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近ごろの魔法使い  作者: 風待月
《魔法使い》の願いごと/イクセス編
488/640

070_1550 4th duelⅨ ~悪戦苦闘~


 半ばから刃を失った《無銘》と、折れた刃から作られた銃剣(バヨネット)が、一瞬同化したかのように絡んだが、すぐさま離れる。

 だがすぐさま出会う。長柄と着剣した小銃が人外の速度で激突し、火花を散らして互いを逸らす。


 数十度繰り返し、武器だけでは痛撃を与えられないと判断したか。(ヂェン)が《魔法》を実行した。

 新体操競技のリボンのように、長柄の先端から(なび)く、仮想の鞭にして刃――《軟剣》。

 それが空を渡り、地を潜り、龍のように襲い来る。


 (ヂェン)の間合いが広くなり、物理的な絶対防衛圏が構築されてしまうと、十路は必死になって下がるしかない。飛び退くとその後を追って、河原の石が次々と割られる。


 一定以上間合いを開くと、追撃はなかった。戦闘は一時停止した。


(ナメられてるな……)


 空になった弾倉(マガジン)を落とし、ポーチの新たな物に交換しながら、十路は息を吐く。


 単純な実力は()り負けている。痛撃と呼ぶほどではないが、何度か打ち負けて攻撃を食らっている。先ほど《軟剣》を使われる前に銃剣格闘に持ち込めたのも、射撃しながら無理矢理接近した末だ。並の相手ならもっとスマートに近づけている。

 ちなみに十路は、格闘よりも射撃が得意ではあるが、(ヂェン)相手に遠距離戦をやる気はない。弾薬もバッテリーも限りある身で、外部から電力供給を受けられる《ヘミテオス》とやりあうなど、自殺行為だ。


(これじゃまるで……いや、(ヤツ)の権能でコピーしてるのか)


 思い出が浮上してきて、苦い気分になる。


 この戦い方も。余裕を持ったテンポも。


「駄目ねー、十路。これくらいで根を上げるわけ?」


 その挑発的な笑い方も。向けてくる言い回しも。

 全て衣川(きぬがわ)羽須美(はすみ)が所持していたものだ。


 十路は槓桿(チャージングレバー)を引いて初弾を薬室に送り込むと、腰だめのまま(ヂェン)の顔面目がけて単発発砲した。

 だが彼女が振るう《軟剣》が、射線に割り込んで弾き飛ばした。


「猿真似はヤメロ。反吐(へど)が出る」

「おぉ怖」


 この警告も二度目のはずだが、(ヂェン)はおどけて肩をすくめるだけ。そんな態度が余計に十路を苛立たせるのも、以前と同じ。


 だが以前と違い、十路は息を吐くと同時に体の力を抜く。

 反抗を予想してたか。肩透かしを食ったように、(ヂェン)の眉が怪訝な角度になる。


「お前のそのイラつくツラ、これで最後だと思えば、どうでもいいか」


 否。最後にしなければならない。


「できるの? (イー)(チュァン)(ユー)(シュ)(メイ)に勝てなかったあなたが」


 確かに(ヂェン)の言うとおり、かつての上官にして最強の《女帝》は、十路が(かな)う相手ではなかった。

 彼女以上に強くなることを求められたことはあるが、あくまで冗談として聞き流していた。


「やるんだよ……羽須美さんから最期に言われたムチャ振りでもあるしな」


 同じ顔と声を持ち、同じ戦闘技術を発揮する女に勝つためには、今こそ『彼女』を超えるしかない。

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