊維のジャンパースーツと、その下に着たソフトスキンアーマーが威力を減じさせたが、完全には受け止められない。銃弾や石の破片で血を流しながら、南十星は建物の陰へと移動する。
『あたしの……兄貴の敵になる相手、全部倒せるくらいじゃないと意味がない』
『欲張りだなぁ』
これまでとは異なる動体反応を脳内センサーが捉えた。
南十星が飛び退くと同時に、槍の柄を叩きつけると同時に《魔法》で、隠れていた建物の角が粉砕された。
そして銀色の大型オフロードバイクに跨る和真が現れ、そのまま南十星へと追いすがる。
『あたしが欲張りっつーなら、なんで人間辞めて《ヘミテオス》になってんのさ』
『好きでなったんじゃない。任務でしくじった時に、移植された』
人外の速度で走る南十星に、自律行動を行う《真神》が並ぶ。そのシートに立つ和真が車上から槍を繰り出してくる。
『……そんだけ?』
『どんな理由を予想してたのよ?』
『いやぁ? 前に戦った時の和っちセンパイの印象から、強さを求めて的な?』
『俺、どんだけバトルジャンキー設定なんだよ』
『いやぁ? 最初の印象? 和っちセンパイじゃなしに、市ヶ谷のおにーさんの』
突きや払いを腕で防御しつつ、南十星は鉄靴に覆われた蹴りを繰り出す。
『生きるために仕方なかっただけだ』
しかし《真神》は軽くジャンプして避けてしまう。上の和真も慣れてると動きを合わせ、振り落とされはしない。
【女性を足蹴にするものではないのでしょうが……】
それどころかオートバイが自己判断で、タイヤの接地と同時に機体を一回転させて、後輪をぶつけてきた。
骨を折る衝撃をまともにくらい、中学二年生にしても小柄な体躯が軽々と吹っ飛ぶ。
(やりづれぇ~……!)
建物の壁に叩きつけられたと同時、あらゆる場所からあらゆる攻撃が南十星の体を貫く。頭をかばって耐えるのが精一杯。




